人手不足なのになぜ?外食業界で働く外国人「特定技能1号」の新規受け入れ停止 病院・介護施設の調理現場にも打撃「1人1.5倍の力で働いてもらっている」
人材不足の産業分野で、外国人を即戦力として受け入れるため2019年に創設された「特定技能1号・2号」。しかし特定技能1号の「外食業」について、新規受け入れの一時停止が発表されました。
【グラフで見る】右肩上がりで増加…特定技能1号(外食業)の人数の推移は?
人手不足の中で一体なぜなのか?受け入れ停止をめぐり揺れる外食業界の現場を取材しました。
社員全体の約3割が外国人 お好み焼きチェーンの「千房」
お好み焼きチェーンの「千房」。大阪・ミナミの店舗には日本人のほかインバウンド客も大勢訪れています。
その接客に当たっているのが、2022年にベトナムから来日したリンさんです。
いつも明るく、サービス精神も旺盛です。その働きぶりに上司も信頼を寄せています。
(千房・エリアマネージャー 石垣輔さん)「とても明るくて、われわれも学ぶことが多いくらい接客がいい。リンさんに会いに来るお客さまが日に日に増えている。なくてはならない存在」
千房では社員223人のうちいまや全体の3割程度を外国人が占めているといいます。
(千房・エリアマネージャー 石垣輔さん)「(外国人は)すごく真面目に働いたり、生活のためにたくさんの時間働きたいとか、意欲は高い方が多いので(日本人と)同じように働いてもらっています。仕事が終わってからも日本語検定の勉強をしたり、日々努力している」
特定技能1号(外食業)の新規受け入れが「一時停止」
人手不足の中、日本の食の現場を支えている外国人。しかし、そんな外食業界を揺るがす事態が起きています。
それが、特定技能1号(外食業)の受け入れ停止です。
「特定技能」は2019年に創設された在留資格です。そのうち「特定技能1号」の在留期間は5年で、日本人の雇用を守るため分野ごとに受け入れ上限が設けられていて、「外食業」については5万人です。
人手不足を受けて外食業の1号を持つ外国人は右肩上がりで増えていて、政府は上限に近づいていたことから、新規受け入れの一時停止を発表しました。
千房社長「外国人の採用がゼロになってしまうのは痛い」
毎年20人~30人の外国人を採用している千房。今回の発表に中井貫二社長は…
(千房 中井貫二社長)「来年も再来年も外国人の採用をわれわれは進めていましたので、これがゼロになってしまうのは、やはり痛いなと。今後の人手不足の解消に向けては、結構打撃を受けているところは多いのかもしれません」
受け入れ停止については外国人スタッフ自身からも切実な声があがっています。
1号取得に向けてアルバイトしながら勉強していた最中で…
大阪市内のしゃぶしゃぶ店で働くミンさん(仮名)。約2年前(2024年)にミャンマーから来日しました。
(ミンさん ※仮名)「ミャンマーの料理が得意。ミャンマーでお店をしたい」
ミンさんは家族への仕送りや将来、母国で店を開く勉強のためこの店でアルバイトをしています。
ミンさんの今の在留資格では、更新がされなければ期限は2027年4月までです。
母国ミャンマーは内戦中で、安全な日本で働き続けるため外食業の特定技能1号を取得しようと勉強していました。
しかしその最中、受け入れ停止が決まりました。
持ち上がっていた正社員として採用の話も一旦止まる
(ミンさん)「ちょっと悔しい。毎日仕事しながら勉強しているのに、突然(1号の)試験がなくなったと聞かされて、どうしても(1号に)なれないかなと思っています」
この店を経営する会社は、ミンさんが1号を取得すれば正社員として採用する予定でしたが、その話は一旦止まっています。
(ダンシンダイナー・人事部 新田公彦マネージャー)「彼は本当に困っている。どうしていいかわからない中で答えが見つからない。こっちも答えを提示してあげられない」
さらに受け入れ停止は意外な場所にも影響を及ぼしています。
病院や介護施設の調理室も人手不足でピンチ
約40人が働く調理室。そのうち6人が外国人スタッフです。実はここは大阪市内の病院の中で、作っているのは患者たちの食事です。
この場所でも受け入れ停止を巡って問題が起きていると言います。
(Nishiki Foods 管理栄養士 吉田まさみさん)「勤務時間を長く働いてもらうようにお願いしている状態。1人1.5倍の力で働いてもらって1人少ない状態で正直現場を回している日もあります」
特定技能1号の「外食業」には、病院や介護施設などでの調理業務も含まれています。
そのため病院から委託を受けて業務を行っている会社「Nishiki Foods」も人手不足に陥っていると言います。
雇用側も容易に人員を増やせない?“一時停止”のジレンマ
この会社では6月、外国人スタッフ18人を採用する予定で彼らが住む場所を借り家電なども用意していましたが、受け入れの一時停止が決まってしまいました。
ただ、あくまで「一時停止」とされていて、現地で再開を待つ外国人スタッフのために今も家賃などの負担を続けているといいます。
(Nishiki Foods 人事総務課 横山雄輝課長)「ずっと(特定技能1号の人材が)入ってこないと結論が出ているのであれば、新規でパートを採用することもできるのですが、『もしかしたら1か月後に来るかもしれない』という可能性もあるので、容易に人員は増やせない」
こうした中、外国人の雇用をめぐりある動きが強まっています。
無期限で日本に在留できる「特定技能2号」目指す外国人も
取材したのは大阪市内の焼肉店。店長を務めるのは特定技能1号を取得したネパール出身のビマルさんです。
この日は外国人の就職支援を行う会社が開いたウェブセミナーに参加していました。テーマは「特定技能2号」です。
2号の資格は、1号の資格を持つ人がより高い日本語能力や店舗運営への理解が必要な試験に合格することで得ることができます。
1号の在留期間は5年ですが、2号は無期限で家族も日本に連れてくることができるようになるため、ビマルさんは2号の取得を目指しています。
企業側でも2号取得の支援に向けた動き
セミナーを開催する会社の担当者によると、企業側も限られた外国人により長い期間働いてもらうため、2号の取得の支援に動き始めているといいます。
(ワールドインワーカー 田中慎一郎さん)「より今(働いている外国人)の方々を支援していきたいという思いが強まっているのはいい流れだと思う。特定技能2号に向けた定着・教育の支援をより広げていきたいと思っています」
日本の食の現場を支える外国人。外食業界はいま大きな転換点を迎えています。
(2026年7月1日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

