なぜ森保ジャパンは逆転されたのか。延長戦に持ち込んでいたとしても…ブラジルとの差は大きかった【分析コラム】
64パーセントのボール保持を記録したブラジルのシステムは、4−3−3。攻撃時は右SBのダニーロが最終ラインに残って3枚回しに変形し、その手前にカゼミーロがアンカーとして錨を下ろす。ヴィニシウスやクーニャら攻撃の5枚は、ペナルティボックスの幅で中央突破を狙い、大外レーンは左SBドグラス・サントスと右FWラヤンが各1枚で立つ。
時折ラインの背後を突かれる場面はあったが、この試合でブラジルが記録したxG(ゴール期待値)2.01のうち、前半は0.4に留まっており、日本が前半に健闘したことを裏付けている。(参考:日本のxGは前半0.25、試合全体で0.28)
前半は積極的にハイプレスを狙ったことも大きなポイントであり、佐野のゴールも起点になったのはプレッシングだった。29分、前田がプレスして追い込み、縦に蹴らせたボールを谷口彰悟が回収。縦パスを受けた伊東はボールを奪われてしまうものの、ダニーロの横パスを読んだ佐野がインターセプトから、返し技のショートカウンター。見事なドリブルシュートを流し込んだ。
佐野のプレー自体もハイレベルだったが、そもそも彼がセンターサークル付近でボールを奪えたのは、自身の読みだけでない。前半の日本が果敢にハイプレスへ行き、ショートカウンターを生み出そうと汗をかいたからだ。先制ゴールはまさに、その意志が結実したものだった。スピード派の前田、伊東を同時シャドー先発という珍しいスタメンを組んだことも、この先制点につながっていた。
前半は日本にとって良いゲームだった。少し良すぎたかもしれない。明らかにうまくいっていないブラジルは後半、戦術を変えた。
MFルーカス・パケタに代えてFWエンドリッキを投入し、4−2−4へ変更。ヴィニシウスを左サイドへ出し、攻撃の軸をサイドに移した。同時に両SBが高い位置を取ってサポートし、前半は1枚しか立たなかった大外レーンに2枚が立って、ヴィニシウスやラヤンをサポートする。前半のように中央突破を狙いすぎず、コーナーフラッグを目ざして両サイドから人と圧力をかけて押し込み、クロスの雨を降らせてきた。
それでもヴィニシウスらが大外レーンからインスイングでロングクロスを蹴っている間は、対応が可能だった。GK鈴木彩艶が安定したキャッチングで相手のチャンスを潰し、粘り強く対応していたからだ。
ところが、徐々にヴィニシウスが自らをおとりに、味方や逆サイドを使い始めると、日本は本当の危機を感じるようになった。ヴィニシウスによってスペースを与えられた左CBマガリャンイス、右SBダニーロが、ボックス幅からアウトスイングのショートクロス。頼みの綱であるGK鈴木が飛び出しづらいクロスの前に、粘り強き日本の守備も崩壊の時が迫る。
日本は前半こそ、コンパクトな箱のような守備ブロックを維持していたが、後半はブラジルの執拗なコーナー攻めにより、じりじりと全体が押し下げられ、守備ブロックは横に薄く引き伸ばされた棒のようになっていた。厚みがなくなったブロックは、ハーフレーンに立つCBマガリャンイスらに寄せられない。佐野や鎌田大地の警戒は、クロスに飛び込んでくるカゼミーロやギマランイスに引きつけられているため、出処に出て行けないのだ。

