「教え子の女子中学生にわいせつ行為を働き、撮影も」 不祥事だらけの「全日本空手道連盟」 傘下の団体で不正受給問題も
「昭和の怪物」「右翼のドン」と称された元日本船舶振興会会長・笹川良一氏が遺した“ファミリー財団”が揺れている。60年近くにわたり笹川一族がトップに君臨するも、ここにきて不祥事が相次ぎ、組織を牛耳る“自民重鎮”にも批判の矛先が向き始めている……。
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【写真を見る】仕事を祖父に押し付けて… 会長に抜てきされた「笹川堯氏の孫」
アマチュア空手界を統括する組織として、文部科学省が認める国内唯一の団体が公益財団法人・全日本空手道連盟(全空連)だ。
設立は1964年。文部省(当時)より財団法人の認可を受けたのは69年(公益財団法人への移行は2012年)だが、全空連OBが言うには、
「その少し前に会長に就いたのが〈昭和の怪物〉などと称された笹川良一さん(享年96)です。財団法人化を起点と捉えれば、良一さんが“初代会長”であり“設立者”となります」

戦前は右翼政治家として活動した笹川良一氏は、敗戦により岸信介元首相らと共にA級戦犯として巣鴨プリズンに収容された。不起訴となり釈放されると競艇事業に乗り出し、全国モーターボート競走会連合会や日本船舶振興会などを次々と設立したが、
「全空連もその一つです。競艇で稼いだ莫大(ばくだい)な収益の一部を福祉やスポーツ振興などに充てる中で、良一さんのボディガードが空手をやっていた縁から全空連との接点もできたと聞いています」(同)
孫を会長に抜てきし「組織内は混乱」
1995年に死去した父親の跡を継ぎ、「2代目会長」に君臨したのが、次男で元自民党総務会長の笹川堯(たかし)氏(90)である。衆院議員として7期連続当選を飾り、「自民重鎮」として科学技術政策担当大臣や衆院予算委員長などを歴任。今年3月には『最後のドン 独占インタビュー 昭和・平成 怪物秘録』という書を上梓して話題を集めた。
全空連理事によれば、
「2020年の東京五輪で空手が初の正式種目として採用されたのは、堯さんの尽力のたまものです。空手道推進議員連盟会長だった菅義偉元首相の支援を取り付け、IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長(当時)に直談判するなど、堯さんの政治力なくして実現することはありませんでした」
昨年6月、全空連会長から名誉会長へ退いた堯氏に代わりトップに就いたのが、堯氏の長男・泰弘氏(63)の息子である善弘氏だ。
ところが、この大抜てきが内部で混乱をもたらしているという。
「善弘さんは空手の経験が一切なく、年齢もまだ40手前と若いことから会長就任を不安視する声は多かった。しかし堯さんの鶴の一声で決まったのです。周囲の心配をよそに、堯さんは“あいつは空手バカじゃない。学歴だけじゃなく、アイデアも持ってる”と手放しで褒めていました。孫のことがかわいくて仕方ないようです」(同)
善弘氏は東京都出身。10歳から米国で暮らし、コロンビア大学大学院を卒業後、慶應義塾大学大学院で経営管理の修士課程を修了した。全空連理事となったのは14年。18年に副会長に昇格すると、広報や会員獲得に向けた戦略などを担当した。
大会出場料が倍に
全空連関係者が言う。
「連盟の会員数は東京五輪前に過去最高の9万人を超えましたが、以降は減少傾向に歯止めがかからず、現在は5万人程度。にもかかわらず、善弘さんは会長に就任すると、会員の小学生が全国大会へ参加する際の出場料を従来の4000円から8000円に値上げしました。参加費が倍に跳ね上がったことで出場を見送る家族が増え、会員減が加速することを恐れています」
会長就任後のインタビューで「子供たちにはいっぱい失敗してほしい」と語った善弘氏だが、その機会を奪っては本末転倒になりかねない。さらに、
「空手の大会は週末に開かれることが多く、トップが来賓あいさつするのが習わしです。しかし“土日には仕事をしない”というポリシーの善弘さんが姿を見せることはなく、いつも名誉会長の堯さんがあいさつを行っている。その堯さんは無給で会長職を務めていましたが、善弘さんは副会長時代に月額40万円、会長になると同70万円の報酬を受け取っています。先代と比べると、どうしても仕事ぶりに物足りなさを感じてしまうのです」(同)
不正受給問題も
会長としての資質に疑問符を突き付けられる一方で、推挙した堯氏への不信の念も広がっている。
きっかけは、全空連傘下の地域団体の一つ、京都府空手道連盟(京空連)で発覚した不正受給問題だった。
「一昨年の12月、地元・京都新聞が府の交付金を京空連が不正受給していた事実を報じました。交付対象外の宿泊費や交通費などを申請し、18年度と19年度で計75万円を不正に受け取っていたという内容です。報道を受け、京空連はHPで“前事務局長が誤って申請したもの”と釈明したのですが、名指しされた本人は猛反発。昨年1月、釈明文を書いた会長の阪梨學氏を名誉毀損で訴える騒動へと発展しました」(京空連関係者)
当の元事務局長に話を聞くと、
「HPに書かれたことは事実無根です。むしろ私は当時、私たちも知らなかった交付金の二重請求や不正会計などについて調査していたのです。ところが不正受給が発覚すると、彼らは私を“犯人”に仕立て上げ、追及をかわそうとした。釈明文は約1カ月後に何の説明もなく削除されたことからも、虚偽だったのは明らか。阪梨氏からは示談の打診もありましたが、私が釈明文の掲載経緯や交付金不正受給の真相を公開するよう求めると“無理だ”と拒否されました。そのため、裁判は今も継続中です」
阪梨氏の自宅を訪ねると、
「弁護士に任せているので、お答えできない」
と口を閉ざす。
女子中学生にわいせつ行為
京空連は昨年7月、内部調査の結果として、新たに国や京都市の補助金約130万円を不正受給していた事実を公表したが、
「その後、体制を刷新して、阪梨氏も退任することになりました。ところが今年になって、彼に用意された新ポストを聞いて驚きました。全空連の協力団体で、最大の会員数を擁する全日本空手道松涛館(全空松)の会長に近く就任予定だというのです。不正受給を巡る一連の対応で批判を浴びたものの、堯さんの推薦があったそうで、“栄転”になってしまったんです」(前出の京空連関係者)
全空松(京都市)は14年に設立され、初代会長を堯氏が、2代目会長は阪梨氏の前の京空連会長だった津山捷泰氏が務める。全空松関係者によると、
「津山氏が音頭を取り、堯さんが供託金として1000万円を出して誕生したのが全空松です。今年3月の会議で、津山氏は自ら辞任を申し出て、後任に阪梨氏を指名した。実は津山氏辞任の裏には、連盟を揺るがせたスキャンダルの存在がありました」
昨年7月、滋賀県草津市内にある全空松系列の空手道場で、女子中学生に対する暴行事件が発覚。逮捕されたのは指導に当たっていた全空連の支部団体・滋賀県空手道連盟の常任理事(51)=当時=だった。
「常任理事は津山氏の息子です。その後の捜査で、暴行だけでなく、指導と称して女子中学生の体を触り、それを撮影するなどのわいせつ行為を複数回にわたって働いていたことも明らかになりました。今年1月、彼は懲役3年の実刑判決を受け、関係者の間に激震が走りました」(同)
被害者の代理人弁護士が明かす。
「刑事裁判が始まった後、被告側から示談の話がありました。保釈保証金の返還分も含めて計600万円の示談金を支払うとの内容でした。お金は父親の方で工面するとのことでしたが、被告には厳罰を求めていたので受け取りは拒否しました」
示談金の話は裁判でも出たため、連盟関係者も知るところとなったが、
「津山氏に代わって“示談金は堯さんが用立てる”と言われていました」(前出の京空連関係者)
直撃に「知らんよ」
堯氏が金の力で被害者側の口を封じようとしたのでは、との見立てもあるが、津山氏に真相を確かめると、
「そんなことはない」
堯氏にも電話で話を聞いた。まず、善弘氏が週末の大会に出ない理由を尋ねると、
「土日は私が担当。私のほうが顔が利くからね」
阪梨氏を推挙したとされる件については、
「知らんよ。理事会で決めることだから。ただ彼は立派な人だよ」
示談金に話が及ぶと、
「知らないよ」
どうやら、説明責任を果たすつもりはなさそうである。
全空連にも質問状を送ったが、期日までに回答を得られなかった。
前出の全空連関係者は、
「公益財団法人でありながら、一族で60年近くも牛耳るなど、冷静に考えればおかしなことです。全空連には昨年までの5年間で、文科省外局のスポーツ庁から計3億円を超える補助金が交付され、“私物化”など許されない。最近の騒動は、まるで長年の膿がここへきて一気に噴き出したかのようです」
自浄作用が働かない組織に成り下がった全空連。笹川一族は退いて、出直したほうがいいのでは。
「週刊新潮」2026年6月11日号 掲載
