記事のポイント ユニバーサルが『ウィキッド 永遠の約束』の公開に合わせ、300社以上と提携する大規模ライセンシング展開を実施している。 ヴォルスパやバンバスなどのブランドが物語の世界観を製品化し、新規顧客やファン層との接点を拡大している。 IPコラボは売上だけでなく、ブランドの文化的存在感を高める手法として進化を遂げている。
大ヒットミュージカル映画『ウィキッド 永遠の約束(Wicked: For Good)』の公開を記念し、小売スペースはグリーンとピンクで彩られつつある。ユニバーサル・プロダクツ&エクスペリエンス(Universal Products & Experiences)は、映画『ウィキッド』の第2作の公開に合わせてライセンス契約をさらに強化し、ホーム、アパレル、ビューティー、アクセサリーなど幅広いカテゴリーの数十ブランドを起用。ユニバーサルはModern Retailに対し、今年は300社以上の公式ライセンスパートナーを獲得し、その50%が新規パートナーであると述べた。参加ブランドのなかには、フレグランスブランドのヴォルスパ(Voluspa)など、昨年ライセンス製品を発売したブランドもある。ヴォルスパのマーケティング担当バイスプレジデント、エミリー・カレン氏は、昨年の『ウィキッド』コレクションが同社初の大規模映画コラボレーションだったと述べる。「このコレクションはヴォルスパの2024年でもっとも成功したローンチのひとつになった」。全SKUが売上予測を上回り、購入者の68%が新規顧客であった。IPライセンスは、2023年の映画公開に向けてマテル(Mattel)が『バービー(原題:Barbie)』グッズを積極的に展開したことで広く知られるようになり、ハリウッドのマーケティングにおいて重要な役割を担うようになっている。一方、小売ブランドにとっても、新規顧客への紹介や、より広範な文化的対話への参加、そして売上向上のための重要な手段となっている。特に今年は、消費者が経済の低迷や長期にわたる政府閉鎖へのストレスを感じている時期に、ブランドは『ウィキッド』テーマの商品で消費者の購買意欲を刺激することを狙っている。

マテルは同映画でもグッズを販売した

流れに便乗する多彩なブランド

ユニバーサルは同時に、ニューヨークのタウンハウスを会場に「ウィキッド・アット・ホーム(Wicked at Home)」という体験型イベントを開催した。10月1日に行われたこの無料ウォークスルーイベントのチケットは瞬く間に完売した。ファンが自宅でも楽しめるよう、現在、バーチャルツアーでショッピングができるオンラインポップアップストアもオープンしている。

体験型イベント「Wicked at Home」

ユニバーサル・プロダクツ&エクスペリエンスのフランチャイズ戦略担当バイスプレジデント、メリッサ・ロドリゲス氏は、『ウィキッド 永遠の約束』のライセンシング戦略は、昨年の戦略を基盤に、ビューティーやファッションだけでなく、日用品カテゴリーにも展開を拡大していると述べる。「今年は既存・新規パートナーとの提携により、提携内容を拡充し、特にホームカテゴリーに注力した」とロドリゲス氏は語り、ポッタリーバーン(Pottery Barn)、PBティーン(PB Teen)、ル・クルーゼ(Le Creuset)、ウィリアムズ・ソノマ(Williams Sonoma)などのブランドの新コレクションを例に挙げた。今年は、フード、ドリンク、クッキング、そしてエンターテイメントといったカテゴリーがさらに深く関与していいる。たとえばコンパーテス(Compartés)との新しい『ウィキッド 永遠の約束』コラボレーションでは、ホリデーシーズンに合わせて24種類の限定フレーバーが楽しめるチョコレートのアドベントカレンダーが登場する。ライフスタイル領域のギャップを埋める別の例として、DIYや趣味の愛好家向けにザ・ウーブルス(The Woobles)と提携して発売された「Wicked」をテーマにしたクロッシェコレクションがある。前作で人気だったコラボレーションを再び実施する決定は、昨年それらの商品が完売したことに基づいている。ロドリゲス氏は「スタンレー(Stanley)、ヴォルスパ、マテル、ルーツ(Roots)といったファンに人気のコラボを再び行う必要があった」と述べた。今年、ユニバーサルはファンがこのような限定商品を日常生活に取り入れられるよう、さまざまな工夫を凝らしている。「ニューヨークでの没入型ショーケース『ウィキッド・アット・ホーム』もその発想から生まれた」とロドリゲス氏は語る。このショーケースは、商品が単なる期間限定の流行ではなく、消費者がずっと手元に置いておきたくなる存在として訴求している。

スタートアップブランドの新たな挑戦

スタートアップブランドのなかには、『ウィキッド』ライセンス契約を通じて初めてエンターテインメント業界に進出するところもある。たとえば、プロテインバーブランドのトゥルーバー(Trubar)は、ユニバーサルとの公式パートナーシップを通じて『ウィキッド』テーマの製品を数カ月かけて準備してきた。これは同社にとって初の映画コラボレーションとなる。トゥルーバーの創業者エリカ・グルースマン氏は、「これまでも数多くのクリエイティブな商品発表や小売店での展開を行ってきたが、これほどの規模でエンターテイメント分野に参入するのは初めてだ」とModern Retailに語った。今回の新製品には、ファンに人気の高い2種類の既存のフレーバー「デイドリーミング・アバウト・ドーナツ(Daydreaming About Donuts)」と「イッツ・ミント・トゥ・ビー・チップ(It’s Mint to Be Chip)」が、グリンダとエルファバのピンクとグリーンの世界観に合わせた新パッケージで登場する。この限定版のバーはブランド公式サイトで先行販売されており、11月初旬にはターゲット(Target)、セーフウェイ(Safeway)、アルバートソンズ(Albertsons)などの主要小売店で販売される予定だ。「新しい製品を展開するのではなく、思わず見せびらかしたくなるような装いにするのが目的だ」とグロースマン氏は述べる。「(ただし)『ウィキッド 永遠の約束』のような世界とコラボレーションするとなると、緑の色味から箱の輝きまであらゆる細部が重要になる」。箱のデザインはピンク寄りとグリーン寄りの2種類があり、これは映画のストーリーを反映した工夫だという。

ファン心理を香りで表現するヴォルスパ

ヴォルスパは、昨年『ウィキッド』をテーマにした製品を発売したブランドのひとつで、続編にも再登場する。10月1日には『ウィキッド:フォー・グッド』のために特別にキャンドルとディフューザーのまったく新しいコレクションを販売した。

ヴォルスパ(Voluspa)もコラボ

ヴォルスパのカレン氏は「最初のコラボで得た最大の収穫は、ファンが香りを通して物語に深く共感してくれたことだ」と語る。「ファンは香りに共感し、登場人物に自分自身を重ね合わせた」。そこで今年、同社は『ウィキッド 永遠の約束』の公開に合わせて2つの新しいフレグランスを発表した。カレン氏によると、これらのフレグランスは物語の流れを汲み、昨年の勢いをさらに発展させたものとなっているという。「続編では変容と揺るぎない友情が描かれており、その感情の起伏を反映したまったく新しいフレグランスのペアを作り上げた」とカレン氏は述べた。グリンダのチェリーブロッサムバブル(Cherry Blossom Bubble)は明るくフローラルな香り、エルファバのパロサントスペルズ(Palo Santo Spells)はより深みのあるスパイスの効いたバリエーションだ。こうしたコラボレーションは、映画ファンやコレクター、『ウィキッド』を通してヴォルスパを知る可能性のあるキャンドルを初めて購入する人など、認知度を高め、新しいオーディエンスを獲得するのに寄与している。どちらの新しい香りも発売直後から好調な売れ行きを見せている。「チェリーブロッサムはWebサイトでの先行販売で完売してしまい、急遽再入荷に対応しなければならなかった」とカレン氏は述べた。両フレグランスとも、オンラインストア、ヴォルスパのブティック、提携小売店ともに発売当初から好調な売れ行きである。ファンが両方の香りを体験できる缶入りミニギフトセットもほぼ完売となっている。

ボンバスとデロンギの展開

バンバス(Bombas)もボンバス x ウィキッド(Bombas x Wicked)コレクションで続編コラボに復活するブランドのひとつだ。同社マーチャンダイジング&デザイン担当シニアバイスプレジデントのタム・コンリン氏は、2013年の設立以来、同社は映画に登場するキャラクターを生き生きと表現する商品を手がけてきたと述べる。「顧客が胸躍らせているものに気を配ることに大きな価値を感じている。特定のストーリー、キャラクター、テーマが共感を呼ぶとき、喜びと会話を巻き起こすような特別なものを生み出す機会が得られる」。ボンバスはこれまで『ミニオンズ(Minions)』やピクサー(Pixar)とのコレクションを制作し、昨年は映画『ウィキッド』のソックスコレクションを展開した。「特に『ウィキッド』においては、友情、自己愛、受容、平等といった映画の主要テーマを反映した当社のミッションを掲げている」とコンリン氏は述べる。このような限定ドロップは話題性を高めると同時に、「1足購入で1足寄付キャンペーン」にも通じたブランドのミッションへの認知度向上にもつながっている。これまでのところ、ボンバス x ウィキッド ラッフル クォーターソックス4足パック(e Bombas x Wicked Ruffle Quarter Sock 4-Pack)はすぐに顧客の人気を得ているが、それはおそらく異なるデザインが組み合わされているからだろうとコンリン氏は語った。また、公式ライセンス契約を結んでいないにもかかわらず、『ウィキッド 永遠の約束』の話題性を活用しているほかのブランドもある。エスプレッソマシンメーカーのデロンギ(De’Longhi)は、ユニバーサル・ピクチャーズとの公式パートナーシップを結んでいないが、映画の世界観にぴったり合う新製品を発売している。2025年6月に発売したデディカ・デュオ(Dedica Duo)シリーズだ。このシリーズは、イタリアのジェラート店の雰囲気にインスパイアされた、ロゼピンクとピスタチオグリーンの2色のエスプレッソマシンが特徴である。デロンギ北米のマーケティング担当バイスプレジデント、ヘイリー・サベージ氏は、ロゼ色とピスタチオ色の仕上げは「まさに今、『ウィキッド』をめぐる文化的興奮と完璧に結びついている」と語った。「消費者が楽しく自然な方法でそのつながりを感じてくれていることが嬉しい」と付け加えた。サベージ氏によると、製品が人々の興味を引くものと自然に結びつくこのようなタイプの文化的瞬間は、日々のコーヒー習慣を充実させる方法を示し、デロンギが新しい顧客層にリーチするのに役立つという。

IPコラボがもたらす真剣さと遊び心の融合

トゥルーバーのグロスマン氏は、IPライセンスを試験的に導入する同社の戦略は、小規模ブランドを主流の顧客層に届けるのに役立っていると述べる。「また、健康志向のブランドが大胆で遊び心を持てることを示している。我々はクリーンな原材料には真剣にこだわっているが、自社を真剣に捉えすぎてはおらず柔軟な姿勢を大切にしている」。原文:Brands hope a second round of ‘Wicked’ products will drive some retail sales magicGabriela Barkho(翻訳・編集:ぬえよしこ)