「オレオレ詐欺なんて昔だったら絶対やりません」今のヤクザは“仁義なき詐欺集団”…日本初の女ヤクザ・西村まこ(58)が「ヤクザ業界」と手を切った理由

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 今では更生を果たし、地域住民からの信頼も厚いNPO法人「五仁會」(主な活動内容は暴力団および非行少年の更生支援など)の広報、清掃ボランティアスタッフとして活躍する元ヤクザの西村まこさん。

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 日本最初の女ヤクザだった彼女はなぜ廃業したのか? そして更生を決意させた「ある恩人」の存在とは?(全6回の3回目/最初から読む)


かつて「日本初の女ヤクザ」として名を馳せ、廃業後は慈善活動に勤しむ西村まこさん。彼女がヤクザ業界を見限った理由とは? ©細田忠/文藝春秋

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詐欺と泥棒はあかんでしょ!」

――妊娠・出産を機にヤクザから一度は足を洗ったものの、稼ぐために覚せい剤の販売に再び手を染めるようになり、2010年に組にカムバックしたそうですね。

西村まこ(以下、西村) でも戻ったときの組は単なる詐欺集団になっていたんですよね。会長も姐さんも「電気代が払えない」とかつまらないウソをついて金をせびってくるんです。ほかにも「講」(頼母子講のこと。メンバーから集金し、くじなどで決めた当選者に給付する)という名目で金を集めたのに、会長が取って終わりとか。いくらヤクザでも身内からお金を奪うのは一線越えているでしょう。

――あらゆる悪事をやってきたまこさんといえど、許せないラインがあるんですね。

西村 昔のヤクザはカタギに迷惑をかけず、むしろ相談に乗ったりしていたのに、今は逆にカタギをだますようになってしまいました。オレオレ詐欺なんて、昔のヤクザだったら絶対やりませんよ。詐欺と泥棒はあかんでしょ! 自分の線引きとして、真面目なカタギからお金をだまし取るとか仲間をだますのは絶対ダメですね。だからこそ、自分が昔あこがれた会長はもういないんだとがっかりしました。

大恩人・竹垣会長との出会い

――現在所属しているNPO法人「五仁會」の代表・竹垣悟氏との出会いを教えてください。

西村 ヤクザを辞めて解体の仕事をしていた頃、ヤクザをテーマにしたクイズ番組に出演することになりました。そこでの共演をきっかけに竹垣会長と知り合い、「五仁會」の活動に試しに参加してみました。竹垣会長も元ヤクザで、四代目山口組・竹中正久の側近だったほどの大物です。そんな人が地域の清掃活動に額に汗して取り組んで、市民の皆さんに慕われているんです。「この人はすごい! この人についていきたい!」と感じました。

 私はヤクザを辞めたとはいえ、アウトローとカタギの中間にいるような状態が続いていました。でも竹垣会長と出会ったことで、「この人のようになりたい」と思い、「五仁會」に加わりました。私がこの活動を始めてから2〜3年になりますが、人生で今が一番充実しています。

――どんなところにやりがいを感じますか?

西村 やっぱり誰かのためになれるのは、嬉しいことです。ヤクザをやっていて他人に感謝されることはないですからね。ヤクザよりも、今の活動のほうが向いているように感じます。自分も真面目になれるし、いろいろ勉強になるし、人に感謝されるし、良いことずくめです。ワルの道の次は、更生で日本一を目指したいと思っています。

――元暴力団員や非行少年らが更生する上で、どんなことがネックになっていると感じますか?

西村 やっぱり覚せい剤を止めさせるのは難儀しますね。結局またクスリに手を出してしまって戻ってこられなくなる人がたくさんいます。あとはせっかく真面目に生きようとしても、なかなか仕事が見つからないんですよね。

「過去は変えられないなら…」

――まこさん自身も更生には難しさを感じましたか?

西村 入れ墨がバレて仕事をクビになったりして、「なかなか真面目になれんなぁ。真面目にできんなぁ」と感じていました。行き場がないせいで、結局また犯罪に走ってしまう人は多いんですよね。「五仁會」は、更生を決意した人の行き場になりたい。うちを頼ってくれたら、住むところも仕事も与えます。

 女ヤクザだった経験があるからこそ、元ヤクザたちの就労支援という活動ができます。私が過去傷つけた人たちに申し訳ない気持ちはありますが、いくら反省したところで、今から彼女たちに直接謝ったり何かできるわけではありません。過去は変えられないなら、せめて過去を糧にすることで今困っている人を助けていこうと思います。

――今後の目標はありますか?

今後の目標は…

西村 ケガをしてからは解体の仕事にたまに行く程度で、金銭的にはカツカツの生活ではありますが、ゆくゆくは自分で施設を建てて、ムショ上がりとかで行き場のない人間を住まわせてあげたいです。

――まこさんが竹垣会長にあこがれて更生の道を本格的に踏み出したように、いずれはまこさんにあこがれる人も出てくるかもしれませんね。

西村 そうなれるように頑張ります。

教育費を稼ぐため“覚せい剤を売っていた”ことも…日本初の女ヤクザ(58)が今も反省する「2人の息子との関係」〉へ続く

(原田イチボ@HEW)