金沢純禾がラストノービスで3連覇達成「いいノービス時代だった」男子はA1年目の佐久間陸が初優勝「すごくうれしい」【全日本ノービスA結果】

写真拡大

10月18日〜20日に行われた全日本ノービス選手権(兵庫・尼崎スポーツの森)。

ノービスA男子は佐久間陸が、女子は金沢純禾が優勝した。

ノービス世代の日本一を決める今大会は、今年で28回目を迎える。

坂本花織、佐藤駿、三浦佳生、島田麻央ら世界で活躍するスケーターのほとんどが「全日本ノービス」の優勝経験者という、まさにトップスケーターへの登竜門となる大会だ。

先輩スケーターに続けと、今大会のノービスAの男子、女子、アイスダンスの結果を振り返る。

自己ベスト更新の佐久間陸が初優勝

ノービスA男子は、上位4人が11月15日から行われる全日本ジュニア選手権への推薦出場が決定した。

優勝したのは、去年覇者の岡崎隼士と同じ中四国・九州ブロックの佐久間陸。

去年ノービスBクラスで3位表彰台にのぼった佐久間。

ノービスA1年目の今季は、出場した大会すべて優勝と勢いにのって今大会にも挑んだ。

ネコを表現した振付が特徴的な『Everybody Wants To be A Cat』のプログラムを披露した。

冒頭3回転サルコウのコンビネーションジャンプを華麗に決めると、3種類の3回転を含むすべてのジャンプを着氷。長い手足を活かしたスケーティングで演技中盤から手拍子が沸き起こった。

中四国・九州ブロックでは、92.19点とノービスAクラストップスコアを叩き出した佐久間。今大会では99.77点と100点に迫る高得点を獲得し堂々の初優勝を飾った。

大会後のインタビューでは、「すごくうれしい。自分の力を100%出し切ることができた」と喜びを語った。

初出場の全日本ジュニア選手権での目標は、「まずはショートを通過すること」。

ノービスA1年目で迎えた全日本の舞台でもあまり緊張しなかったという佐久間。初の大舞台での活躍に期待がかかる。

2位は、最後の全日本ノービスとなった吉野咲太朗(東京ブロック)。

ノービスB時代の優勝を含む3大会ですべて表彰台にのぼった実力者ながら、ジャンプにミスが重なり優勝を逃す結果に。

大会直前の会場練習で3回転ループの際に足を捻挫してしまったようだが、ケガを感じさせない持ち味の伸びやかな滑りで観客を魅了した。

最後の全日本ノービスでの優勝を狙っていた吉野は、「これで終わりなのは納得がいかなかった」と悔しさをにじませた。

「ケガや悔しい思いなどたくさんあって僕にとっては重い4年間だった」とノービス時代を振り返るが、「全日本ジュニアで挽回したい」と闘志を燃やす。

急成長の活躍を見せた原大翔が3位に。

坂本花織や三原舞依の指導をする中野園子先生が率いる神戸クラブに所属している。

去年のノービスBでは6位だったが、ノービスAに上がり急成長し、自身初の表彰台入りを果たした。

今年の野辺山合宿予選会前にダブルアクセルを習得し、それを機に本格的に3回転ジャンプに取り組んだ。昨季はゼロだった3回転ジャンプを、3種類構成に組み込みすべて着氷させた。

「佐藤駿選手やイリア・マリニン選手などジャンプの上手い選手たちの動画を見て研究している」とジャンプ習得のコツを教えてくれた。

大会終了後に話を聞くと、「まさか自分が3位になるとは思っていなかった。前から目標にしていた3つのスピンで全部レベル4を獲得できたことが嬉しい」と喜びを語った。

初出場の全日本ジュニアへ向けては、2020-21シーズンの羽生結弦さんがショートで使用した曲で新たに準備中だという。

「ジュニアの選手たちと戦えるのが楽しみ」と意気込んだ。

4位は去年ノービスB王者の日郄晴久(東京ブロック)。

演技前半のジャンプにミスが出るも、練習の成果を発揮し後半にリカバリーする。

ネイサン・チェンも使用していた『韃靼(だったん)人の踊り』を抜群の表現力で滑り切った。

「盛り上がる部分だけでなく、すべてを意識して“日郄晴久”の演技を見せたい」と、意気込む日郄の全日本ジュニアでの演技も注目だ。

原と同じ神戸クラブに所属するデイリー スカイラー海聖が5位に。

1番滑走の緊張感の中、練習でもあまりできていなかったというノーミスを達成する。

大技の3回転フリップとルッツを決め、演技後にはガッツポーズも飛び出した。

今後は3回転のコンビネーションジャンプにも挑戦したいと意欲を見せた。

【ノービスA男子】
1位 佐久間 陸(福岡オリエンタルバイオアカデミー)99.77点
2位 吉野 咲太朗(西武東伏見FSC)90.36点
3位 原 大翔(神戸クラブ)88.49点
4位 日郄 晴久(MFアカデミー)86.34点
5位 デイリー スカイラー海聖(神戸クラブ)83.46点
6位 堂前 宗祐(埼玉アイスアリーナFC)80.78点

ラストノービスの金沢純禾が3連覇

ノービスA女子は、上位4名が全日本ジュニアへの推薦出場が決定した。

優勝の金沢純禾(近畿ブロック)が、唯一の100点超をマークした。

「整氷終わって第4グループの2番が20番で。ひきたいひきたいひきたいって思って引いたら、20番でめっちゃ嬉しかったです」

滑走順抽選では、金沢は希望していた20番を引き当てた。

冒頭の3回転ルッツ+3回転トゥループを完璧に決め出来栄え点(GOE)+1.38の加点がついた。

3回転フリップでの転倒が悔やまれたが、3回転ジャンプ5種類組み込んだ高難度のプログラムをスピード感バツグンのスケーティングで滑り切った。

今季出場した3大会で100点超えと今季絶好調の金沢が、最後の全日本ノービスで有終の美を飾った。

「良いノービス時代だったかなと思う」そう振り返った金沢は、来季ジュニアへ上がることを見据え、すでにジュニアクラスで大会に出場している。

「1年目からジュニアグランプリシリーズに派遣されるようになり、先輩の島田麻央選手のようにたくさん優勝したい」と意気込む。

ジュニアでの戦いに早くも闘志を燃やす彼女は、2年連続の全日本ジュニアへ。

「去年はショートで出遅れてしまった。今年はショート、フリーともにノーミスで合計175点を目指したい」と話し、12位で終わった去年のリベンジに挑む。

2位は、去年ノービスBを制覇した宮粼花凜(近畿ブロック)。

冒頭のジャンプにミスが出たのをきっかけに、「このままでは全日本に行けない」と奮起。その後崩れることなくスピード感あふれるスケーティングを披露する。

会場の手拍子に合わせ『アメリ』の世界観を存分に表現した。

99.29点のスコアが表示されると「あと1点」と思わず声に出す姿も見られた。それでも演技構成点でトップスコアを獲得し自己ベストを更新。

ノービスA1年目で勝ち取った全日本ジュニアでは、ショートで昨季滑った『チャルダッシュ』を作り変え挑む予定だ。「ひとつ目標を決めて、2つの演技を音楽と合わせて滑れるように頑張りたい」と意気込んだ。

去年8位から3位に輝いた榎本ミク(中部ブロック)。

緊張が原因で調子があまり良くなかった中、本番では勝負強さを見せ実力を発揮する。

「一番苦手なアトラクションだからあえて選んだ」という『ホーンテッドマンション』のプログラムを安定感のある滑りで魅せた。

中京大学で鍵山優真や山本草太などシニアの選手たちに囲まれながら練習を積み、全日本ノービスで初のメダル獲得となった。

4位は、竹島花英(はなは)、(中部ブロック)。

冒頭3回転ルッツ、ダブルアクセル、ダブルアクセルの3連続ジャンプを加点がつくできで決めると、その後も次々とジャンプを決めノーミス演技。3つのスピンもすべて最高評価のレベル4を獲得する。

「100点満点の滑りができた」と本人も納得のパフォーマンスとなった。

3回転ジャンプを1年で4種類習得と驚異の成長を見せた竹島。

次戦全日本ジュニアへ向けては、「3回転のコンビネーションジャンプと100点超え」と目標を掲げ挑む。

【ノービスA女子】
1位 金沢 純禾(木下アカデミー)104.80点
2位 宮粼 花凜(MFアカデミー)99.29点
3位 榎本 ミク(名東FSC)93.77点
4位 竹島 花英(LYSインカラミ)93.03点
5位 星 碧波(グランプリ東海クラブ)82.23点
6位 能登 咲空(神戸クラブ)75.63点

“二刀流”が躍動したアイスダンス

この全日本ノービスで集大成となるアイスダンスの選手たち。

八幡奈乃花・武正侑駕組が初優勝を飾った。

息ピッタリの滑りで自己ベストを更新する会心の演技を披露した。

見どころは、演技後半のリフトで、“身長が小さいから”という理由で八幡が支える側となっている。

「来年は僕がリフトできるといいなと思います」と意気込んだ武正は、シングルとの“二刀流”スケーターとして3年連続の全日本ノービスへ出場。

アイスダンス用の衣装のズボンを忘れてしまうというハプニングも、シングル用のズボンを履いて乗り越えた。

翌日シングルで出場したノービスAでもアイスダンスで培った表現力を存分に発揮。

将来目指すのは、「仲が良くてリフトも上手なカップル」。さらなる成長を目指しレベルアップしていく。

3位の中西希亜良・米田嘉一組。

2人とも高身長という抜群のスタイルを活かし、マイケルジャクソンメドレーを披露。

フランス人の父を持つ中西は、俳優とアイスダンスの“二刀流”という異色の経歴を持つスケーターだ。スケートの先生に勧められ、映画『ぼくのおひさま』のオーディションに参加したのがきっかけだという。

演技未経験ながらフィギュアスケートを学ぶ少女の役を勝ち取り、カンヌ国際映画祭にも選ばれた。

「アイスダンスのシーンもあって、毎日のスケートでの練習が活かされた」と話す中西は、
俳優活動との両立は充実しているという。

「全日本へまた出場したい」とノービス最後の来季へ向けてさらなる成長を誓った。

【ノービスアイスダンス】
1位 八幡 奈乃花・武正 侑駕(明治神宮外苑FSC)48.30点
2位 竹内 心優・土屋 悠希(明治神宮外苑FSC)44.86点
3位 中西 希亜良・米田 嘉一(明治神宮外苑FSC)41.62点