未成年客の深夜入店拒まれ、客が店員を暴行 すき家「保護者同伴でも22時以降は入店できない」
福岡県久留米市内にある「すき家」西鉄久留米駅前店で10月14日23時20分過ぎ、未成年の店舗利用を拒まれ、同行した客が店員を暴行する事件が起きました。
すき家を運営するゼンショーホールディングスによると、同社の「22時から翌5時まで未成年者は保護者同伴であっても入店を断るマニュアル」に従って店員が対応したところ、客による暴行が発生したといいます。
広報担当者によると、逮捕された客は6人グループ(うち未成年1人)で来店。
「店員が(未成年客の店舗利用を)断ったところ、被疑者が腕を掴んだり、引っ張ったり、威嚇するような動きがありました。営業に差し支えが出るので、警察に通報しました」と説明します。
なお被疑者は容疑を一部否認しているそうです。グループの中に未成年客の保護者がいたかどうかは不明です。
●深夜に外出させるのは「条例違反」なのか?
この事件が九州朝日放送などで報じられると、そもそも23時過ぎに未成年を深夜に外出させることは「条例違反ではないか?」と指摘する声がネットで上がりました。
事件の起きた福岡県の「県青少年健全育成条例」を確認してみると、「何人も、保護者の指示を受け、又はその同意を得た場合などの正当な理由がある場合のほかは、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない」とされています。(同条例34条2項)。
ここでいう「深夜」とは、23時から翌日の午前4時までとされています。
今回の事件では、来店の時間ははっきりしませんが、暴行を加えた疑いが持たれている時刻が23時20分のようです。したがって、「深夜」にあたります。
そこで、保護者の指示や同意などがない場合には、条例違反にあたりうると考えられます。
すき家のような「22時以降の未成年客の入店は禁止」というマニュアルがなかったとしても、条例違反であれば、店側が店舗利用を断ることも正当な理由に基づくといえそうです。
●すき家では、保護者同伴でも入店できない
保護者が同伴したり、保護者の同意があったりする条例違反とならない場合であっても、「すき家」では独自のルールとして未成年客は入店できません。
すき家は「全国の青少年保護条例の中で、特に厳しいルール(保護者同伴でも22時以降はダメ)に則ったもの。条例ということで強制力はないものかもしれないが、全国の店舗でそのように運用しています」と説明しています。
●入店を拒否することはできるか
SNSやネットでは「保護者同伴でもすき家入店を拒否された」として、不満を訴える声が上がることがあります。
では、すき家の対応に法的な問題があると言えるのでしょうか?
店側には、店舗の管理権があります。この管理権に基づいて、営業に支障が生じるような場合には、入店を拒否することが可能です。この管理権の行使にはかなり広い裁量が認められます。
現場の店員は、「夜22時から午前5時までの間は、未成年者の入店を断る」というマニュアルに沿って業務をおこなっています。そこで、このマニュアルの内容が合理的で、管理権行使の裁量の範囲内といえるかが問題となります。
マニュアルの趣旨は、深夜に未成年に店舗を利用させることで、青少年の健全な育成を害する行為に加担してしまうおそれなどがあり、そういったおそれを未然に防止する点にあると考えられます。
このような入店の拒否を定めたマニュアルは合理的といえるでしょう。
●「保護者が同伴している場合なら良い」のか?
それならば、「保護者が同伴している場合なら良いではないか」とも思えます。たしかに一般論としてはそのように言えそうです。
しかし、未成年者が大人と一緒にいる場合に、その大人が本当に「保護者」なのかを確かめる必要が出てきます。悪い大人に未成年者が連れ回されているおそれもあるわけです。その大人が本当に保護者なのかをチェックするのはとても大変です。
ましてや深夜帯は店員さんも少ないでしょうから、こういったチェックを行うのはかなりの負担になるでしょう。そういうことをいちいち求められれば、店舗ごとの深夜帯の店員を増やすなどの対応をせざるを得なくなり、今のような価格で商品を提供することが困難になるかもしれません。
そういう意味で、このマニュアルは合理的であり、管理権行使の裁量の範囲内といえるでしょう。
以上のように、22時から翌朝5時までの間、仮に保護者が一緒でも未成年者に店舗を利用させない、というすき家のマニュアルは、問題ないといえます。