思わず「いい加減にしなさい!」と言ってしまいたくなるが…

写真拡大 (全5枚)

 文部科学省が進める「GIGAスクール構想」が実現し、小学生の頃から1人1台のパソコンを手に学ぶ時代が始まっています。生まれたときから、インターネットやさまざまなデジタル機器があるのが当たり前の環境で育った“デジタルネイティブ”世代の子どもたち。情報収集やコミュニケーション、創造活動と、自らの世界を自らの手で広げている一方、大人にはその指南役となることが求められています。

デジタル端末を使って学ぶ子どもたち ※画像はイメージです

 そこで、デジタルネイティブ世代の子どもたちとの関わり方や情報教育について、元小学校教員で姫路大学教育学部こども未来学科講師、情報教育・教育工学が専門の津下哲也さんにラジオ関西の番組『Clip』で話を聞きました。

☆☆☆☆☆

 20年の小学校教員歴を持ち、2児の父でもある津下さん。自身の経験を踏まえながら、「(自分たち)親が子どもだった頃は、遊ぶといえば“外に遊びに行く”ことだった。でも、いまは友だちの家に行くことも少なくなっている」と話します。

 しかし、この変化も一概に悪いとは言い切れないとのこと。「オンラインゲームで遊んでいるだけだと思っても、ゲームをしながら明日の授業の話をするなど、子どもたちなりにコミュニケーションを取っている」と津下さんは続けました。

オンラインゲームは、子ども同士でコミュニケーションをとる手段にもなっているもよう ※画像はイメージです

 とは言え、子どもがゲームなどに触れている時間が長かったり約束の時間を超えたりしていると「『いい加減にしなさい』と言ってしまうことはありませんか? 私も親ですのでその気持ちもよく解ります」と津下さん。親世代に共感しつつも、「大人が単に使用時間などを制限するのではなく、ネットの使い方や利用の目的を子どもたち自身で考え、行動に移すよう育てることが大事」と説きました。

 また、マイナス面がクローズアップされることも多いSNSについて、津下さんは「勇気をもらったり、元気付けられたりする良さもある」と話します。使用にあたっては、良い面も悪い面もあることを踏まえた上で、子どもたちが自分で判断して使えるようにするにはどうすればいいかを、大人も一緒に考える必要があると伝えました。

姫路大学の津下哲也さん

 さらに、テレビや新聞、インターネットサイトなどから得た情報を読み解いて活用する「メディアリテラシー」も大事です。“フェイクニュース”=偽の情報を見抜く力を育むことも求められます。

 このように”子どもが自ら考えて行動すること”こそが、近年重要視されている「デジタルシチズンシップ(デジタル・シティズンシップ)」(※1)。津下さんによると「デジタル技術を利用して社会に積極的に関与し、参画する能力」(※2)を指します。姫路大学が来月20日に行う市民公開講座では、メディアリテラシーやSNSの活用法を学ぶ講演のほか、津下さんが情報教育とデジタルシチズンシップについて話す時間も予定されているそうです。

「世の中に流れている情報が本当なのか、見極めるのが難しくなってきているからこそ、子どもたちにはその力を身に着けてほしい」と語った津下さん。スマホやインターネットの使用が当たり前の現代だからこそ、子どもも大人も自分自身で考えて行動する力を養うことが重要と言えそうです。

写真中央右:姫路大学の津下哲也さん、同左:姫路大学の中村勇樹さん、写真右:番組パーソナリティの清水健、同左:番組パーソナリティ・夏きこ

※1  参考:総務省「家庭で学ぶデジタル・シティズンシップ」(「上手にネットと付き合おう! 安心・安全なインターネット利用ガイド」より)

※2 出典:欧州評議会(2020)Digital Citizenship Education Trainers' Pack

※ラジオ関西『Clip木曜日』2024年9月19日放送回より