25億円の見積もが8億円で済んだ…管理会社の「嘘の手口」と「本当はいらない修繕工事」

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もしあなたがマンション管理組合の理事になれば、管理会社から「修繕が必要」と言われ法外な値段の工事を要求されることになるだろう。カラクリを知らずに鵜呑みにしていると大損することになる。

調査報告書で嘘をつく

老朽化マンションの増加にともなう維持・管理費用の高騰が社会問題となっているが、最近は、工事業者とグルになって法外な修繕費用をふっかけてくる悪徳管理会社も急増している。

本誌3月9日号でその実態について詳報すると、直後から「情報提供」が殺到。マンション管理組合の理事や修繕工事の下請け業者から、「実は他にもこんな騙しの手口がある」という声が相次いだ。取材を進めていくと、「三大不要修繕」とも呼ぶべきふっかけられやすい工事があることが明らかになった。

1.配管交換

匿名を条件に取材に応じた、関東圏でマンション修繕工事下請け会社を営むA氏は、こう声をひそめる。

「修繕工事でもっともおカネがかかるのが配管交換です。マンション全体の給排水管をすべて交換するとなると、一戸あたり最低でも100万〜200万円となります。

しかし、悪質な管理会社は自社の子会社や仲間内の工事業者に割高な見積書を作らせ、ただでさえ高い費用をさらに水増ししてくるのです。工事業者からは1〜3%のキックバックをもらっているので、戸数の多い大きなマンションで配管交換をすれば、管理会社は数千万円ものキックバックを得られる」

巧妙な手口

A氏は自身が実際に工事を請け負った事例も明かしてくれた。

騙しの手口として一般的なのは、管理組合に見せる「特別レポート」を用意することから始まる。

「たとえばこんなものです」と、A氏は『排水管劣化診断調査報告書』と書かれた50枚以上に及ぶ資料を見せてくれた。診断されたマンションは東京近郊にある複数棟からなる築30年の大規模タワーマンションで、戸数は870だ。

調査報告書の冒頭10ページは、調査の概要と説明が記載されている。残りの40ページ以上は、サンプリングされた管の診断結果が写真とともに続く。比較的きれいな管もあるが、多くはサビて汚れが付着している様子が撮影されていた。A氏が続ける。

「管理会社から『サビによる腐食で穴が空いたり、汚れで管が詰まったりする危険があります』と脅され、配管の交換を提案されます。このマンションでは『一番もろいところだとあと8年で穴が空く』と報告されていますが、真っ赤な嘘。私がこのマンションの管理組合から依頼を受け、セカンドオピニオンとして再調査した結果、サビの腐食はほとんどなく、一番もろいところでも、あと40年は持つ計算でした」

この報告書では全館の配管交換が提案されており、一戸あたりの負担額は約300万円。870戸すべてで約25億円の見積もりとなっていた。

「そもそも、排水管はよほどのことがなければ故障しません。'00年以降のマンションでは、鋼を塩ビで加工したサビにくい管が使われていますし、それ以前の金属管でも汚れはほとんど付着しない。このマンションは本来、工事がまったく必要のないケースでした。

管理会社もそれをわかってムダな工事を提案しています。これこそが管理会社の手口です。それは、この報告書を作ったのが管理会社の子会社ということからも明らかでしょう」(A氏)

結局、住民の希望もあり、A氏は管の内部をクリーニングする工事のみを実施。コストは一戸あたり100万円を切り、工事費の約8億円は修繕積立金から支出した。

後編記事『マンション住民必読!やってはいけない「三大不要修繕」 と管理会社の「嘘の手口」)』へ続く。

『週刊現代』2024年9月28日号より

タワマンの大規模修繕計画「3億円」も過大に費用計上か...住民有志の見積もりで判明!5億円の工事費が、計画では「8億円」にされていた【マンション管理クライシス】