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子どもたちの運動能力や視力の低下、それに骨折率の増加といったことが話題になっています。今の子どもたちの置かれている環境は、20年くらい前と比べてまったく違うものになりつつあります。
長年、子どもの問題を取材してきた石井光太氏が、全国200人以上の先生にインタビューをし、<子どもたちの変化>を浮き彫りにした『ルポ スマホ育児が子どもを壊す』(新潮社)を上梓しました。今、子どもたちの内面で何が起きているのでしょうか。石井氏に話を聞きました。

◆今の子どもは「ハイハイをさせてもらっていない」

ーー新刊の『ルポ スマホ育児が子どもを壊す』には、保育園から高校まで、年齢別に子どもたちの身に起きている衝撃的な状態が紹介されています。なぜ、今ここに注目したのでしょうか。

石井光太(以下、石井):子どもの身体能力の低下は年々深刻になりつつあります。単に運動が苦手というだけでなく、「しゃがめない」「体育座りができない」「長い時間立っていられない」といった基本的な動作ができない子どもも多数現れているのです。これは保育園や幼稚園だけでなく、小学校以上でも見られる現象になっています。

一般的に、こうしたことは運動機会の減少が理由とされています。しかし、本の中でも紹介しましたが、最近は成育環境が大きく影響しているのではないかという意見が強くなってきています。私が取材をした方は次のように話していました。

「今の子どもは、家庭内でハイハイをさせてもらっていないのです。現在の保育園や幼稚園では、ハイハイをしていない子が一定数いるというのは常識になっています。そして、そうした成育環境が運動能力を著しく下げている原因になっているのです」

◆ハイハイは「怪我のリスクのある動き」だから…

ーーハイハイというのは子どもが当たり前のようにする動きだと思っていました。どうして、ハイハイをしない子どもが増えているのでしょう。

石井:子どもは、ハイハイの動作を通して、体幹を身につけ、身体の様々な筋力を鍛えます。だから、歩行をはじめた時、しっかりとバランスをとりながら、足腰の力で歩いたり、走ったりすることができるようになるのです。しかし、家が狭くて散らかっていたり、ずっと狭い託児所に預けられていたり、外で自由に遊ばせてもらえなかったり、家の床に赤ちゃん用マットが敷かれて滑り止めのような状態になっていたりした場合、赤ちゃんはハイハイをする機会を奪われます。

また、親が忙しく、つきっきりで面倒をみてあげられなければ、ハイハイは怪我のリスクのある動きとなってしまう。それゆえ、親は子どもにハイハイをさせず、赤ちゃん用歩行器に乗せた後、一足飛びに歩行へと移行させるのだそうです。こうなると、子どもたちは体幹も筋力も十分に育たたないまま歩きだすようになります。そうなれば怪我のリスクは高まりますし、基本的な力がついていないので身体能力の成長が妨げられてしまう。そうしたことで運動能力の低下が顕著になっているというのです。

◆「固形物をちゃんと食べられない子ども」が増加

ーー家庭環境が大きく変わったことで、子どもたちの身に色んな変化が生じているんですね。

石井:ルポの中で紹介した別の例でいえば、3歳、4歳になっても、固形物をちゃんと食べられない子がかなり増えてきています。固形物をちゃんと噛んで飲み込めないので、のどに詰まらせてしまう。そのせいで、保育園によっては、ある程度の年齢になってもドロドロとした離乳食のような食事を提供しているところもあります。誤嚥事故の防止のためです。こうしたことが起こる原因として、先生が指摘するのが親の多忙さです。通常、固形物を食べられるようになるには、親が何カ月もつきっきりその方法を教えなければなりません。