「可愛すぎん?」「ほしい!」茶柱アザラシのハンコに10万人絶賛 決済ハンコ省略で即日商品化、島根のハンコ店の底力
1円玉より小さな円内にたくさんの文字を彫り込んだはんこを作り、SNS上で話題を提供している島根県松江市の永江印祥堂。今度は、海外のアザラシ保護施設を応援するはんこでバズり、Xに投稿すると10万の「いいね」がつき、「可愛すぎん?」「ほしい!」と反響を呼んだ。ペーパーレスや業務削減で「はんこ離れ」と言われる厳しい時代に旋風を巻き起こしている。
職人の持つ高い技術を発信
1970年創業。取引の9割以上が企業や自治体だが、2022年夏から、個人消費者向けの販売を強化するため、職人が持つ高い技術をSNSで発信している。直径1・2センチの印面に87文字を彫った、文字通り手の込んだ会社紹介、「寿限無」のフルネームのはんこはXで1万以上の「いいね」が付くいわゆる「万バズ」の反響があり、島根県内外の多数のメディアに取り上げられた。
今回、はんこのモチーフにしたのは、オランダの野生アザラシの保護施設、通称「アザラシ幼稚園」。
運営団体は、けがをしたり、親とはぐれたりしたアザラシを保護しており、プールで飼育されるアザラシの姿を動画サイトでライブ中継する。日本人の視聴者に「癒やされる」とSNSで拡散され、活動を支援する寄付も集まっている。
「旬な話題は早く」わずか1日で商品化へ
これに、同社のSNS担当者がインターネット上での盛り上がりにいち早く気づき、「旬な話題は早いがいい」と、普通の企業なら何段階も「はんこ」がいるような決裁を必要最小限まで省略し、わずか1日で商品化を決めた。福間敏之取締役は「上司への相談がハードルになるとタイムラグになり、旬を逃す。指示待ちではなく、自発的な行動を応援したい」と背中を押す。
プールで立ち泳ぎするアザラシを見た視聴者が「茶柱みたいだ」と表現したことをヒントにイラスト化したはんこやスタンプ計5種類を8月上旬に販売した。
このうち、島根県美郷町産の木材を使ったはんこは1本8800円の限定50本が即日完売。直径1・8センチの印面に、湯飲みに浮かぶ小さなアザラシが描かれており、幸運の兆しと重宝される「茶柱」のような姿にほっこりする。
職人の村尾直樹生産部課長(49)によると、手書きイラストのあたたかみが伝わるよう、線に強弱をつけたり、浮かぶアザラシに小さな目を付けたりする作業に、高い技術が求められるという。
売り上げの一部はアザラシ幼稚園の支援にと、23日付で20万円超を寄付したことをSNS上でも報告した。
個人の需要は確実にある
村尾課長はたびたびSNSで注目されることについて、「こんなに反響があるとは思っていなかった」と笑顔を見せる。
自治体や企業で進むペーパーレスや省力化に伴う「脱はんこ」の一方、荷物の受け取り印や名前のスタンプといった個人の需要は確実にあると福間取締役も見ており、「印鑑は普通、名前を彫るからSNSで『作りました!』と自慢するような物ではない。だから伝わりにくいが、いろんな物を彫れるとチャレンジしてきたい。今回はそれが形になった」と話す。
同社のXフォロワーは20日、6万人を突破した。今回の取り組みに対してはアザラシ幼稚園側からも「感謝します」と反応があり、共感は海を越えている。
(まいどなニュース/山陰中央新報)