【EVO 2024】
7月20日~22日 開催
※日本時間

 もはや夏の風物詩となった世界最大級の格闘ゲームの祭典「Evolution Championship Series」。2024年のメインタイトルは「ストリートファイター6」、「ギルティギア ストライヴ」、「THE KING OF FIGHTERS 15」、「鉄拳8」、「グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-」、「アンダーナイトインヴァース2 シスタセレス」、「Mortal Kombat 1」、「ストリートファイターIII 3rd Strike」の8タイトルである。

 「鉄拳8」において本大会は、EVO Japan 2024の大会終了後、数回行なわれた大幅なゲームバランス調整を受けた後の世界最大級規模の大会となった。

 ゲームバランス調整後の大会という意味では、TEKKEN World Tour 2024の予選大会などで既に世界中で激しい戦いが行なわれているので、貴重な大会シーンというわけでもない。だが、EVOという大会は格闘ゲーム界における最大級の大会であり、前述の大会にも引けを取らない、格闘ゲーム界、eスポーツ界において非常に価値が高い大会である。

 そしてなによりEVO Japan 2024には参加できなかったパキスタン勢が今回は参加している。かつてたった1回の大会で鉄拳界の勢力図を一変させた彼らは、「鉄拳8」でも強豪国として名乗りを上げることができるのか? という点が今回のポイントとなった。

 本稿ではメインタイトルの1つ「鉄拳8」の最終日の結果についてレポートしていく。参加者4,651名の戦いを勝ち残り、最終日に駒を進めたプレイヤー6名は以下の通りである。

【ウィナーズサイド】
・KEISUKE選手
・ATIF選手
・Arslan Ash選手
・Raef選手

【ルーザーズサイド】
・ノビ選手
・ULSAN選手

【Evo 2024 - 日本語実況配信 - Arena Stage: GBVSR, GGST, TK8, SF6: Top 6】

ウィナーズセミファイナルは“アグレッシブな鉄拳”を体現する瞬殺劇の連続

 TOP6の第1試合はKEISUKE選手とATIF選手の組み合わせ。KEISUKE選手は日本で「鉄拳」のプロライセンスを所持しているプレイヤーの中では希少な三島一八使いである。一時期は使用キャラをキャラ性能が一八より高いと言われていた麗奈に変更しようかと練習配信をしていた時期もあるが、EVOまでの間に行われた大規模なキャラクター性能の調整により一八が強化されたため、改めてメインキャラを一八に定めたようだ。

 対するATIF選手は、かつて鉄拳界に衝撃を与えた国パキスタンの選手である。なんと今回がEVOには初参戦であるようだ。大会参加回数はあまり多くないが、「鉄拳7」時代最強プレイヤーに名前が挙がるほどの猛者である。ATIF選手の使用キャラは「鉄拳8」発売初期から最強キャラクター候補に名前が挙がっていたセルゲイ・ドラグノフを選択した。ドラグノフも前述の調整により、一八とは対称的にやや強すぎた部分を抑えられた面が多いが、それでもまだトップキャラクター戦線に食い込んでいるキャラクターである。

左がKEISUKE選手、右がATIF選手。KEISUKE選手は使用キャラ三島一八の代名詞的技、風神拳のポーズだ

 1試合目はKEISUKE選手が、一八の強みであり、彼自身が得意とするスピーディーな攻めを行おうとする。発生フレームが速く、視認してしゃがみガードは不可能なレベルである奈落払いを使ってガードを崩そうと試みるが、それをATIF選手がことごとくガードし、しっかりと確定反撃まで決めて大ダメージを奪っていき、ATIF選手が1試合目を制する。

人間の反応では見てから防御するのはまず不可能である一八の下段攻撃である奈落払い。一八の勝ちパターンとして視認できない下段攻撃を使って、立ちガードかしゃがみガードか迷わせたいのだが、その布石が全く打てないというのは衝撃的だった

 2試合目、これも「鉄拳」、そして一八を代表する強力な技「風神拳」をラウンド開始から使用して勢いを取り戻そうとするが、ATIF選手が冷静にこれを回避して逆に空中コンボ始動技を決められてしまう。

開幕から風神拳を使い、豪快な攻めを展開しようとするKEISUKE選手。スピードも速く、空振った所への反撃は練習しても難しいはずなのだが、いきなりあっさりと大ダメージとなるコンボ始動技でATIF選手が反撃したのには筆者も開口してしまった

 ただ、KEISUKE選手も黙ってはいない、しゃがみガードを奈落払いで意識させたこともあり、2試合目の途中から中段攻撃でしゃがみガードを崩すことができるようになったり、得意の風神拳がヒットするようになる。ただ、ラウンドを獲得するところまでは繋がらず、2ラウンド目をATIF選手が連取する。

 3ラウンド目、大幅な体力差ができ、あと1発の被弾で敗北が決定する中、KEISUKE選手が命がけの下段捌きからコンボを決め、温存していたヒートゲージを用いて強化された一八で猛攻をかける。しかし、地上戦でダメージを奪われているため、「鉄拳8」の特徴である“空中コンボで受けたダメージの一部は攻撃を当てることで回復できる”が機能せず、戦況は苦しいまま。最後はドラグノフの下段技であるシャープナーを被弾し、ルーザーズへ転落することになった。

 もう1つのウィナーズセミファイナルも衝撃のデータの公開から始まった。Arslan Ash選手。最早説明不要のパキスタン旋風を巻き起こしたその人である。その戦績はEVOの名前を冠する大会に7回出場、優勝回数4という驚異的なスコア。

 そしてその対戦相手であるサウジアラビアの風間仁使い、RAEF選手も今回がEVO初参戦でここまで勝ち上がっているという華々しい戦績である。

ここまで勝ち上がってくる選手なので当然戦績は豪華ではあるが、出場回数に対する優勝回数の割合の高さ、EVO初参加でTOP6出場選手が2名というのは格ゲータイトルでも珍しいデータだろう

 「鉄拳8」でもEVOの舞台に現われたArslan Ash選手が操るのはニーナ・ウィリアムズ。前作で使用していたキャラのほとんどが現在は「鉄拳8」に参戦していないのと、「鉄拳7」ではDLCキャラクターを多く使用していたイメージがあるので、初代「鉄拳」から参戦しているキャラクターを使っているのにはかえって新鮮さを感じた。ニーナは今作では高いキャラクタースペックを誇っているとは言われているが、操作難易度や素早い試合展開の中で判断しなければいけない情報量が多いため、思ったより使用プレイヤー数が伸びていない、強いけどマイナーなキャラクターというイメージを筆者は持っている。

操作難易度は高いが、使いこなせれば強力なキャラクターであるニーナ

RAEF選手の操る仁は、受け流しという相手の攻撃を回避することで大幅に有利な時間を作る技を持っているが、単発の技に狙う方が効果的。スピードの速く、手数の多いニーナにはあまり機能しないためか、代わりに相手の攻撃を軸をずらしながら攻撃できる技で攻守を兼ねていたのが特徴的だった。これが仁の対ニーナ対策なのだろう

 攻防一体の技性能で攻守を行なうRAEF選手の仁。それに対しニーナはArslan Ash選手のプレイヤースキルで攻守を両立させていたように感じた。相手の攻撃を受け止めながら攻撃できるパワークラッシュ技や、横移動での攻撃回避からの反撃と、オーソドックスなテクニックで仁の体力を的確に奪っていく。勢いまかせに攻めているように見えて、しっかり攻撃を避ける動きをした上で、回避後に精確に大ダメージを与えられる反撃方法を行う姿はまさに「サイレントアサシン」の異名を持つニーナにふさわしい動きだった。

ニーナを壁際に追い詰め、千載一遇の好機を得た仁。ヒートスマッシュで壁に押し付けてから、前身という特殊構えから出せる技で更に優位な状況を継続しようと上段攻撃を放ったが、その瞬間だけ一瞬しゃがんで回避、その後浮かせ技を当ててKOという驚異的な防御からの反撃でラウンドを取った瞬間。凄まじい防御スキルと攻撃スキルを両立していたArslan Ash選手の衝撃的なシーンだ

 2試合目はRAEF選手も仁の技だけでなく、横移動のような基本的な動作を使って反撃をしっかり叩き込み、高いダメージを奪っていく。しかし、ニーナの得意戦術である小技でコツコツとダメージを稼いでいく戦術でラウンドを取るまでには至らない。

 かと思えば、突然信じられない行動をする。ニーナが突然レッグスイープという攻撃するまでの長い時間がかかる技を繰り出していた。この技は「鉄拳」に慣れた上級者ならば技の動き出しを見てからガードして、大ダメージの反撃を行うことは難しくないため、上級者同士の対戦ならばまず使われることはない。その技を突然繰り出してきた上に、仁が放ったヒートバーストという攻撃を耐えつつヒート状態へと強化される行動にしっかりと直撃させていたのだ。ヒートバーストへの対策一点読みで放ったというよりかは、相手がここではレッグスイープへの警戒が薄れる時に放ったのだろうが、突然の大胆な選択肢には驚かされた。

 2試合目も2ラウンドを連取され、もう後がないREAF選手。1試合目の壁際でのヒートバーストからの同様のシチュエーションが発生するが、今回は前身からの構え攻撃は回避されず、その後の攻めが継続したが、ここでもしっかり下段攻撃をガードされて手痛い反撃を受けてしまう。その後お互いKO圏内に入り、近距離で横移動をシンクロしたように様子を見ていたと思ったら突然再びのレッグスイープが炸裂し、追撃まで入れて決着。魔術の様に当たるレッグスイープでパキスタン勢同士のウィナーズファイナルが決定した。

2試合目の2ラウンド目……

3ラウンド目、どちらも決め手になったのがレッグスイープ。2ラウンド目ではヒートバーストの攻撃を受け止める判定は下段、投げ技等の一部の技には適応されないこと、3試合目では横移動からの様子見で下段ガードへの警戒が薄れていたから当たったかのように見えた

パキスタンへ挑むのは誰だ? 日本・韓国・サウジアラビアの戦いに!

 ここからはルーザーズブロックの様子をお届けする。

 ルーザーズクォーターファイナルでは韓国の強豪プレイヤーULSAN選手と、惜しくもATIF選手に敗れた日本のKEISUKE選手の戦いとなった。ULSAN選手はドラグノフを選択しており、先程ドラグノフに敗れたKEISUKE選手が悪いイメージを拭い去って戦えるかがポイントとして筆者は観戦していた。

ULSAN選手

 動きが消極的になるかが不安視されたKEISUKE選手だが、先程の敗戦後にSNSで悔しさをポストするぐらいのハートの強さを見せており、それがこの試合にも現われていた。いつも通り前へ前へ踏み出していく攻め攻めの動きで、ULSAN選手のドラグノフに果敢に攻め込んでいく。先程は使わなかったパワークラッシュ技を使っていくなど先程の悲壮感はまったくなかった。

 1試合目はフルセットまでもつれたが、先程は手痛い反撃を受けたラウンド開始と同時の最速風神拳が見事ヒットし、勢いを取り戻したKEISUKE選手。そのまま念願の本日初勝利を飾った。

 2試合目もKEISUKE選手の一八は勢いのままに攻め込むが、一八のキャラ性能上、勝負どころで仕掛けた攻撃がガードされると大ダメージの反撃を受けてしまうのは仕方のない結果であり、ULSAN選手が1試合を取り返す。韓国のトッププレイヤーと日本の唯一の三島の星が互角の試合を繰り広げている熱戦となった。

 TOP6にてようやく初めて最終戦までもつれ、お互い引けない、国のプライドも賭けた大事な3試合目の前のインターバルではお互いの動作が対称的な面白い出来事も起きた。

座席右側に座るKEISUKE選手の元に駆けつけたのは同じく「鉄拳8」の猛者である渡辺選手。KEISUKE選手に助言か、飲み物のようなものを渡すような所作をしていた

そのインターバル中に対戦相手のULSAN選手はまさかの自撮りタイム。今年のEVO Japanの鉄拳部門でも友達の家で遊んでいるような和気あいあいとした動きをしている選手がいたのを思い出し、思わず頬が緩んだ

 その直後の最終戦は「ゆるい」時間を吹き飛ばすような熱い戦いへ。助言を受けての影響か、今までKEISUKE選手が使わなかった技を打ってみるが、それをULSAN選手が初見でガードし、しっかり最大ダメージの反撃を返す。しかしKEISUKE選手も怖じ気付くことなく強気の2択チャンスではリスクがあっても中・下段の揺さぶりを諦めず、渾身の腿砕きでラウンドを取る! 2-1で先にULSAN選手がリーチをかけるも、ヒート状態限定のコンボで2-2のフルセットに喰らいつく展開に。

 しかし最終ラウンドではULSAN選手がKEISUKE選手の得意ムーヴである開幕風神拳の猛攻への意趣返しの様に開幕からコンボ始動技を決め、いきなり大ダメージを与える。しかしKEISUKE選手も冷静に横移動で大ダメージを避けられる位置取りを取り直し、形勢を立て直す。そしてポジション取りを直したところで代名詞の風神拳を放つが、ここでしゃがみにより回避されトドメの空中コンボを受けて万事休すかと思いきや、ポジション取りが功を奏し首の皮一枚ほどの体力が残る。

 続けざまにULSAN選手はヒートバーストをガードさせてラッシュを継続させて、ガード崩しの択を仕掛け、下段択がヒット! ULSAN選手が韓国最後の希望として駒を進めた。また、KEISUKE選手は5位入賞が決定した。

熱戦が終わった後は笑顔とハグで健闘を称え合う両選手。先程まで痺れるような試合を繰り広げていたとは思えないほど柔らかい表情をしていた

 そしてノビ選手が今年のEVO Japanのチクリン選手と同じような立場、いわゆる「ラストサムライ」になり、相手もサウジアラビア最後の選手であるRAEF選手との対戦が始まった。

この時点でウィナーズファイナルに残ったのがパキスタン選手のみ。かつ2名残っていた日本選手もノビ選手のみとなったなので、結果としてグランドファイナルで打倒パキスタンへの挑戦権を得ることになる選手は各国1人ずつになっている。ラストサムライはどの国も同じだ

 ノビ選手は最初からエンジン全開。RAEF選手の操る仁は相手の攻撃を捌いて隙を生じさせたり、軸をずらして攻撃を回避することも得意なキャラクターなので強引に攻めるのは躊躇われるのだが、それを恐れず、猛攻を仕掛けていく。

 ノビ選手の動きは決して攻め一辺倒ではない。RAEF選手がドラグノフのプレッシャーを恐れて攻撃によって状況を打開しようとした際には、横移動のような回避行動で冷静にカウンターを狙う戦術を行なっていた。この「自分は攻撃するけどお前の攻撃は通さないぞ!」と言わんばかりの動きがRAEF選手のミスを誘う。最終ラウンドまで追い詰められたRAEF選手は、レイジアーツを使用して攻撃を受け止めつつ反撃しようとするも、攻撃を受け止められる体力がない状態で発動してしまい、KO負けを喫してしまう。これは「鉄拳8」の上級者ならばまず侵さないようなミスであり、それほどまでにノビ選手の立ち回りはキレッキレであった。

 インターバルを取り、先程より動揺せずノビ選手の動きに対応していたRAEF選手だが、ラウンドを取るまでには至らず、2試合連続で3-0というラウンドスコアでノビ選手が好調なスタードダッシュを決めた。

RAEF選手の戦績だが、最終日まで1試合も落とさずにウィナーズ側で勝ち残っている上に、今回がEVO初参戦である。今後の活躍が気になるところだ

ルーザーズブロックの裏でパキスタン同国対決

 ウィナーズファイナルは禁断のパキスタン勢同士、Arslan Ash選手とATIF選手が対戦。ここで気づいたことだが、ここまでパキスタン勢の選手にTOP6で1ラウンドを奪取できた選手は1人も居ないという衝撃の結果が起きていた。

 そんな超人じみたプレイヤー同士の対決は1試合目から異次元な戦い。先程ノビ選手がRAEF選手相手に見せた起き攻めでヒート状態限定の投げ抜け不能の投げ技を重ねてダメージを奪うセットプレイを初見でAsh選手のニーナは回避、身内同士ならではの読みあいのためかフルラウンドまでもつれる熱戦へ。1試合目はAsh選手が勝利した。

 2試合目ではいきなりAsh選手がパーフェクト勝利を決めると、次のラウンドではATIF選手がタイムカウント8カウント以内でパーフェクト返しの猛攻を見せる。殴り合いでいつ被弾してもおかしくない対戦だが、なんと3回もパーフェクトラウンドが発生した激闘はATIF選手が制した。

 3試合目もお互いに殴り合う展開が発生し、ラウンドは早期決着ばかり。またもやパーフェクトで勝利したAsh選手がグランドファイナル進出へリーチを掛ける。

 4試合目は衝撃のシーンが2つあった。1つは先程までハイスピードで攻めを展開していたニーナが、突然また例のレッグスイープという遅い技をドラグノフに命中させたこと。そしてもう1つは、その後のラウンドでATIF選手のドラグノフが体力MAX、Ash選手のニーナがレイジ突入という圧倒的体力差からなんと大逆転勝利を収めたことだ。残り体力2割強ほどからの衝撃の逆転劇でArslan Ash選手はEVO鉄拳シリーズ2連覇という前人未到の偉業達成へ後1勝となった!!

やたらヒットするレッグスイープからの追撃で逆転。EVO Japan 2024においてチクリン選手の暴れライトゥーが魔法のようにヒットしていたが、同じ様に神がかったような確率でヒットしていた

前述の画像でフルラウンドにもつれ込み、圧倒的体力差を作った上、壁を背負わされてドラグノフの勝利は確実か? と思ったところからレイジ状態の攻撃力アップと、本作で導入された“攻撃を当てると白い体力ゲージが回復する”の相乗効果で徐々に押し返していくニーナ。最後は下段攻撃をガードしてからの空中コンボで勝負あり

ルーザーズセミファイナルは日韓対決!

 そしてATIF選手の待つルーザーズファイナルへ進む1人を決めるルーザーズセミファイナルは「鉄拳」おなじみ日韓対決となった。

韓国の最後の1人ULSAN選手(左)と、日本最後の1人ノビ選手(右)。ノビ選手はずっと笑顔を見せておらず、先程にこやかなシーンを提供してくれたULSAN選手もこの顔つき……

 そしてULSAN選手もノビ選手もドラグノフを使い続けていたため、ここは日韓ドラグノフ頂上決戦か?と思われたがULSAN選手が選んだのは今作からの新キャラクター麗奈であった。高いキャラスペックを誇っていたが、EVO Japanから今大会までに行われたゲームバランス調整で弱体化調整を受け、若干最強キャラクター戦線からは離れた感のあるキャラクターである。

筆者のメイン使用キャラクターでもある麗奈。主な弱体化内容は主力技の横移動への追尾性能が削除され回避しやすくなったこと、特定の技の攻撃回避性能の削除、ヒートダッシュから組み込めていたダウン追い打ち技のダメージの低下といったところだ。特に中距離戦辺りでは相手の横移動をどう抑制させるかがより重要となったと感じる

 1試合目はフルラウンドまで発展。最終ラウンドでは先にノビ選手がヒート状態を開放した。ここから始まる攻めを受け流すためにULSAN選手がヒートバーストを発動するが、相手の攻撃を受け止められるパワークラッシュ判定を打ち破ることができるヒートスマッシュを使うという作戦勝ち。

 2試合目の1ラウンド目でも麗奈対策が光っていた。筆者の私感だが、麗奈は素早い連携で相手を混乱させるのが得意である。なので、反撃することで麗奈の攻めを止めようとするプレイヤーも多く存在する。そこを高性能なバックステップや横移動を使い回避し、その隙を攻撃するのが勝ちパターンだと考える。

 その横移動を使いたくなるタイミングで、ノビ選手は横移動に対して効果的な技を選択、ダメージを稼いでいた。そして劣勢に立たされたULSAN選手がヒートバーストのパワークラッシュを用いて状況の打開をしようとしたところを横移動で回避して1ラウンド目を獲得していた。これは今年4月のEVO Japanのゲームバランス時点ではできなかった戦術である。

 この3カ月間で行なわれた大幅なゲームバランス調整の1つであるヒートバーストの仕様変更。ヒートバーストは発動時にパワークラッシュ判定を持つ打撃技を放つ。この打撃はEVO Japan開催時点では横移動にもホーミング性能を持つので、打撃技の射程範囲内であればガードをするか、タイミングに合わせて投げ技や下段技を使うしかなかったため、比較的安全に形勢を立て直すことができた。しかし現在のバージョンではホーミング性能が削除され、横移動で打撃技を回避するとこのように空振り、反撃を受けるようになった。

このシーンはKEISUKE選手の試合でも見受けられた

 2ラウンド目まで万全のキャラ対策が光るノビ選手。最終ラウンドでもその動きが功を奏し、残り体力わずかまでULSAN選手を追い詰める。ULSAN選手は逆転をかけたレイジアーツぶっぱなしを行なうが、これもノビ選手の手のひらの上か、レイジアーツで受け止められない大ダメージの打撃技を重ね、2-0で2人のパキスタン勢へ待ったをかけるべくルーザーズファイナルへ進む。

観れば観るほど「麗奈はこれやられると辛い、苦しい」という感想しか出てこないほどの完封ぶりだった