似顔絵を囲むように花などで埋め尽くされた献花台=2024年6月30日、北海道旭川市の中央公園

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 北海道旭川市で2021年3月、いじめを受けていた中学2年広瀬爽彩(さあや)さん(当時14)が公園で凍死体で見つかった問題で、市の再調査委員会(尾木直樹委員長)は30日、市教委の第三者委が「不明」としていた自殺との因果関係について、「いじめ被害が生徒の自殺の主たる原因であった可能性は高く、いじめ被害が存在しなければ、生徒の自殺は起こらなかった」との調査結果を明らかにした。

 市教委の第三者委は調査報告書で「凍死は自殺」としたが、自殺に至る要因は、いじめ以外にも学校での不適応、孤独感など多岐にわたり、因果関係を特定できなかったことから「不明」としていた。

 広瀬さんは2019年4月の中学入学直後からいじめを受け、6月に市内の川に入り自殺を図った。入院した広瀬さんは転校し、その後不登校になった。21年2月に失踪し、3月に凍死体で発見された。

 再調査委は、広瀬さんのSNSに、いじめの被害が長期にわたって繰り返し投稿され、恐怖、死についても言及されていることに注目。「いじめ被害が過去のものとはならず、継続して生徒を苦しめ、死にたいという思いが何度も湧き出る中で、死を決意させたと判断することは困難ではない」とした。

 広瀬さんが、いじめに起因する心的外傷後ストレス症(PTSD)を発症していたといい、自殺に至るまで、症状が軽減することはなかったとしている。

 トラウマ的な経験が、フラッシュバック現象につながり、恐怖感情、自責感、孤立無援感などが続き、サポートがあったものの、「癒やすにはいたらなかった」と判断した。

 報告書は、学校と市教委の対応の問題点についても触れた。中学校が「いじめととらえるのではなく、生徒の問題行動とのみとらえて、いじめへの対処を怠った」と指摘した。

 広瀬さんが自殺未遂を図った後に転校した中学校には、いじめについての引き継ぎはおこなわれず、転校先で考慮されることはなかった。市教委も広瀬さんの発達性の病気については助言したが、いじめによるPTSDについては「評価されなかった」と批判した。(奈良山雅俊)

 ■広瀬爽彩さんの死亡をめぐる経緯

 <19年4月> 広瀬爽彩(さあや)さんが北海道旭川市立中学校に入学

 <4〜6月> 上級生から性的ないじめを受けるようになり、未明に呼び出されたり、菓子などをおごらされたりする

 <6月> 市内の川へ入り自殺を図る

 <8〜9月> 市教委と学校が設けた「謝罪の場」で生徒らが母親に謝罪

 <10月> 道教委が市教委に、いじめの疑いがあると考え対応するよう求める。しかし市教委はそれ以上調査せず

 <20年5月> 広瀬さんがツイッターの匿名アカウントでいじめを受けていたと投稿

 <21年2月> 自宅を出た後、行方不明に

 <3月> 凍死体で発見

 <4月> 文春オンラインが報道。市総合教育会議が、いじめの疑いのある重大事態として調査を市教委に求める

 <6月> 市教委の第三者委員会が調査開始

 <8月> 遺族の代理人弁護士が母親の手記と広瀬さんの名前を公表

 <22年3月> 第三者委が中間報告で6項目のいじめを認定。4月に概要を公表

 <9月> 第三者委が最終報告書を公表。自殺といじめの因果関係は「不明」とした。遺族側が再調査を求める。旭川市長が市長直属で再調査を行うと表明

 <12月> 市が教育評論家の尾木直樹氏ら5人に再調査委員を委嘱、東京で初会合

 <23年9月> 黒塗りなしの報告書が流出しているとの情報。10〜11月に市教委が調査したが、「事実を確認できず」

 <24年6月> 報告書の「たたき台」とみられる黒塗りなしの文書がネットに流出。市教委が削除要請など対応に追われる

 <30日> 再調査委員会が調査終了を報告

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