※写真はイメージです(以下同)
 アイドルやキャラクター、作品コンテンツなどを応援する「推し活」。いまや3人に1人の割合で「推し」がおり、日常の4割を「推し活」に費やしているそうです(※)。

 そんな「推し活」ブームの中、トラブルが生じて病んでしまうケースも。充実した「推し活」ライフを送るにはどうすればよいのでしょうか。

『「推し」で心はみたされる? 21世紀の心理的充足のトレンド』(大和書房)を著書に持つ精神科医の熊代亨氏に、推し活の楽しみ方やその注意点を伺いました。

 前編に続き、【後編】では推しとの本来の向き合い方や、人が「推し活」に人がハマる理由などをお話しいただきます。

※出典:HAKUHODO & SIGNING「OSHINOMICS Report」(2024.02)より

◆SNSではなく、「推し」と向き合うこと

――「推し活の功罪」のうち「罪」として頻出する、もう一つのテーマが金銭問題です。“積む(CDやグッズなどを大量に購入したり、対象に多くのお金を費やすこと)”ことが当然とされ、積めなければファンと名乗れないと悩むケースも。

熊代亨氏(以下、熊代):そういう方に伝えたいのは「キョロキョロしなくていいんだよ」ということです。本当は他人の「推し活」など気にせず、それぞれが身の丈にあった「推し活」をすべきだし、使った金額は推しへの「愛」の量とイコールではない。

本来、ファンとして肝心なのは推しに費やしたコストの量ではなく、「どれだけ強く感動したか」だったはずなんです。それが金額や回数に還元されてしまうのは堕落だと思いますし、推しを愛するという本来の目的から外れていってしまいかねない危うさを含んでいると思います。

――「推し活」仲間のSNS等を目にすることで、その界隈でのルールを意識せざるを得ないという面もある気がします。

熊代:「キョロキョロしなくていい」とは言いましたが、気にしてしまう気持ちも、もちろんわかります。たとえば「推し活」に多くの金額を費やしている人たちが、それとなく見せびらかすこともあるでしょうし、さらにお金を使わないとファン失格、みたいなことを言う人もいるわけです。

「推し活、かくあるべし」的な基準がSNSの中で何となく作られてしまって、それに乗らなければいけないような空気が勝手にできあがっていますよね。

ただこれは、「推し活」というより「SNSの功罪」に直結した問題だと思います。逆に言えば、SNSの存在感や影響力がより強くなったことで、「推し活」には「萌え」の時代にはなかった苦しさのようなものが生じていると言えるかもしれません。

――空気に呑まれないようにするコツはあるのでしょうか?

熊代:まずシンプルにSNSを見過ぎないことですよね。そしてもうひとつ、1対1でコンテンツと向き合う時間を大切にしませんか、ということです。自分にとってその「推し」はどういう存在なのか、なぜその相手を応援しているのか、あらためて向き合う時間も大切にしてみませんか? ということは提言させていただきたいです。

――SNSではなく、推しとしっかり向き合いましょうと。

熊代:そこが出発点なはずですから。

◆「キラキラ」の後に「推し活」ブームが来た意味

――なぜ今、多くの人が「推し活」に多くの人がハマるのでしょうか。

熊代:まずは応援するのは気持ちがいいから。人間って自分が褒められること、つまり「承認欲求」が満たされることだけが気持ちいいわけじゃないんです。みんなで一緒に御神輿を担ぐ行為は楽しいんです。

さらにSNSの存在も重要です。「自分はこのアイドルを推している」「これだけお金を使っている」と、誰でも世間に対して簡単にアウトプットできる。つまり、みんなにアピールすることができるようになった。これも大きいですよね。