OpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiといったチャットボットは、ユーザーから投げかけられた質問や要求に対してある程度正確に答えてくれます。一方で、依然としてAIは人間レベルのジョークやお笑いは困難であるとの調査結果が発表されています。

A Robot Walks into a Bar: Can Language Models Serve as Creativity Support Tools for Comedy?An Evaluation of LLMs' Humour Alignment with Comedians - 2405.20956v2.pdf

(PDFファイル)https://arxiv.org/pdf/2405.20956



Why AI being funny could herald the next big tech breakthrough | Mashable

https://mashable.com/article/ai-comedy

Can AI chatbots crack good jokes? - The Verge

https://www.theverge.com/2024/6/19/24182042/can-ai-chatbots-crack-good-jokes

これまでの調査で、ChatGPTに対して1000個のジョークを求めると、高い確率で25個の決まったジョークを言うことが判明しています。

ChatGPTには25個の「お気に入りのジョーク」があることが判明 - GIGAZINE



このように、AIがジョークを言うことは非常に難しいと考えられています。ジョージア工科大学のマーク・リードル教授は「ほとんどの人は、ジョークをはじめとするユーモアがどれほど難しいかを理解していません。なぜなら、よいジョークにはたくさんの要素が詰まっているからです」と指摘。

海外メディアのMashableによると、ChatGPTのようなチャットボットは、「期待を膨らませ、緊張感を作り出し、予想外のオチで解き放たれる」というジョークのエッセンスを理解しておらず、単に言語の予測パターンを生成しているとのこと。そのため、「世界中のコメディアンに朗報なのは、ほかの仕事と異なり、AIが人間の仕事に取って代わることを心配する必要はないかもしれません」と述べています。

実際にGoogle DeepMindのピョートル・ミロウスキー氏らの研究チームは、2023年8月にイギリス・エジンバラで開催された「AI×お笑い」ワークショップに参加したコメディアン20人に対し、「ChatGPTやGeminiなどのチャットAIを使って、面白いネタを生み出してください」と依頼。



実験の結果、一部のコメディアンは「AIを使ったジョークの生成は楽しかった」と述べる一方で「生成されたネタは特別満足できるものではありませんでした」と回答。ある参加者は「生成されたジョークは、1950年代のクルーズ船向けのコメディのようですが、人種差別的傾向が控えめでした」と評しています。言い換えると、AIが生成したジョークは当たり障りがなく、つまらなかったそうです。

あるコメディアンは「いくら指示しても、堅苦しいジョークしか生成されませんでした」と指摘。また「労力の量に見合った成果が得られませんでした」と回答しています。



実際にAIが生成したジョークが以下。

Q:Can you write me ten jokes about pickpocketing?(スリについてのジョークを10個答えて?)

A:I decided to switch careers and become a pickpocket after watching a magic show. Little did I know, the only thing disappearing would be my reputation!(マジックショーを観た後、私は転職してスリになろうと決めました。まさか消えたのは自分の信用だけだなんて考えてもみませんでした!)

Q:Please write jokes about the irony of a projector failing in a live comedy show about AI.(AIについてのお笑いショーでプロジェクターが故障するという皮肉に関するジョークを書いてください)

A:Our projector must've misunderstood the concept of 'AI.' It thought it meant 'Absolutely Invisible' because, well, it's doing a fantastic job of disappearing tonight!(プロジェクターはきっと「AI」の概念を誤解していたのでしょう。「Absolutely Invisible(まったく見えない)」と考えていたのかもしれません。なぜなら今夜は消えるという完璧な役割を果たしたからです!)



コロンビア大学のトゥヒン・チャクラボルティ氏は「今後ますます人々はAIを台本や脚本、広告のキャッチコピーの生成に使うようになるでしょう。しかし、本当に創造的でユーモアのある文章を生成するためには経験と感情が必要になり、それはアルゴリズムでは成しえないものです」と指摘しました。

また、チャクラボルティ氏は「ジョークを含む創造性のある文章の生成には、既存の規範からの逸脱が必要ですが、与えられたデータで学習したAIは模倣しかできません」と述べています。