よりクリーンでヘルシーなエナジードリンクに対する投資家の関心が、炭酸の泡のように弾けて消えていきそうな気配はない。エナジードリンクのカテゴリーでは、利益を生んだいくつかの企業が撤退したあと、投資家が新たな挑戦者の支援に意欲的であることが証明されている。そうした数々の新規ブランドが手本にしたいと思っているのは、株価がこの1年で2倍以上に上昇して勢いを増すセルシウス(Celsius)だ。かたやロックスター(Rockstar)のような、このカテゴリーにおける昔からの大手企業は、近年売上が減少している。そのため、新興企業には十分な空白が残されていると考えている。ゴージー(Gorgie)、オデッセイエリクサー(Odyssey Elixir)、ジョギー(Joggy)など、カラフルなブランディングに緑茶ベースやキノコカフェインといった天然成分で目立とうとする新規企業がここ数年で相次いで参入を果たしている。だがそれでもエナジードリンクに対する熱狂が冷める兆しはない。スターバックス(Starbucks)のようなコーヒーチェーンの大手ブランドでさえ、最新の決算でゼロカロリーから低カロリーの飲料を近々発売すると発表するなど、このカテゴリーが売上に弾みをつけることを期待している。一方、スタートアップ企業は、より健康的な成分やさまざまなカフェイン含有量、さらに幅広いオーディエンスにアピールする現代的なブランディングによって、自らの持続力を証明しようとしている。

ペプシとコカ・コーラ出身の2人が創業した「キー」

こうした状況で最近新たに登場した天然エナジードリンクのひとつに、キー(Key)がある。4月にローンチしたキーは発酵ケトンでできており、体にエネルギー源を供給するサプリメントだ。共同創業者は元ペプシ(Pepsi)のテクラ・バック氏と元コカ・コーラ(Coca-Cola)のカリシュマ・タワニ氏で、投資家と購入者の双方にとって、低糖と天然成分が大きな魅力だという。キーは、販売とマーケティングを開始するための400万ドル(約6.3億円)のシードラウンドを実施し、エレウォン(Erewhon)やAmazonなどいくつかのチャネルで販売を開始した。このラウンドはアグファンダー(AgFunder)が主導し、消費財(CPG)ファンドのアレシア(Alethia)とSIJインパクトファンド(SIJ Impact Fund)が追加支援している。「ケトンを新しいプロテインという位置付けにしたい」とタワニ氏は言う。「資金調達に関して重要だったのは、製品の背後にある科学と、なぜそれが差別化できるのかを理解してくれる適切な投資家を見つけることだった」とタワニ氏は語った。同氏によれば、リサーチや飲料業界における創業者たちの経験から、多くの人々が天然エナジードリンクを求めており、さらにその効果が長時間持続することを望んでいることはわかっていた。そのためキーは、そうした需要に応える飲料として自らを位置づけている。

活気づく投資家たち

コエフィシエント・キャピタル(Coefficient Capital)のパートナーであるアンナ・ホワイトマン氏は米モダンリテールに対し、投資家が、食品・飲料、美容、ウェルネスなどを問わず、特定のCPGカテゴリーを反映した、よりテーマ性の高いポートフォリオを構築しようとする傾向もまた強まっていると語った。それに伴い、エナジー飲料のようなサブカテゴリーにも注目が集まっているが、ホワイトマン氏は、この分野にはまだ新たな企業の成長余地があると述べた。たとえばコエフィシエント・キャピタルはゴージーを支援している。さらにホワイトマン氏は、さまざまなタイプの人々に向けて配合を微調整することで、「カテゴリーを改善」する機会が残されているという。「現在市場に出回っているエナジードリンクのほとんどが、一般的に男性向けかセルシウスが始めたようなワークアウト重視の消費者向けのメッセージになっている」。ほかの投資家も新たなエナジードリンクのブランドに可能性を見出しており、大型の投資ラウンドが難しい時期であってもそうしたブランドを十分に支援している。アレシアのパートナーであるテイラー・フォックスマン氏によると、2020年以降、CPG分野はサプライチェーンの課題や高金利、資金不足といった問題によって困難な状況に陥っている。その結果、資金不足のブランドは新製品の開発や人材雇用の削減を余儀なくされ、CPGのイノベーションが低下している。とはいえ「機能性飲料のようなものの成長にみられるように、イノベーションに対する消費者の需要はなくなってはいない」とフォックスマン氏は言う。同氏のファンドは、エナジードリンク分野でヘイウェル(Heywell)やキーといったブランドを支援してきた。

ひとつのトレンドに依存しすぎない

アレシアのようなファンドは機能性成分を実験しているブランドに狙いを定めているが、一過性のマイクロトレンドに過度に依存しているわけではない。「ヘイウェルやキーといった企業に投資する大きな理由のひとつは、どちらも長期的なポジションにあるからだ」とフォックスマン氏は言う。両ブランドとも、脱水症状や集中力向上など、複数のメリットをもたらすと同氏は述べた。キーの場合、発酵ケトンは代謝の改善や精神集中の向上など、健康面での効果があることでも知られている。フォックスマン氏いわく、製品の配合だけでなく、ブランドの創業者たち自身も大きな魅力だった。「創業者たちも飲料業界のプロであり、競争の激しいCPG、特に飲料業界で生き残るためには何が必要かを知っている」と同氏は述べた。フォックスマン氏の意見では、機能性飲料や天然エナジードリンクのブランドの多くは、単一の成分や個別の用途に力を入れすぎている。そのため、トレンドの需要が変化して規模の拡大が妨げられた場合に方向転換ができない。「ヘイウェルの提案は、水分補給だけでなく、気分や免疫をサポートするといった成長分野が組み合わさっている」とフォックスマン氏は述べた。ヘイウェルは2022年にエンジェル投資でローンチした後、2月には金額は非公開だが資金調達を行っている。同社は現在フレーバーのプロファイルを拡大しようとしており、この夏にはレモンフィズのSKUをローンチする。したがって、市場に新規参入した多くのエナジーブランドにとっての秘訣は、成分で差別化を図りつつも、ひとつのトレンドに依存しすぎないというバランスを見つけることである。それを新規ラインアップと製品拡大を通じて行うというのも方法のひとつだ。

投資家たちをひきつけた新成分

2022年にローンチしたエナジードリンクのスタートアップ企業オデッセイエリクサーは、今年、カフェインを増量した新たなラインを発売したばかりだ。2月には、600万ドル(約9.3億円)の株式投資を完了し、現在までの資金調達総額は1400万ドル(約21.8億円)に達した。同ブランドは現在6000店舗以上で販売されており、最近では今春セブンイレブンに進出し、前年比50%の成長を遂げている。

オデッセイの新ライン。スプラウツ・ファーマーズ・マーケット(Sprouts Farmers Market)でも販売

オデッセイの創業者スコット・フローマン氏によると、投資家がこの製品に関心を持っているのは、従来のエナジードリンクとは差別化された成分によるところが大きいという。同社の主力製品は85mgのカフェインを含む炭酸入りエナジードリンクで、ライオンのたてがみとアダプトジェニックマッシュルームが配合されているが、これは同社によると、タウリンをベースにしたほとんどのエナジーブランドにはつきものの、カフェインによるイライラを和らげるのに役立つという。また、2023年の米国国立衛生研究所の研究では、ライオンのたてがみが若者の認知能力のスピードを向上させる可能性が「暫定的に示唆」されている。しかしまたフローマン氏は、エレウォンのような自然食品店からコンビニエンスチェーンまで、オデッセイが参入しているあらゆるタイプの小売店にフィットする万能の配合などは存在しないことがすぐにわかった、と話す。まず第一に、フローマン氏は「85mgのカフェインで勝つのは難しい」と述べた。そこでオデッセイの最新ラインであるオデッセイ222(Odyssey 222)には222mgのカフェインが含まれている(対照的に、セルシウスのオリジナルラインには200mgのカフェインが含まれている)。同ブランドには、カフェインの代わりに電解質、マグネシウム、亜鉛、ビタミンCを使ったオデッセイリバイブ(Odyssey Revive)もある。「我々が行った調査によると、多くの人がこの製品を気に入っているが、バン(Bang)やセルシウスと一緒に購入している」とフローマン氏は言う。「ほかの機能性成分がカフェインの特性を補完するので、222mgまで増やすことができた」。この新たな方向性に加えて、小売の急速な拡大が、同社にさらなる資金調達を促した。このように、新規参入企業がもっとも革新的なサブラインをいち早く開発できるかどうかを競い合っているため、エナジードリンクのブームが減速するという兆しは見られない。フォックスマン氏は、ブランドがより機能的なエナジードリンクの需要に目をつけ、店頭の隙間を埋めようとしているからだと分析する。「消費者の嗜好は進化し、セグメントが融合しているため、ハイブリッドなソリューションが市場に参入している」と同氏は述べている。[原文:Interest in energy drinks continues to explode even as brands experiment with new ingredients and caffeine content]Gabriela Barkho(翻訳:Maya Kishida、編集:戸田美子)Image courtesy of Key