Image: Muhammad Alimaki / Shutterstock.com

たぶん、献金しなくてもやると思う。

ドナルド・トランプ前大統領は、フロリダ州の私邸で4月に開催した晩さん会で、参加した石油産業の経営者らに対し、大統領再選後の環境規制撤廃の見返りとして10億ドルの献金を要求したとThe Washington Postが報じました。

これは「ディール(取引)だ」とトランプ氏

トランプ氏は晩さん会に出席したExxonMobilやChevronを含む石油企業の幹部たちに対し、自身をホワイトハウスに返り咲かせるために10億ドル(1570億円)を集めるべきだと話したといいます。そうすれば、バイデン大統領による環境関連の規制や政策を、就任直後に速攻で撤回し、新たな規制を阻止すると約束したそうです。

具体的には、バイデン政権による液化天然ガスの新規輸出の凍結の撤回や、メキシコ湾での石油掘削権の競売再開、アラスカ北極圏におけるガス・石油掘削規制の撤回、風力発電や電気自動車普及への反対などについて述べていたといいます。

また、別の報道によると、トランプ氏は連邦取引委員会による石油産業のM&A(吸収合併)の監視を緩和できると示唆していたと関係者が語っています。

出席した石油企業幹部のなかには、バイデン政権に対するロビー活動に昨年だけで4億ドル(630億円)注ぎ込んだのに、依然として厳しい環境規制に直面していると訴えたとのこと。お金の使い道がちょっと異次元過ぎますね。

トランプ氏と10億ドルの「ディール(取引)」をすれば、課税や規制を避けられる、と。取引というか、賄賂の香りがプンプンするのですが…。

多額の訴訟関連費用の支払いに献金を1億ドル(157億円)流用しているといわれるトランプ氏は、選挙資金でバイデン大統領に水をあけられているため、11月の大統領選に向けて訴訟関連と選挙の双方で多額の資金が必要なのでしょう。

トランプ氏には環境規制撤廃の過去が

トランプ氏に10億ドル献金すれば本当に環境規制を撤廃してくれそうなのか、前回の大統領任期中の実績を調べてみると、4年間でひっくり返したオバマ政権による環境規制や政策の数は、なんと125本以上! 年間30本以上。実績ありすぎ。

すぐに思い浮かぶのは、パリ協定からの離脱と、オバマ政権が建設中止を決めたダコタ・アクセス・パイプラインとキーストーンXLパイプラインの再認可くらいで、あとはほとんど木を隠すなら森の中みたいな状態でした。

一方、バイデン大統領は気候変動を人類存亡の危機と位置づけるなど、気候変動を否定するトランプ氏の真逆を走っています。バイデン氏は大統領就任後パリ協定に復帰し、キーストーンXLパイプラインは就任初日に建設認可を取り消しています。The Washington Postの分析によれば、バイデン政権はこれまでにトランプ政権時の環境政策を98本撤廃しているそうです。年間25本くらい。こっちもなかなかのクラッシャーぶり。

連邦上院民主党が調査へ

今回のトランプ氏と石油産業幹部らによる「ディール」晩さん会について、アメリカ連邦上院民主党が調査を開始。上院予算委員会と同財政委員会それぞれの委員長が石油大手8社(Chevron、ExxonMobil、Continental Resources、Chesapeake Energy、Cheniere Energy、Occidental Petroleum、Venture Global LNG、EQT Corporation)と米国石油協会(API)に書簡を送付し、情報提供を求めています。

APIの広報担当者は調査について

アメリカ経済の活性化と根強いインフレの払拭のために、より多くのエネルギーが必要である事実から目をそらすための姑息な手段だ。

と反論。

連邦下院でも民主党議員が調査を開始していますが、上院とは違って共和党が過半数を占める下院では、企業や団体を召喚する権限がないため、形だけの調査で終わりそうです。

それにしても、大統領が交代するたびに何をやっているんでしょうね、アメリカは。

Source: The Washington Post (1, 2)

Reference: Reuters, The Washington Post (1, 2) , The New York Times, Columbia Law School (1, 2), U.S. Department of State, Harvard Law School, The Guardian

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