Googleによって開発とメンテナンスが行われているウェブブラウザのオープンソースプロジェクト「Chromium」を用いることで、Microsoft EdgeやOperaなど、さまざまなウェブブラウザを作り出すことができます。エンジニアのアレクサンダー・フリック氏は、Chromiumを基に、Googleのウェブブラウザ「Chrome」よりも高速なウェブブラウザである「Thorium」を開発しています。

Outline of benefits of Thorium over vanilla Chromium.

https://alex313031.blogspot.com/2022/01/outline-of-benefits-of-thorium-over.html



Thorium Browser

https://thorium.rocks/

ウェブブラウザのThoriumは原子番号90の元素であるトリウム(Thorium)にちなんで名付けられました。Thoriumの開発にあたってフリック氏は「Chromiumは素晴らしいプロジェクトであり、すでにChromiumを使用している人がさらに満足できるようなChromeのフォークを作成したいと思っています」と述べています。

ThoriumはAVX命令やAES拡張命令を有効化してコンパイルすることで、AVX命令やAES拡張命令に対応するCPUでの高速化を実現しています。また、CFlagやLDFlags、import_instr_limitなどの値がデフォルトから変更されるほか、全てのデバッグ構造のバイナリからの除外なども実施されています。

そのため、ThoriumではデフォルトのChromiumと比べて8〜38%のパフォーマンスの向上が見込まれるとのこと。Speedometerを使った比較では、デフォルトのChromiumのスコアは71.9点を記録。



一方でThoriumのスコアは106点を記録し、デフォルトのChromiumと比べて約38%ものパフォーマンス向上が確認されました。



またOctaneを使ったベンチマーク比較では、Chromiumのスコアは2万8394点でした。



同様の条件でのThorimuのスコアは3万1108点と、約9%のスコア向上が認められました。



JetStream 2を使った比較でも、デフォルトのChromiumは95.869点を記録。



Thoriumは104.823点を記録し、約8.9%のスコア向上が確認されました。



さらにフリック氏は、M3搭載のMacBook ProでSpeedometer 2.1を使ったThoriumのパフォーマンス測定を行ったところ、609点を記録し「600点を超えたウェブブラウザはこれまで見たことがありません」と述べています。



パフォーマンス向上のためThoriumでは「MPEG-DASH」のサポートや動画圧縮規格「H.265」のサポート、検索エンジンに関係なく、常にローカルで「新しいタブ」を開くように規定、Google APIキーの警告の無効化などが行われています。

掲示板サイトのHacker Newsでは「Thoriumの基となったChromiumは、デフォルトでサポートされている全てのデバイスで可能な限り機能するように最適化されています。これを基に開発されたThoriumは、より多くの命令セット拡張機能を備えた最新のCPUで、さらなるパフォーマンスを発揮するように設計されています」との意見も上がっています。

なお、GitHub上ではThoriumのソースコードが公開されています。

GitHub - Alex313031/thorium

https://github.com/Alex313031/Thorium