また最近では、新NISAに合わせて低コストのファンドが続々と誕生しています。ただ、足元ではインデックスファンドのコストはすでに限界レベルまで下がっているため、わずかなコスト差であれば、特段気にせずに今のファンドの運用を続けていきましょう。

◆3.長期運用は想像以上に難しい

 新NISAでは、長期運用が重要とよく言われますが、やってみるのは意外と難しいものです。新NISAを始めたものの、暴落に直面したり、急にまとまった現金が必要になってしまったら、すぐに保有商品を売ってしまう人も出てくるでしょう。

 ところが短期間で売却すると、非課税期間無期限という新NISAの大きなメリットを活かすことができません。そのため、新NISAの基本的な戦略として、買ったら持ち続ける「バイ&ホールド」を徹底しましょう。長い目で見て右肩上がりが期待できるインデックス投資なら、買った分を放置しておくだけで利益が期待できますからね。

 また、新NISAで短期的に売買を繰り返す人もいますが、皆さんは真似しないようにしましょう。これは投資ではなく、いわゆる投機で、ある機会において短い時間で株式をする手法です。

 投機自体がダメではありませんが、新NISAでゆっくりだけど着実に資産を増やしていきたいなら、気長に運用を続ける投資をやっていくことが重要だと覚えておきましょう。

◆4.損失が出ると逆にデメリットになる

 たとえば利益に税金がかかる特定口座で、A銘柄とB銘柄を運用していたとします。それぞれを売却した際、A銘柄は40万円の利益、B銘柄は20万円の損失が発生しました。

 この場合、2つの銘柄の損益を合算した際の利益20万円にのみ課税することができるため、その分だけ税金を減らすことができます。これを損益通算と言いますが、特定口座(源泉徴収あり)なら、証券会社が合計の損益を自動で計算し、すでに支払った税金も戻ってきます。

 しかし残念なことに、損益通算はNISA口座では利用できません。そのため、先ほどの例で、B銘柄のみ新NISA口座で運用していたとすると、2つの銘柄で損益通算はできず、A銘柄の利益40万円がそのまま課税対象となってしまいます。片方の銘柄を新NISA口座で運用していたばかりに損益通算ができませんでした。

 ただし、新NISAでの運用は長期での値上がり益を目指すのが基本方針であり、インデックス投資で長く運用していれば利益は期待できるので、新NISA口座で損失が出ることは、あまり心配しすぎなくてもいいでしょう。しかし、NISA制度はけっしてメリットばかりではなく、このようなデメリットがあることは覚えておきましょう。

◆5.18歳未満は新NISAを利用できない

 2023年までは、18歳未満の未成年でも利用できるジュニアNISAがありました。しかし、新NISAは対象年齢が18歳以上であるため、18歳未満のお子様は新NISAを利用できません。そのため、今後は親名義の新NISAを活用して、将来的にお子様の大学費用などへ充てるのがいいですね。

 ちなみに、夫婦それぞれの口座で同じ銘柄を購入して元本が分散しても、複利効果は1つの口座でまとめた時と同様に期待できます。たとえば、夫婦の投資元本が各1万円ずつで、年利5%で2年間運用すると、1年後に1万500円、2年後は1万1025円となり、2つの口座で運用しているので合計2万2050円になります。

 ただし、それは合算した元本2万円を夫の口座でのみ投資し、年利5%で2年間運用した時の2万2050円と同じ金額になりますよね。このように夫婦それぞれの口座で同じ銘柄を選んでも、結局は投資先が同じなら、合計の投資額に対して複利が効くと思えばOKです。

 ちなみに、新NISAの投資資金を配偶者に渡すと、投資のための資金として贈与とみなされる恐れがあります。対策としては、贈与税の基礎控除額年110万円に抑えれば非課税となるため、その金額に抑えて夫から妻へ毎年移すのが無難でしょう。

 いかがでしょうか。将来、後悔しないためにも、新NISAの落とし穴にはじゅうぶん気を付けて、運用を続けていきましょう!

<TEXT/小林亮平>

【小林亮平】
1989年生まれ。横浜国立大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。同行退社後、ブログやSNSでNISAiDeCoなど資産運用の入門知識を発信。現在はYouTube「BANK ACADEMY」の運営に注力しており、YouTubeのチャンネル登録者数は70万人を超える。「超初心者でも理解できるよう優しく伝える」をモットーに、自作のイラストを駆使した丁寧な解説が好評を得ている。著書に『これだけやれば大丈夫! お金の不安がなくなる資産形成1年生』(KADOKAWA)がある