初めての長期離脱を乗り越えて、ピッチに戻ってきた。復帰戦はS広島Rの新スタジアム初陣という歴史に残る試合。最多4,619人が集まったスタジアムで、紫のサポーターからは温かい声援が届いた。ピッチでは、すかさず柳瀬に迎えられる。

「(柳瀬は)『おかえり!』って言ってくれて素直にうれしかったし、みんなが『おかえり』って言ってくれたのがうれしかったです」

 ただ、出場したのは1点ビハインドの状況。何としても勝ちたい大切な試合で、小川は復帰の喜びよりも、勝利することしか頭になかった。「負けている状況だったので、とにかく点を取ることだけを考えて入った。(チームは)シュートも打ててなかったし、チャンスも作りきれてなかったので、(自分は)ゴール前にどんどんかかわっていくこと、あとはセットプレーでも流れを変えることを考えていた」と振り返る。

 しかし、S広島Rは71分に相手CKで痛恨の失点。2点差に広げられたチームはより前がかりに攻め込んだ。72分、左サイドから切り込んだMF中嶋淑乃の折り返しをゴール前のMF上野真実が収めて落とす。その後方で待ち構えていたのは「クロスに対して自分が積極的にボックス内に入っていこうと思っていた」という小川だ。ペナルティエリア内に走り上がり、自身のイメージ通りの動きを見せたが、シュート直前でタイミングが合わずに相手の好守に阻まれた。

 75分には新加入FW古賀花野のデビュー弾で1点差にすると、80分にはホームスタンドの前でFKのチャンスを迎えた。位置はリーグカップ戦の浦和戦よりも中央寄り。「自分たちのサポーターの前だったので、絶対に決めたいと思っていた。自分のキックだけに集中して蹴りました」と小川が気持ちを乗せて右足を振り抜いたが、シュートは惜しくも相手の壁に弾かれた。

 S広島Rは最後までゴールを狙ったが、1-2で敗れて新スタジアム初陣を飾れなかった。試合後の小川は、「勝たないといけない試合だったので本当に悔しい」とひたすら悔しさを噛みしめていた。「新スタジアムができてたくさんの方が注目してくれているので、チームで結果を出して挽回しないといけない。もうどれも落とせない試合なので、目の前の試合を1戦1戦全力で勝ちに行くしかない」とこの悔しさを糧に戦っていく。

 苦しんだ日々を経て復帰を果たしたいま、「もう求められているのは結果なので、そのためだけにトレーニングしていきたい」と闘志を燃やす8番が帰ってきた。新スタジアムで迎えたシーズン後半戦は再び輝くとき。

 「もちろんケガをしない方がいいけど、『あのケガがあったから』って思えるようにするのも自分次第だと思うので、今後のパフォーマンスや結果につなげていくことで自分自身がそう思えるんだと思う」。初の長期離脱を乗り越えた小川の強さを示す戦いが始まった。

取材・文=湊昂大