アーセナル敗北、バルサも勝ちきれず...混沌とするCLベスト16 「2番手争い」を抜け出すチームはどこか?
チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦。先週行なわれた4試合の結果は、コペンハーゲン1−3マンチェスター・シティ、ライプツィヒ0−1レアル・マドリード、パリ・サンジェルマン(PSG)2−0レアル・ソシエダ、ラツィオ1−0バイエルンだった。
強さを際立たせたのはマンチェスター・シティだった。スコアは1−3ながら内容はほぼ完璧。下馬評で同チームを追う存在とされるレアル・マドリード、バイエルン、PSGとの差は大きそうに見えた。
マンチェスター・シティの対抗馬探し。今季の決勝トーナメントの見どころは早くもそこに絞られつつある。今週登場する8チームにマンチェスター・シティに迫るチームはあったのか。4試合の結果は以下のようになった。
インテル1−0アトレティコ・マドリード、PSV1−1ドルトムント、ポルト1−0アーセナル、ナポリ1−1バルセロナ。
結論から言えば、対抗馬になり得るほどの強烈なインパクトを残したチームはなかった。決勝トーナメントが始まる前、ブックメーカー各社の下馬評ではレアル・マドリードとともにマンチェスター・シティ、バイエルンに続く3番手タイに挙げられていたアーセナルは、先週のバイエルン同様、アウェー戦を0−1で落とした。
プレミアの上位チームのなかでアーセナルは唯一、CLを制したことがないチームだ。順番的にも初優勝に最も近いクラブとして、常に「そろそろではないか」と囁かれている。昨季、同じような境遇にあったマンチェスター・シティがその壁を突破したので、今季のアーセナルは余計にそう感じられる。
プレミアでは現在3位。2位マンチェスター・シティとの勝ち点差はわずかに1だ。しかしCLの戦いを含めてみると、総合力に差があることがわかる。ポルト戦の敗戦にアンラッキーはなかった。内容は互角。ポルトのほうがよかったくらいだ。ただ、後半のアディショナルタイムまでスコアは0−0。アーセナルは苦戦しながらも、アウェー戦をドローで乗りきるかに見えた。
【冨安健洋はまたも登録外に】
事件が起きたのは94分。時計はラスト30秒を切っていた。ポルトのブラジル人左ウイング、ガレーノにミドルシュートを右隅ギリギリに蹴り込まれてしまった。
アーセナルに試合終盤のゴールで劇的な勝利を飾ったポルトの選手たち photo by AP/AFLO
アーセナルホームで行なわれる第2戦で、両者の関係に何か大きな変化が生まれそうな気はしない。アーセナルの突破確率はせいぜい60%。接戦必至である。
冨安健洋は登録外で出場していなかった。アジアカップ後、これで3試合連続、登録を外れたことになる。ケガが日常的なこの選手と日本サッカー協会はどう向き合うべきか。もっと悲観的になるべきだろう。
アーセナルがCLで唯一決勝に進出した2005−06シーズン、優勝を飾ったのはバルセロナだった。CLとしてはこの時が初制覇で、欧州一はチャンピオンズカップ時代の1991−92シーズンに次ぐ2度目の栄冠だった。その間の13シーズン、宿敵レアル・マドリードが優勝回数を重ねていただけに、ファンにとっては待ちわびた瞬間だった。
その後、2014−15シーズンの優勝で欧州一に輝いた回数を5としたバルサだが、以降、回数は伸びていない。その間、8シーズン。当初、その敗戦は番狂わせと言われた。バルサより格上に当たるチームはいなかったからだ。しかし、今季の決勝トーナメントに残った16チームの中で、バルサはブックメーカー各社から7番人気と評価されている。優勝候補ではまったくない。国内リーグでも現在、首位レアル・マドリードに大差(8差)をつけられての3位だ。最近のバルサには誰もが懐疑的になっている。
あまり期待されていない。そうした意味では逆にチャンスなのだ。バルサは大きな名前なので、ダークホースとは言えないが、優勝候補にとっては、逆に怖い存在だ。
決勝トーナメント1回戦の相手は、成績不振で監督交代が行なわれたばかりのナポリ(セリエAで現在9位)だった。アウェー戦ながら比較的楽な相手に見えた。先制したのはバルサ。後半15分、懐深くターンして放ったロベルト・レバンドフスキー(ポーランド代表)の右足シュートも見事だったが、相手の股を通して送ったペドリ(スペイン代表)のパスもそれと同じくらい光って見えた。中盤好きの日本人にはこちらのほうが受けるプレーだったかもしれない。
【バルサの欠点は左ウイングがいないこと】
だが、バルサはこのレバンドフスキーのゴールを守れなかった。後半30分、アンドレ・ザンボ・アンギサ(カメルーン代表)のパスを受けたビクター・オシムヘン(ナイジェリア代表)にゴールを割られ、追いつかれてしまった。
バルサが苦戦する原因はいろいろあるが、ひとつ確実に言えることは、バランスの悪さだ。布陣は4−3−3だが、左ウイングがいない。該当選手はペドリになるが、彼の本来のキャラは中盤系のパッサーだ。左ウイングというポジション、エリアをカバーできていないので、相手ボールに転じた瞬間、穴になる。
左サイドバックが有能なジョアン・カンセロ(ポルトガル代表)なので、それに伴うマイナス要素をバルサは最小限に抑えているが、ガブリエル・マルティネッリ(ブラジル代表・アーセナル)、ヴィニシウス・ジュニオール(ブラジル代表・レアル・マドリード)、クヴィチャ・クワラツヘリア(ジョージア代表・ナポリ)、ガレーノ(ポルト)、ジャック・グリーリッシュ(イングランド代表・マンチェスター・シティ)、ジェレミー・ドク(ベルギー代表・同)、ブラッドリー・バルコラ(U−21フランス代表・PSG)、キングスレイ・コマン(フランス代表・バイエルン)など、ベスト16に、左ウイングがいるチームが目立つなかで、バルサの左からの攻撃は貧弱に映る。ペドリと交代でそのポジションについたジョアン・フェリックス(ポルトガル代表)も、真ん中に適性がある選手だ。
左肩が落ちたサッカー。パッと見、そんな印象だ。これでは躍動感が生まれない。弾ける感じが弱いのだ。三笘薫ではなく南野拓実が左ウイングで出場したアジアカップのイラク戦の戦いを思わず想起した。
決勝トーナメント1回戦8試合のなかで、実力的に最も接近していた一戦はインテル対アトレティコだった。結果は先述のように1−0。試合内容は53対47ぐらいの関係だった。
お互い、両ウイングは存在しない。5バックになりやすい守備的サッカー同士の対戦である。16チームの中でこの2チームはそうした意味で例外だ。まさに異端同士の対戦だった。
案の定、最後まで試合はほぐれなかった。リードされたアトレティコは、ホームで行なわれる2戦目をどう戦うか。それでも守備的にいくのか。昨季のファイナリスト、インテルは今季もマンチェスター・シティの対抗馬になれるか。
混沌とした状況にある2番手争いを抜け出すチームはどこか。マンチェスター・シティを独走させては面白くない。