反町隆史が体現する「うだつの上がらない男」。“殺人球菌”の発見で人生が一変、その反撃に期待<『グレイトギフト』第1話レビュー>
<ドラマ『グレイトギフト』第1話レビュー 文:くまこでたまこ>
1月18日(木)に第1話が放送された木曜ドラマ『グレイトギフト』。
第1話では、反町隆史演じる藤巻達臣が殺人球菌を見つけたことで、病院内での権力争いと謎の連続殺人事件に巻き込まれていく姿が描かれた。
◆反町隆史が最大限に表現する“うだつの上がらない男”・藤巻
「うだつの上がらない」の意味を調べてみた。地位や生活などがよくならない。出世しない。ぱっとしない。そういった意味があるそうだ。
これまで反町が演じてきたキャラクターとは、真逆の立ち位置に居るのが、本作の主人公・藤巻という男。藤巻は他人と目を合わせることや話をすることが苦手で、第1話でも、病理医の伊集院薫(盛山晋太郎(見取り図))や周囲の職員からも見下されていた。
そんな藤巻は、急死した元総理大臣・愛宕克己(山田明郷)の解剖で、偶然にも殺人球菌「ギフト」を見つけることになる。それまで口数のすくなかった藤巻は、球菌の説明をするため、饒舌になるが、それでも目を合わせない。
病理医として優秀なはずが、病院では評価されない藤巻。むしろ怒られたり、利用されたりもする。せめて家庭は幸せであってくれと願うが、家庭でも藤巻の扱いはないがしろだった。
妻・藤巻麻帆(明日海りお)とは冷め切っており、娘・藤巻あかり(藤野涼子)にも反発される始末。本当に不憫でならない。かつてこんなにもないがしろに扱われた反町を見たことがあっただろうか、…いやない。
正直、権力争いや謎の連続殺人事件に立ち向かうことができるのかと心配になる。しかし、藤巻は口に出さないだけで、心の中や頭が常に動いていることに気が付いた。
藤巻は人が苦手なだけで、弱くもなければ、馬鹿でもない。ただ出さないだけなのだ。藤巻が秘めている思考や感情がいつか外に出たとき、大きな反撃になると思えた。
そう考えると、今後の見どころは、見下されている男が“殺人球菌”と出合ったことでどのように変わり、どのようなことをするのかではないだろうか。
スマートな役をこれまで演じてきた反町が“うだつの上がらない”藤巻を演じることで、より深みが出るはず。
反町が最大限に表現するであろう、藤巻の活躍に、期待は高まるばかりだ。
◆藤巻を取り巻く2人の心臓外科医
藤巻には、第1話から強すぎる敵が存在していた。一人目は、藤巻の同期であり、重い心臓の病気を患い、明鏡医科大学付属病院に入院している藤巻の妻・麻帆の担当医でもある心臓外科医・郡司博光(津田健次郎)だ。
彼が、藤巻を下に見ていることは、その目線でも明らか。そんななか、第1話終盤では、麻帆の主治医であり、教授の白鳥稔(佐々木蔵之介)が藤巻を評価している様子を憎らしく思っている様子だった。
また、藤巻の妻であり、麻帆との関係性も気になるところ。医師としても、男性としても藤巻に勝っている間は何もしないと思わせるいやらしさをたしかに感じた。そんな郡司を津田が演じている。
少し嫌味な役を演じている津田を見たことがあるが、本ドラマほど悪い顔をしていたり、誰かに当たりの強い津田は見たことがなかった。声優ということもあり、声だけでも演技の緩急がすさまじい。
津田演じる郡司だけでも手強いというのに、藤巻にはさらなる強敵がいた。それは、佐々木演じる白鳥だ。
優しく温厚に見える白鳥は、藤巻の弱さと研究への熱意に漬け込み、殺人球菌「ギフト」を培養させることに成功。
権力など興味がないと言っていた白鳥だったが、患者のことを最優先するために、またより良い医療を追求する院内改革をするためには権力が必要。そこでは、白鳥自らが「ギフト」と名付けた殺人球菌がカギとなっており、それを培養できる藤巻の存在が重要だった。
思わぬ形で、藤巻を権力争いにも、謎の連続殺人事件にも巻き込んだ白鳥。いつまで白鳥が藤巻の味方でいるのか、いつから敵になるのか気になるところだ。
◆難しいことは全部、藤巻にお任せスタイル
殺人球菌はいつ誰が何のために作ったのかが、物語の最大のミステリー部分になる。しかも、その舞台は病院内であり、誰が犯人でもおかしくない。
藤巻の研究室をのぞき込んだ久留米穂希(波瑠)も白鳥も、もしかしたら主人公の殺人球菌を見つけて培養した藤巻も犯人の可能性はある。いろいろなところに散りばめられている伏線を一つひとつ探しながら、第1話を見るのはおもしろかった。
「考えながらドラマを見るのが苦手だ」という人もいるだろう。実際に私も得意な方ではなく、いつも早々と離脱していた。そんな私でも楽しめるのが、『グレイトギフト』だ。
その理由は、難しいことはすべて人間が苦手で、顕微鏡にしか興味のない男・藤巻が解説してくれるから。ありがたいことにちゃんとわかりやすい挿絵もある。
「考察」というと難しいと思ってしまうが、それをはるかに上回る藤巻による解説のおもしろさがある。だから、「安心してください」と胸を張って言いたい。
それでもまだ渋るならば、推しを作ればいいと思う。ドラマの見方は『グレイトギフト』に限らず、自由なのだから。
さまざまな楽しみ方を模索しながら、ふと殺人球菌を作った人を探してみるのはいかがだろうか。