核・ミサイル開発で日本にとって脅威となる北朝鮮だが、その経済規模は非常に小さい(写真・alexlmx/PIXTA)

2022年の北朝鮮の国内総生産(GDP)は韓国の60分の1で、1人当たりの国民所得 は約15万円と韓国の30分の1――。韓国の統計庁は2023年12月20日、「2023北韓(北朝鮮)主要統計指標」を発表した。

統計庁は毎年、 各種統計などから北朝鮮関連の経済指標を発表している。これによると、北朝鮮の2022年の経済成長率は2021年比マイナス0.2%、1人当たり国民所得は2021年の142.3万ウォン(約15.5万円)から143.0万ウォン(約15.6万円)へと若干、増加した。

北朝鮮でも人口の高齢化が進む

また、人口は2570万人(2021年は2561万人)、平均寿命は男性71.9歳、女性78.3歳となった。平均寿命は2010年の男性66.3歳、女性73.5歳から延びていることがわかった。日本はそれぞれ81.0歳、87.0歳、韓国は79.9歳、85.6歳だ。

人口全体に占める年齢層の比率をみると、北朝鮮では0〜14歳が19.1%、15〜64歳が70.3%、65歳以上が10.6%となっている。これも2010年の0〜14歳22.4%、15〜64歳68.6%、65歳以上9.0%と比較すると高齢化が進んでいることがわかる。

ちなみに日本では2023年7月現在でそれぞれ11.9%、59.5%、29.1%、韓国では2022年末現在で17.4%、71.1%、11.5%だ。また、北朝鮮の出生率は1.61人で少子化が進んでいると韓国統計庁は推計している。

韓国統計庁は、2022年の北朝鮮のGDP成長率をマイナス0.2%、36.2兆ウォン(約4兆円)とした理由について、電気・ガス・水道業や建設業などが前年比で増加したものの、農林水産業や鉱工業といった北朝鮮の主力産業がマイナスになったため、としている。

金正恩・朝鮮労働党総書記、肝いりのプロジェクトとして住宅建設が進められていることがプラス要因になったと思われる。また2022年のコメなどの穀物生産量は451万トン、2021年比4%減となった。

自然災害の影響があったとみられるが、2023年は台風などの大きな被害もなく、穀物生産量は若干増えると北朝鮮現地ではみられている。

北朝鮮では、穀物生産量600万トンの水準が、自給できるレベルだと言われている。この水準からすれば穀物はまだまだ足りないが、中国やロシアなどからの輸入、あるいは支援などが入っているようだ。

北朝鮮は2020年1月末から、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い国境を閉鎖した。現在は開放されつつあるが、本格的な貿易活動は再開されていない。一方で、2022年の貿易額は2021年比122.4%(7.1億ドル)増の15.9億ドルと韓国統計庁は推計している。

内訳としては、輸出が1.6億ドル、輸入が14.27 億ドルとなっている。主な輸出品目は鉱物・スラグ類などが全体の3割近くを占めている。また輸入品の4割近くが鉱物性燃料、鉱物油が占めた。

また貿易総額における最大の貿易相手国は中国で、96.7%とほとんどを占めている。次いでベトナム1.0%、アルゼンチン0.8%の順となっている。

在外公館を縮小、外交は一段と内向きに

2023年10月現在、北朝鮮は159カ国と国交を持つ。一方で、大使館などの在外公館数は46カ国、北朝鮮に設置している国数は34となっている。2023年に入り、在スペイン大使館や在香港総領事館など10数カ所の在外公館を閉鎖するなど、外交活動を縮小させている。

核・ミサイル開発を早急に進めている北朝鮮は、ここへ来て一段と内向きな 外交政策をとり始めた。ロシア出身の北朝鮮専門家で、韓国・国民大学のアンドレイ・ランコフ教授は、「1960年代に対外的な関係を縮小した金日成時代に回帰しているような動きが見られる」と指摘する。

ちなみに韓国は192カ国と国交をもち、在外公館数は167カ所、韓国にある外国公館の数は154カ所となっている。

(福田 恵介 : 東洋経済 解説部コラムニスト)