結果は、最少得点をどうにか守りきっての1−0。それでも、若き日本代表選手たちにとっては、大事な初戦で手にした貴重な勝ち点3であることに間違いはない。


日本は初戦のポーランド戦を1−0で勝利。写真は決勝ゴールを決めた高岡伶颯。photo by Sato Hiroyuki

 インドネシアで開催されているU−17ワールドカップのグループリーグ第1戦。日本はポーランドと対戦した。

 今大会に出場しているU−17日本代表は、アジア最終予選(U−17アジアカップ)の全6試合で総得点22を叩き出し、圧倒的な強さを見せて優勝。とりわけ、準決勝、決勝をいずれも3−0で相手をねじ伏せた連勝は、衝撃的と表現していいほどのクライマックスだった。

 だからこそ、アジアの絶対王者が世界に打って出る今回のU−17ワールドカップが要注目の大会である一方、そうは簡単に勝たせてくれないのもまた、世界大会という舞台である。

 試合は、序盤から互いに打ち合うオープンな展開で推移。両チームに得点機が生まれていたのは事実でも、そこに至るまでの内容に目を向ければ、前半はポーランドに分がある展開が続いていたのも確かだろう。

 日本のチャンスがどこか偶発的に生まれていたのに対し、ポーランドのそれはしっかりとボールを動かし、自らが意図した形で作られていたからだ。

 U−17日本代表を率いる森山佳郎監督が語る。

「ボールをほしがっていたのは、左サイドの2人(DF小杉啓太、MF吉永夢希)だけで、あとの選手はちょっとボールをもらうのが怖いというか、慌ててワンタッチを使ってミスしたりして、それで相手のペースになって、また(守備でボールを)追い回して疲弊するから、(日本が)ボールを持った時に『もうオレ、(ボールを)ほしくないよ』みたいな状態になってしまった」

 キャプテンの小杉もまた、「相手はそんなにハイプレスでもなかったのに、みんなボールを受けられなかった。前半は(U−17)ワールドカップという雰囲気のなかで、自分たちらしさが出せなかった」と振り返る。

 しかも、相手のポーランドはヨーロッパ予選(U−16ヨーロッパ選手権)で毎試合のように、4、5点を叩き出していた攻撃力の高いチームである。そんな相手に対し、早い時間にゴールを許してしまえば、勝敗が入れ替わっていた可能性も十分にあっただろう。

 しかしながら、「グループステージは3試合あるので、最低限引き分け(でもいい)というラインがあった。だから、そこは焦らず、押し込まれる時間も全員で耐えれば、こっちの時間がくると信じながらやっていた」と小杉。

「相手の選手はいいシュートを持っているが、自分たちがボールに寄せて、体のどこかに(シュートを)ぶつければ、(ポーランドが)ゴールを割るのは難しい。そこは自信を持ってできたかなと思う」と言い、劣勢のなかでも勝機を見出そうとしていたことを明かす。

 すると、ハーフタイムを挟み、日本は本来の姿勢を取り戻す。

「このサッカーをしていて面白いか?」

 そんな厳しい言葉もかけたという、森山監督が語る。

「勇気を持って、ボールを持って攻めようよ、ということで、ちょっと距離感とかを修正した。MF山本(丈偉)が(後半から交代で)入り、(2ボランチの)MF中島(洋太朗)と山本でボールを持った時に、MF名和田(我空)とか、MF徳田(誉)が絡むシーンが増え、そうすると相手の足が止まってきた」

 後半に入り、日本が徐々に攻勢を強めるなか、後半55分あたりから降り出したスコールが後半60分を過ぎると激しさを増し、ついに試合は一時中断に。「自分たちがかなりボールを持てて、相手がバテてきたなかでブレイクになった」(小杉)ことは、いい流れに文字どおり水を差されたかにも思われた。

 しかし、「自分たちのほうが選手層は絶対に厚いと思っていたし、チームワークのよさも含めて、それで自分たちのほうに流れがきた」(小杉)。

 試合を決めたのは、後半70分の試合再開と同時に投入されたFW高岡伶颯である。後半77分、ゴール正面でボールを受けた高岡は、左足を豪快にひと振り。強烈なミドルシュートをゴール左に突き刺した。

「初戦なので、得点はもちろんほしかったが、それよりもチーム一丸となって本当に勝ちたい気持ちが強かった。その気持ちが僕の得点につながったのかなと思う」

 笑顔でそう語る高岡だったが、視界がかすむほどの激しい雨のなか、短い時間で確実にチャンスを仕留めることは、決して容易い仕事ではなかったはずだ。

 ところが、身長165cmの小柄なヒーローは、「ホテルにいる時から、雨がすごいというのは(予報で)わかっていたので、『こんな感じかぁ』というくらい(笑)。僕は泥臭いプレーが多く、雨が得意なので、(降っても降らなくて)どっちでもいいように準備していた」と言いのける。

 結局、日本は高岡が決めた虎の子の1点を守りきり、初戦を勝利。悪い流れのなかでもチームを鼓舞し続けた小杉は、「勝ち点3を取ることがグループステージ突破につながると思うので、そこはかなり大きい」と言い、こう続ける。

「後半はしっかりとみんなでボールを持ち運びながら、いい形を作れていたし、特に自分のサイドからはかなりクロスボールも上がり、サイド攻撃の強みも出せた。難しい試合だったけれど、最後まで粘り強く全員で戦えたところが勝てた要因かなと思う」

 この試合、日本はかなり苦しんだ。前半の内容を見れば、引き分けで御の字。負けていても不思議のない試合だったのかもしれない。

 しかし、ポーランド自慢の攻撃力を封じ、「(失点を)ゼロに抑えたのは、かなり褒められること」と森山監督。相手のペースで進みかけた試合を、どうにか持ちこたえ、こちらに流れを引き戻したことが最終的な勝利につながった。

 今大会が、U−17ワールドカップ3度目の挑戦となる指揮官は言う。

「みんながエネルギーを持って、サブの選手もスタッフを含めて、最後まで戦ってくれていた。その思いが最後、高岡のゴールにつながったかなと思う」

 初戦ゆえの緊張感も見せた。若さゆえの拙さも見せた。

 しかしだからこそ、それを乗り越えて手にした勝ち点3には価値がある。頼もしきアジア王者の、世界挑戦が始まった。