運動は単に体の健康状態を向上させるだけでなく、認知能力や記憶力を向上させる可能性があることも知られています。アメリカ・フロリダ大学などの研究チームが行った研究では、85歳〜99歳というかなり高齢の人々でも、筋力トレーニングや有酸素運動を定期的に行う人は認知能力が高いという結果が示されました。

Associations between physical exercise type, fluid intelligence, executive function, and processing speed in the oldest-old (85 +) | SpringerLink

https://link.springer.com/article/10.1007/s11357-023-00885-4



Aerobic and strength training exercise combined can be an elixir for better brain health in your 80s and 90s, new study finds

https://theconversation.com/aerobic-and-strength-training-exercise-combined-can-be-an-elixir-for-better-brain-health-in-your-80s-and-90s-new-study-finds-212433

近年は医療の発展や栄養状態の改善によって世界人口の高齢化が急速に進んでおり、それに伴って高齢者の認知機能を維持することが喫緊の課題となっています。アメリカでは2020年の時点で約600万人がアルツハイマー病と診断されていますが、その数は2060年に1400万人に達すると予測されています。

その一方で、特に長生きである85歳を超える高齢者において運動が認知機能に及ぼす影響を調べた研究は、それほど多くないとのこと。そこでフロリダ大学、マイアミ大学、アリゾナ大学、アラバマ大学バーミンガム校などの研究チームは、85歳〜99歳の認知的に健康な184人の高齢者を対象に、運動習慣や認知タスクのパフォーマンスを調べました。

被験者の平均年齢は88.49歳であり、運動習慣に基づいて「座りがちなグループ」「有酸素運動を行っているグループ」「有酸素運動と筋力トレーニングを行っているグループ」に分類されました。被験者の認知能力は、さまざまな認知能力をバランス良く測定できるモントリオール認知評価と呼ばれるツールで評価されたとのことです。



研究の結果、有酸素運動と筋トレを行ったグループは、座りがちなグループと比較して認知機能がわずかではあるものの有意に高いことが判明。また、有酸素運動のみを行ったグループよりも、一部の認知機能タスクでより優れた成績を収めたと報告されました。

論文の筆頭著者であるブライアン・ホー氏らは、「私たちの研究は、有酸素運動と筋トレの組み合わせと認知テストのスコアの高さに相関関係があることを立証していますが、本研究の設計では因果関係を特定できなかったことに注意が必要です。それにもかかわらず、今回の研究結果は多様な運動習慣が80代後半以降の人々の認知機能改善と関連していることを示唆しています」と述べています。

研究チームは今後の課題として、認知機能の健康にとって最も効果的な運動は何なのか、またどれくらいの運動が必要なのかといった点に答えたいとのこと。また、高齢者の神経認知障害の治療として運動が有効なのかどうかを調べることも重要だと主張しました。