ホンダがバイクを中心に普及している「交換式バッテリー」を、四輪の軽バンに導入し、配送業務の実証を行います。バイクはバッテリー2本で済みましたが、四輪の場合は8本使用。果たして効率的なのでしょうか。

乾電池のようにバッテリーを交換するEV でも8本必要!?

 軽バンでの集配業務に、「交換式バッテリー」方式のEV(電気自動車)が使われる時代が来るかもしれません。ヤマト運輸が、ホンダの交換式バッテリーを使った軽EV「MEV-VAN Concept(エムイーブイバン コンセプト)」を使った業務検証を2023年11月からスタート。かねてEV導入を進めるヤマト運輸が、なぜ今、“交換式バッテリーEV”の可能性を探るのでしょうか。


ホンダMEV-VAN Concept。ジャパンモビリティーショー仕様(画像:ホンダ)。

 ホンダ「N-VAN」をベースとした交換式バッテリー軽EV「MEV-VAN Concept」の発表は、軽四輪による集配業務でも交換式バッテリー方式の利用可能性を探る試みです。ヤマト運輸は太陽光発電を導入する群馬県の営業所で、MEV-VANを使って検証を行います。

 交換式バッテリーとは、乾電池のように充電済みのバッテリーを交換することで、充電のための待機時間を実質ゼロにすることができるほか、車両の稼働サイクルにあわせて予備バッテリーを用意することで航続距離を気にせずに走行できることが大きな特徴です。ホンダはビジネスバイクから交換式バッテリー「モバイルパワーパックe:」に対応した電動バイクを打ち出してきました。

 一方、集配業務での電動化を推進するヤマト運輸は、「2030年温室効果ガス自社排出量48%削減(2020年度比)」の実現に向けて、EV2万台の導入を目指し、同県の営業所でも電動化が進んでいます。集配業務は車両の稼働時間や走行距離が一定しているので、業務終了時に充電。始業時に再稼働できるので、電動化の課題は少ないとされています。

 ただ、交換バッテリー方式を採用すると、電動バイクのe:ビジネスe:シリーズではモバイルパワーパックe:は2本で済みますが、MEV-VANでは 8本も必要です。ここであえて交換式バッテリーの可能性を探る理由は、どこにあったのでしょうか。

太陽光発電の電力をダイレクトに使用! インフラも心配無用?

 ヤマト運輸コーポレートコミュニケーション部の担当者は、こう話します。

「太陽光発電を導入している営業所で検証することがポイントです。現在のEVの充電は、業務時間中に太陽光で発電した電力を蓄電し、その電力を業務終了後に充電します。交換式バッテリー方式では、業務時間中に発電した電力を直接、予備バッテリーに充電することできて、電力のロスやCO2削減により貢献することができると考えています」

 交換式バッテリー方式のメリットを最大限生かすには、バッテリーステーションの利用が欠かせません。ホンダは12本のバッテリーを同時に充電できる「Honda Power Pack Exchanger e:」を市場投入しています。

 太陽光発電システムを備えたヤマト運輸の営業所では、このバッテリーステーションを設置し、業務時間内に充電を完了させます。再生エネルギーを有効に使うことのほかにも、交換式バッテリーをメリットは大きいです。

 バッテリーステーションならば、EVの普通充電よりも満充電の時間を短くできます。バッテリーを交換しながら使うので、劣化を抑えることも期待できます。デメリットとして考えられるのは、ドライバーのバッテリー交換の労力だけでしょうか。

 ヤマト運輸はMEV-VAN1台から実証を始めます。約1年かけて車両を増やしながら、集配業務における実用性や車両性能を検証します。


ヤマト運輸は通常仕様のN-VANのEVも検証を行っている(画像:ヤマト運輸)。

 また、交換式バッテリー方式は、バッテリーステーションを誰でも利用できる場所に設置し、サブスクリプション方式の利用料で使えることがビジネスモデルとして考えられています。MEV-VANが市販されることになれば、個人事業での集配業務にも、ビジネスバイクで実用化されているこの方法を取り入れることができるかもしれません。

「通常の軽自動車の集配車両と比較しても、積載量は変わりません」(ヤマト運輸担当者)

 検証する実車は、10月28日から一般公開になる「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」(東京ビッグサイト)のホンダブースで、確かめることができます。