10月14日に開幕したV.LEAGUE DIVSION1MEN。FIVBの規定によりパリ五輪予選(OQT)/ワールドカップ2023に出場した15名については開幕週の出場が禁止されたため、パナソニックパンサーズvsジェイテクトSTINGとウルフドッグス名古屋vsVC長野トライデンツの2試合が延期となり、今週末から本格的なリーグ開幕となる。

パリ五輪の出場権を勝ちとったOQTで活躍した日本代表メンバーや、入団1年目の期待のルーキーまで、今季のVリーグで活躍が期待される男子バレーボーラー10人を紹介する。


photo by 火野千鶴

■柳田将洋(やなぎだ・まさひろ)

所属:東京グレートベアーズ アウトサイドヒッター・186cm

1992年7月6日生まれ 東京都江戸川区出身 東洋高校→慶應義塾大学

 今季から地元である東京のチーム、東京グレートベアーズに移籍。また、今年は2年ぶりに日本代表に復帰し、B代表の主将として若手をまとめ、アジア競技大会で銅メダルを勝ちとった。

 開幕戦では、昨季の準優勝チームである強豪サントリーサンバーズとの2試合にフル出場。スパイク決定本数もサーブ効果率も高い数値を残し、10月15日の2試合目は、敗れはしたがフルセットにもちこんだ。試合後は古巣であるサントリーの選手との交流も見られた。日本バレー界の発展を常に意識する柳田が加入したことで、チームのさらなる認知度アップと強化が期待される。


photo by 中西美雁

■西田有志(にしだ・ゆうじ)

所属:パナソニックパンサーズ オポジット・186cm

2000年1月30日生まれ 三重県いなべ市出身 三重県海星高校

 男子日本代表の左腕のエース。全国的には無名だった海星高校からジェイテクトSTINGSに入り、現役高校生のうちに内定選手として活躍。その後、すぐにシニア代表に抜擢されて瞬く間に主力選手となった。

 東京五輪に出場した後のシーズンでイタリアリーグに挑戦し、翌2022−23シーズンにジェイテクトに復帰。しかし、原因不明の体調不良と故障に悩まされ、天皇杯で優勝した以外はチームも低迷した。今年の代表活動でも不調に悩まされたが、パリ五輪予選で復活し、出場権獲得に貢献した。

 今季からパナソニックに移籍し、子供の頃から憧れだった同じ左腕のエース清水邦広とチームメイトに。昨年12月に結婚した女子代表の主将・古賀紗理那とともにVリーグを盛り上げ、ここ数年優勝から遠ざかるパナソニックに栄光をもたらせられるか。


photo by 木頼緑

■山本智大(やまもと・ともひろ)

所属:パナソニックパンサーズ リベロ・171cm

1994年11月5日生まれ 北海道江別市出身 とわの森三愛高校 →日本体育大学

男子日本代表の守護神。東京五輪にも出場し、今年度のネーションズリーグ(VNL)ではベストディガーに輝き、主要国際大会での46年ぶりの銅メダル獲得に大きく貢献した。OQTでは序盤に動きの硬さもあって、サーブレシーブが乱されたこともあったが、切り替えてチームの4連勝を支えた。

スパイクレシーブは世界トップレベルで、常に笑顔で他のメンバーに声をかけるなどチームを盛り上げる。これまでFC東京から堺ブレイザーズと渡り歩き、今年からはパナソニックでプレー。これまで手にしたことのないリーグ優勝を果たせるか。


photo by 黒羽白

■渡邉晃瑠(わたなべ・こーる)

所属:日本製鐵堺ブレイザーズ ミドルブロッカー・193cm

2000年4月6日生まれ ハワイ出身 ハワイ大学

 ハワイ出身の期待の新人ミドルブロッカー。193cmとミドルとしては小柄だが、最高到達点345cmをマークし、高身長の選手に引けを取らない。ミドルブロッカーの中では珍しく鋭いジャンプサーブを放つ。

 開幕週では東レアローズとの2試合にフル出場し、10月14日の第1試合は4セットで合計5本、15日の第2試合は3セットで合計3本のブロックポイントを挙げ、本人も「いいデビューだった」と振り返った。兄はバスケットボール日本代表の渡邉飛勇で、B.LEAGUE・琉球ゴールデンキングスでプレーしている。「兄も日本でプレーしていて、私も続いた。両親が見に来てくれる環境で嬉しい」と胸を弾ませるルーキーの飛躍に期待したい。


photo by 火野千鶴

■小川智大(おがわ・ともひろ)

所属:ウルフドッグス名古屋 リベロ・175cm

1996年7月4日生まれ 神奈川県横浜市出身

 サーブレシーブ、スパイクレシーブともにスキルが高い、バランスの取れたリベロ。昨季は、ウルフドッグス名古屋の2015−16シーズン以来となる2度目のリーグ優勝に貢献した。

 代表では山本智大とポジションを争うが、2人は仲がよく、お互いをリスペクトしている。OQTでは、初戦のフィンランド戦でフルセットの辛勝、第2戦のエジプト戦は同じくフルセットで敗戦。1日空けたチュニジア戦の第2セットまで山本がリベロに入っていたが、第3セットはスタートから小川が起用されて順調にサーブレシーブを返し、ストレートで勝ち切って波に乗った。ただ、小川は「自分のことをセカンドリベロだとは思っていない」とひょうひょうと言い切る。今季は、龍神NIPPONが世界に誇る"リベロズ"の対戦も注目したい。


photo by 木頼緑

■西山大翔(にしやま・ひろと)

所属:パナソニックパンサーズ アウトサイドヒッター・193cm

2003年3月4日生まれ 神奈川県南足柄市出身 東海大相模高校

 今季はアウトサイドヒッターの登録だが、昨季はオポジットとして出場。腕が長く、ジャンプ力もあるため、打点が高くブロック力も高い。爆発的なビッグサーブの持ち主でもあり、昨季はノータッチエースを何度も奪った。

 シニア代表としては、疲労骨折した甲斐優斗の代わりにVNLファイナルラウンドに招集された。B代表で活動中に急遽A代表に呼ばれたにも関わらず、世界ランキング1位のポーランドとの試合でリリーフサーバーとして投入されると、ノータッチエースを奪って観衆の度肝を抜いた。

 代表でもチームでも大先輩の清水邦広も「大舞台になればなるほど、気負いすぎてだめになってしまう選手と、逆に力を発揮できる選手がいる。西山選手は間違いなく後者。持ってるやつです」と太鼓判を押す。オポジットには清水と新加入の西田もいるためアウトサイドヒッターに回ることになったが、2人に負けない活躍を期待したい。


photo by 縞茉未

■小野寺太志(おのでら・たいし)

所属:サントリーサンバーズ ミドルブロッカー・202cm

1996年2月27日生まれ 宮城県名取市出身 東北高校→東海大学

 男子日本代表の"2mミドルブロッカートリオ"の一角。山内晶大がオフェンス型、郄橋健太郎がブロック型とするなら、小野寺はその中間のバランス型とも言える。速攻ではブロックをかわして打ち抜く技術を持ち、自らのブロックではワンタッチやキルブロックで貢献する。課題だったサーブでもハイブリッドサーブを導入し、OQT初戦の最終セットでフィンランドのレシーブを崩し続け、劣勢の場面から逆転勝ちにつなげた。

 大学卒業後にJTサンダーズ広島に入団して主将も務め、今季はサントリーに移籍。山本龍がディナモ・ブカレスト(ルーマニア)に移籍したため、サントリーで唯一の代表選手となる。サントリーは、昨季は準優勝、その前年までリーグを連覇していた強豪チーム。「緑(JTのユニフォームの色)の僕から、赤い(サントリーのユニフォームの色)僕になっても応援してくださいね」と笑う小野寺は、幼い息子のためにも躍動する。


photo by 黒羽白

■郄橋健太郎(たかはし・けんたろう)

所属:東レアローズ ミドルブロッカー・202cm

1995年2月8日生まれ 山形県東置賜郡川西町出身 米沢中央高校 → 筑波大学

 2015年のワールドカップで「NEXT4」のひとりとしてブレイク。日本のミドルブロッカーの中でポテンシャルが高い選手で、特にブロック力に秀でている。手の出し方、形など隙がなく、OQTでは山内が肩を痛めた後にフル出場。幾度となくシャットアウトを見せ、ワンタッチもとって日本のレシーブ力を復活させた。

 東京五輪では直前のVNLを戦ったものの、サーブミスの多さで落選。一時は引退も考え、家族の後押しもあって競技を続けた。昨夏の世界選手権は妻の出産と子育てのために出場を辞退。今年の代表始動会見では「また呼んでもらえるとは思いませんでした」と答えた。

 チームメイトで、今年3月に胃がんで早逝した藤井直伸さんを慕い、「藤井さんの分も頑張ります」と熱い思いを胸に抱く。今季に活躍してパリ五輪メンバーに入り、"遅咲き"の五輪デビューとなるか。


photo by 縞茉未

■関田誠大(せきた・まさひろ)

所属:ジェイテクトSTINGS セッター・175cm

1993年11月20日生まれ 東京都江東区出身 東洋高校→中央大学

 日本代表の司令塔。OQTでは初戦が辛勝、第2戦での思わぬ敗北と苦しんだ。主将の石川祐希がコンディション不良のためなかなか調子が上がらないこともあり、焦ってトスが低くなっていた。エジプト戦での敗戦後、関田は責任を痛感してメンタル的にも沈みかけたが、パナソニック時代に同期入社した山内が話を聞き続け、続くチュニジア戦では本来のトスが復活した。

 五輪出場権獲得が決まったあと、急逝した藤井さんのユニフォームを着用してヒーローインタビューに臨んだ。出場権を直接対決で奪い合ったスロベニア代表の主将、ティネ・ウルナルトとは昨季に続きチームメイトとしてリーグを戦う。中・高・大リーグすべてで全国一をとった関田だが、2018年にパナソニックでリーグ優勝を果たした時は控えだった。今季、「自分がトスを上げてリーグ優勝したい」という願いをかなえられるか。


photo by 縞茉未

■下川諒(しもかわ・りょう)

所属:VC長野トライデンツ セッター・178cm

2000年1月12日生まれ 鹿児島県指宿市出身 楠南高校 → 亜細亜大学

 大学卒業後、V2の兵庫デルフィーノに入団。2021−22シーズン終了後にVC長野のトライアウトを受けて合格し、V1リーグで戦うこととなった。昨季の初白星はその前年の覇者サントリー相手に、下川がトスを上げ続けて取りきった。

 入れ替え戦に回ったものの、挑戦者の富士通カワサキレッドスピリッツを下してV1に残留。シーズン後にはシニア代表に初招集された。B代表で主力のセッターとして活躍していたが、登録の関係でアジア大会には出場できず、涙をのんだ。しかし代表活動で得られた経験は大きかったようで、「チームに持ち帰って、今季は少しでも順位を上げたい」と意気込む。堅実でオールラウンドな司令塔が、新生VC長野をけん引する。

(女子Vリーガー注目の10人は?>>)