サモア戦、ピッチ入場後に国旗を持つ少年に優しく語りかける姫野和樹【写真:イワモトアキト】

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ラグビーW杯フランス大会 カメラマン・イワモトアキト氏のフォトコラム

 連日熱戦が繰り広げられているラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会。「THE ANSWER」は開幕戦から決勝戦まで現地取材するカメラマン・イワモトアキト氏のフォトコラムを随時掲載する。今回は28日(日本時間29日)のサモア戦を戦った日本代表を牽引する姫野和樹主将。

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 大歓声がスタジアムを揺らす。絶対に落とせないサモア戦、それは国歌斉唱前のことだった。大きな日の丸の国旗を掲げる少年の肩に姫野和樹が、そっと手を添えた。少年に向かって笑顔で語りかける姫野、少年の表情はうまく読み取れなかったが、2人の様子を見つめるエスコートキッズの笑顔が、そのやりとりがどれだけ素敵なものであったかを物語ってくれた。

 この試合、入場前にエスコートキッズと握手する姫野の写真が話題を集めた。撮影したのは大会の公式写真を担当する海外のフォトグラファーだ。素敵な写真だと思うと同時に、この写真の存在は偶然ではなく必然である気がした。

 姫野和樹は被写体として人を惹きつける力がある。「この人は何か持っている」と感じずにはいられない魅力が彼にはある。だから自然とカメラを向けたくなる。旗を持つ少年に声をかける写真も、偶然ではなく必然、期待してカメラを向け続けた結果だ。

 プレーやキャプテンシーはもちろん、その優しさやリスペクトの気持ちに人は惹きつけられる。それはともに戦うチームメートもファンもきっと同じ。仲間を惹きつける力がONE TEAMには欠かせない。

 泣いても、笑っても、すべては次戦、アルゼンチンとの試合で全てが決まる。きっと姫野は期待に応えてくれる。そう信じてカメラを構えたい。

■イワモト アキト / Akito Iwamoto

 フォトグラファー、ライター。名古屋市生まれ。明治大を経て2008年に中日新聞入社。記者として街ネタや事件事故、行政など幅広く取材。11年から同社写真部へ異動。18年サッカーW杯ロシア大会、19年ラグビーW杯日本大会を撮影。21年にフリーランスとなり、現在はラグビー日本代表、JAPAN RUGBY LEAGUE ONEオフィシャルフォトグラファーを務める。

(イワモトアキト / Akito Iwamoto)