■攻撃力が売りのフィオレンティーナ

 かつて“カテナチオ”の国として名を馳せたイタリアだが、フィオレンティーナは今大会で最も攻撃力の高いチームだ。14試合で36ゴール(1試合あたり2.6ゴール)は最も多く、これはチャンピオンズリーグ(CL)で最多のマンチェスター・C(31ゴール)をも凌ぐ数字となっている。また、シュート数(261本)と枠内シュート(94本)も大会最多。その中で最も存在感を見せているのはブラジル代表FWアルトゥール・カブラウだ。大会初ゴールはグループステージ最終戦まで待たなければならなかったが、そこから怒涛のゴールラッシュを見せ、現在7ゴールでバーゼルのスイス代表FWゼキ・アムドゥニと並び得点ランキングトップタイに位置している。データサイト『OPTA』によるとxG(ゴール期待値)は4.6で、22本のシュートは全てペナルティエリア内からのものだという。なお、アシストランキングでも“ヴィオラ”のコートジボワール代表FWクリスティアン・クアメとイタリア代表DFクリスティアーノ・ビラーギがともに5でトップタイとなっており、ウェストハムがこの攻撃陣をどう抑えるかは注目ポイントの1つだ。

■鍵を握るのは“タクティカルファウル”?

 フィオレンティーナの攻撃が危険なのは事実だが、ウェストハムも今大会27ゴールで“ヴィオラ”に次ぐ得点力を持ったチームだ。フィオレンティーナのイタリアーノ監督はウェストハムのカウンターに警戒感を示し、「彼らに危険なボールを与えないようにし、“タクティカルファウル”やタックルなどでカウンターを避けるようにしていく」と早めの対策を講じることを公言している。データを見るとイタリアーノ監督の心配も無理はない話だ。『OPTA』によると、ウェストハムは今シーズンのECL出場チームの中で相手のゴールから40m以内でのボール奪取が121回と最も多く、そこからのシュート(26本)も、自陣でボールを奪ってからのカウンターからゴール(3)も最多となっている。しかし、カウンターを未然に防ぐタクティカルファウルはカードが出ることも少なくはなく、同じ選手が何度もやれるものではない。やり方次第では決勝戦で数的不利になるという最悪の事態を招きかねないため、繊細なバランス感覚が求められるだろう。

■裁くのはスペイン人主審

 この試合の主審を務めるのはスペイン人のカルロス・デル・セロ・グランデ氏。同氏はマテウ・ラオス氏とともに今シーズン限りでラ・リーガの主審を勇退することが決まっている。最終節で担当を務めたレアル・ソシエダ対セビージャの試合前には、両チームの選手たちが花道を作り、同氏を迎える一幕もあった。なお、デル・セロ・グランデ氏はカードが多い傾向にある主審だ。同氏は今シーズンのCL6試合とECL1試合で主審を務め、28枚のイエローカードと2枚のレッドカードを提示。ちなみにECLの1試合は決勝トーナメントプレーオフ・ファーストレグのブラガ対フィオレンティーナ。その試合では55分にブラガのブラジル人DFヴィトール・トルメナが退場したこともあってかフィオレンティーナが4−0で勝利を収めた。“ヴィオラ”は同氏に良いイメージを持っているかもしれない。

■PK戦も見据えて

 5月31日に行われたEL決勝戦ではセビージャとローマが対戦し、PK戦までもつれこんだ末にセビージャが優勝を果たした。フィオレンティーナのイタリアーノ監督はPK戦の可能性について聞かれると、「練習の後、それを見据えて全員にPKを蹴らせた。冷静な選手が8、9人いるが、決勝でそういう展開になった時に誰が蹴る気になるかは見てみよう」としっかりと準備をしていることを明かした。一方、ウェストハムはECLの全試合でフランス代表GKアルフォンス・アレオラにゴールマウスを託してきた。だが、アレオラは11月に行われたカラバオ・カップのブラックバーン戦でPK戦になった際、8本連続で反対に飛ぶなど10本のPKを1度も止められず、チームも敗れていた。逆に普段は正守護神に君臨している元ポーランド代表GKウカシュ・ファビアンスキは、PKストップの名手として知られている。データサイト『Transfermarkt』によると、キャリアで67本のPKを経験し、その約30%となる20本をストップしている。仮にPK戦になった場合、今大会1分も出場していないファビアンスキが投入され、大きな役割を果たす可能性もある。

■予想オッズは?

 日本時間7日12時現在、英国大手ブックメーカーの『ウィリアム・ヒル』は、90分での勝者についてはフィオレンティーナとウェストハム、両者に「2.7倍」と全く同じオッズをつけている。なお、引き分けは「3.1倍」だ。ただし、全く違う予想もある。『OPTA』はスーパーコンピューターを使い、90分での勝率でフィオレンティーナを「47.6%」、ウェストハム「28.1%」、引き分けを「24.3%」と予想。完全に“ヴィオラ”が優勢だと見ているようだ。

(記事/Footmedia)