矢倉楓子 撮影/西邑泰和

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2018年にNMB48を卒業した矢倉楓子。現在はタレント、俳優などマルチに活動する一方、元AKB48の安田叶と共に、新規アイドルユニット2組をプロデュースする「kawaii land プロジェクト」にプロデューサーとして携わっている。彼女に、NMB48時代のエピソードや、グループ卒業後のセカンドキャリアを中心に話を聞いた。

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2017年10月11日、大阪城ホールで開催した『NMB48 ARENA TOUR 2017』大阪公演で、翌年3月にNMB48を卒業することを発表した矢倉。当時、卒業を決意した本当の理由は言えなかった。

「NMB48に入った14歳の頃から、『この世界で生きていくんだ!』って腹を括って活動してきたので、まだまだ卒業するつもりはなかったんです。卒業しても、自分にできることは他にないと思っていましたからね。でも20歳の時に、AKB48グループで紅白歌合戦の総選挙があって。

一般投票で決まるのですが、自分では自信があったのに、全然順位が振るわなかったんです。それがショックで、もうこれ以上やってても無理だと思ってしまって……。もう卒業しようと。その時は本当のことを言えずに、『私はセンターにもなれたし、これ以上を目指す向上心のようなものがなくなったというか、やり切りました!』と言って卒業しました」

約6年間に渡って、脇目もふらずにアイドル人生を突っ走ってきたが、一度立ち止まってしまうと、熱意も冷めていった。

「精神的にしんどかったんでしょうね。中学生の頃からNMB48の活動を始めて、常に誰かと比較されてきて。頑張り続けて、走り続けてきたんですけど、いつの間にか活動を楽しめなくなっている自分がいて。アイドルが大好きでやっていたはずなのに、嫌いになり始めてるなと思ってしまって。それで芸能界を完全引退しますと。その時点では戻ってくるつもりもなかったんです」

芸能界引退後は、特にやりたいこともなく、生まれて初めてのアルバイトを経験したが、社会経験のなさを痛感した。

「引退後は焼き肉屋さんとアイスクリーム屋さんで働いたんですけど、私って社会不適合者なんだと思いました。それまでバイト経験がなかったのもあって、普通に働くことができなくて、コメディ映画みたいなことが起こるんです(笑)。たとえば焼き肉屋さんで高いワインを頼んでいただいて、片手でグラスに注いでいるうちに、テーブルにバーッてこぼしてしまったりお皿をいっぱい割ってしまうとか。

現実でこんなことする奴ほんまにいるの? みたいな感じで、おっちょこちょいでは済まないようなミスを何度もやらかして。あと、たまたま焼き肉屋さんに来店してくださった女性のお客さんが、私のことを知ってくださっていたことがあって。お肉を焼いている時に『ふぅちゃうんですか?』って声をかけられて、適当にごまかして気まずくなったこともありました」

芸能界に未練はないつもりだったが、心のどこかでは戻りたい気持ちがあった。そんな気持ちを汲み取ってくれたのは、NMB48時代の先輩だった。

「NMB48を卒業して一般人になった後も、みるきーさん(渡辺美優紀)とけいっちさん(上西恵)とは交流が続いていて。私は大阪にいたんですけど、上京して一緒に遊んだ時に、みるきーさんから『今もファンの方がいるんだったら、このまま引退するのはもったいないし、またやったらいいやん。本当はやりたいんじゃないの?』と言われて。

確かに引退後もインスタは更新していて、ファンの方との繋がりはあったので、そういう言葉を待っていたのかなって。NMB48で心が折れて、もう無理だって辞めたけど、何か理由を付けて、誰かに背中を押してもらいたかったのかなって気づいてハッとしまして。じゃあ復活しようと決めました」