USBメモリにデータを保存すればするほど、USBメモリ本体の重量が軽くなるとイギリスの科学技術関連誌であるBBC Science Focus Magazineが解説しています。

Does a USB drive get heavier as you store more files on it? | BBC Science Focus Magazine

https://www.sciencefocus.com/future-technology/does-a-usb-drive-get-heavier-as-you-store-more-files-on-it/



Does A USB Drive Get Heavier Or Lighter As You Store More Files On It? | Times Knowledge India

https://www.timesknowledge.in/science/technology/does-a-usb-drive-get-heavier-or-lighter-as-you-store-more-files-on-it-1214-2.html

USBメモリはフラッシュメモリを使用しています。デジタルデータはすべて「0」か「1」という2つの数字の組み合わせで表現されているので、フラッシュメモリ上のトランジスタに「0」か「1」という情報を保存することで、USBメモリはデジタルデータを保存します。

トランジスタはフローティング・ゲートに給電すると「0」を、給電を解除すると「1」を設定します。そして、フローティング・ゲートへの給電には電子が利用されます。電子の質量は1つ当たり0.00000000000000000000000000091グラムです。



データが保存されていない状態のUSBメモリは、トランジスタがすべて「0」に設定されています。しかし、データを保存するとトランジスタに「1」が追加されることとなり、トランジスタから電子が解放されるため、解放された電子の分だけUSBメモリの重量が軽くなっていくとBBC Science Focus Magazineは主張しているわけです。

なお、BBC Science Focus Magazineは「データを保存したことで生じる質量の変化を既存のはかりで測定するには、地球上に存在するよりも多くのUSBメモリを準備してまとめて重量を計算する必要があります」と指摘しています。



ただし、海外掲示板のRedditでは本当にUSBメモリがデータを保存すると本体重量が軽くなるのかについて議論が交わされており、「これは明らかに間違いです。フラッシュドライブの正味電荷はゼロです。電子がデバイスに追加されたり解放されたりすることはありません。フローティング・ゲートを出入りする電子はあるものの、USBメモリに新しい電子が追加されているわけではありません」と言及し、電子の追加・解放はあるものの、それはUSBメモリ内での出来事であるためUSBメモリ本体の重量変化には影響しないと指摘する声もあります。ただし、この意見に対しても「より高いエネルギー状態にある電子はほんの少しだけ重くなります。つまり、デバイスがどのようにデータを保存するかによって、質量が増えたり減ったりすることは起こり得ます」と、電子の状態変化によりフラッシュドライブの重量が変化する可能性を指摘するコメントもあります。

Does a USB drive get heavier as you store more files on it? Paradoxically, the more you save on a flash drive, the lighter it gets. : r/hardware

https://www.reddit.com/r/hardware/comments/fq2chg/does_a_usb_drive_get_heavier_as_you_store_more/



また、別のユーザーは「ジャーナリストに基本的な電子工学の知識を期待するのは無理があります。BBC Science Focus Magazineの電子に関する理論は全く正しくありません。コンデンサーが充電されても、本体重量が電子の質量で重くなることはありません。電解コンデンサーが充電されると、電子がプラス端子からマイナス端子に移動するだけです。フラッシュドライブにデータが書き込まれると、電子はチャネルからフローティング・ゲートに移動するか、再び外に戻るだけです。チャネルには電子があった場所に穴が空くだけで、外から新しい電子が蓄積されるわけではありません。電子は互いに反発し合うため、もしメモリセルが新しい電子で満たされるようなことがあれば、他のゲートを消したり、全体を壊してしまったりと、他の問題が発生するでしょう」と指摘し、データの保存でUSBメモリの重量が変化することはないとしました。

なお、高級日刊新聞のThe New York Timesが2011年に公開した「The Weight of Memory(メモリの重さ)」という記事でも、「データを保存するとフラッシュドライブの重量は変化するのか?」という疑問について解説されており、ここではカリフォルニア大学バークレー校でコンピューターサイエンスの教授を務めるJohn D. Kubiatowicz氏がこの疑問に答えています。

Kubiatowicz氏によると、データが記録されても、メモリ内の電子の総数が変化することはありませんが、トラップされた電子はトラップされていない電子よりも高いエネルギーを持ちます。ただし、そのエネルギー量は非常に小さく、1ビット当たり10^-15ジュール程度です。アルベルト・アインシュタインのE=mc2をベースに考えると、エネルギーは質量に相当し、重さを持つと考えらえています。そのため、容量4GBのKindleの「データが空っぽの状態」と「4GB満タンの状態」では、満タン状態の方が1アトグラムほど質量が軽くなると考えられるそうです。つまり、「データの保存量によりフラッシュドライブの重量が変化する」という主張は正しいわけです。

ただし、地球上に存在するはかりの中で最も感度が高いものであっても、この1アトグラムという質量を計測することはできないとKubiatowicz氏は指摘しています。