新千歳空港駅の改札を出てすぐの場所にある記念撮影スペース(写真:JR北海道)

ひっきりなしに飛行機が離着陸する北海道の玄関口と言えば、新千歳空港だろう。年間の離発着数は15万回とされ、国内外から多くの旅客が訪れる。空港から道内最大の都市、札幌へ向かう乗客が主に利用するのが、JR北海道の新千歳空港駅だ。

当駅は2022年に、開業30周年を迎えた。JR北海道による空港アクセスのこれまでの歩みと、今後の展望を見つめていきたい。

開業前の空港アクセス

新千歳空港が開港したのは、1988年のことである。戦前より飛行場として重用されていた設備を更新し、同年7月20日に3000×60mのA滑走路を共用開始した。新しいターミナルビルが完成した1992年に、空港直結の地下駅である新千歳空港駅が開業している。

新しい駅が開業するまで、空港へのアクセスには千歳空港駅(現在の南千歳駅)が用いられていた。現在も石勝線と千歳線の接続駅として重要な役割を果たしている同駅だが、旧千歳空港のターミナルビルが廃止されたことに伴い、新千歳空港駅の開業と同時に現在の駅名に変更されている。

JR北海道に新千歳空港駅開業前の空港アクセス輸送について聞いてみると、快速列車を増やす前は特急列車で空港へ向かう乗客が多かったという。特急では「エアポートシャトルきっぷ」を利用して千歳空港駅で下車する乗客と、道内の長距離移動をする乗客の住み分けがうまく行えず、列車の混雑が課題となっていた。新たな駅が開業して以降は快速「エアポート」での輸送に切り替わり、特急で空港に向かう乗客は減少している。

新千歳空港ターミナルビルが開業した後、JR北海道の輸送体系にも大きな変化が訪れる。新千歳空港駅の乗降客数は、多少の増減はありながらも上昇。2020年度は新型コロナウイルスの影響で年間478万人と大幅に減少したが、2021年度の乗降客数はおよそ602万人で、復調の兆しが見えてきた。また、当駅の乗降客数はJR北海道の駅では札幌駅に次いで多い。

駅舎1つを見ても、高い評価を受けつつも進化を続けている。1994年には駅舎とそのアートワークがブルネル賞の奨励賞を受賞。デンマーク国鉄と共同制作で作り上げた駅舎の機能性などが高い評価を受けた。2018年からリニューアル工事に着手し、「北海道らしさ」を押し出した駅舎に生まれ変わっている。

実際に駅へ降り立ってみると、駅の内装は無駄がなく洗練されている。白系を基調とした壁面と床、北海道らしさを想起させる木目調のベンチ類も目を引く。駅舎の広告類も、北海道でしか味わえない食料品のものがほとんどだ。航空各社の到着ロビーから改札までの経路も非常にわかりやすく、あっという間に改札口へ到着する。JR北海道は維持面でほかの駅と異なる特別な取り組みは行っていないと言うが、工夫が凝らされているように感じた。

新千歳空港を含め、道内に大きな影響を及ぼしたできごとがある。2018年9月に発生した北海道胆振東部地震だ。道央エリア南部の厚真町では震度7を記録し、北海道全域で停電が発生したため、JR北海道では北海道新幹線を含めたすべての路線で終日運転を見合わせた。管内の路線では多くの軌道変位や路盤変状が発生したが、新千歳空港駅付近では物損被害はなく、地震発生翌日の9月7日には快速「エアポート」の運転を再開している。

30周年から未来へ

JR北海道は、新千歳空港駅開業30周年に合わせてさまざまな取り組みを行った。


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快速「エアポート」に充当される車両に特別仕様のシール式ヘッドマークを掲出して運転したほか、駅舎でも駅社員がデザインした記念ロゴを作成。新千歳空港駅では記念フォトスポットや記念スタンプを新たに設置し、メモリアルイヤーを盛り上げた。

中でも反響が大きかったのは、駅社員の発案による記念入場券だったという。台紙付きの3枚を1セットとし、600円で3000セットを販売。販売期間は当初2022年7月1日から2023年3月末までとしていたが、予想を上回る好評で発売から1カ月も経たずに完売した。係員らの創意工夫が、利用客から好印象を持たれたのかもしれない。

JR北海道に、新千歳空港駅の今後についても聞いてみた。新千歳空港を運営する北海道エアポートが発表している「北海道内7空港特定運営事業等マスタープラン」では、ターミナルビルから当駅への縦導線の改善が掲げられている。これらの整備と連携し、駅の位置や規模、アクセス輸送のあり方を検討していく必要があるとした。

一方でJR北海道単独で行える事業規模ではないことから、関係各所と相談しながら具体的な検討を進めたいとしている。一部報道があった駅の移設や拡張については自社が発表したものではないとしながらも、空港の改修に合わせて駅も変化していく余地を残しているように感じられた。

新球場で千歳線の輸送が変わる

札幌へ向かう途中の北広島市には北海道日本ハムファイターズの新球場が完成し、快速「エアポート」は新たにスタジアム利用客の輸送も担う。千歳線の輸送は再び大きな変化を迎えることになりそうだ。

2022年に北海道へ移住した筆者にとって、飛行機は一気に身近な交通手段となった。今後も全国を飛び回り、新千歳空港に帰ってくることになるだろう。30周年を迎えた新千歳空港駅から、学びの旅を始めていきたい。

(吉谷友尋 : 鉄道ライター)