by Alpha Photo

アメリカのテクノロジー産業を支える重要な役割を担ってきた大手金融機関であるシリコンバレー銀行が突然破綻したため、スタートアップを支援する企業のY Combinatorがアメリカの財務長官らに請願書を提出し、シリコンバレー銀行に資金を預けていたスタートアップを保護するように求めました。

Urgent: Sign the petition now | Y Combinator

https://www.ycombinator.com/blog/urgent-sign-the-petition-now-thousands-of-startups-and-hundreds-of-thousands-of-startup-jobs-are-at-risk/



SVB Collapse: Bank Draws Support From More Than 100 VCs, Investors - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-03-11/svb-draws-support-from-more-than-100-venture-firms-investors

Silicon Valley Bank’s China venture in doubt as start-ups struggle to access US funds | Financial Times

https://www.ft.com/content/716b793e-d650-4e23-9e6f-600c1e4dc760

テクノロジー企業に多数融資を行い、テクノロジー企業の資金を多く預かってきたシリコンバレー銀行は、2023年3月10日に経営破綻し、連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に入りました。

当初、FDICは預金保険制度に従い、被保険者の預金については最大25万ドル(約3400万円)まで補償するとしていました。

スタートアップを支援するY Combinatorのギャリー・タン氏は、この騒動に対し、「これはスタートアップにとって絶滅レベルのイベントであり、スタートアップとイノベーションを10年以上後退させることになります」と警告を発し、財務長官のジャネット・イエレン氏、FDIC委員長のマーティン・グルーエンバーグ氏らに宛てた請願書を提出しました。





全米ベンチャーキャピタル協会によると、シリコンバレー銀行に25万ドル以上を預けていた企業は3万7000社以上あるとのことで、シリコンバレー銀行の売却先が決まらないままだと、これらの企業は数ヶ月から数年間は預金にアクセスできない可能性があるそうです。

タン氏は「Y Combinatorのコミュニティでは、シリコンバレー銀行と提携しているスタートアップの3分の1が、シリコンバレー銀行を唯一の銀行口座として利用していました。銀行が破綻した結果、スタートアップは給与を支払うための現金を用意できなくなります」と説明。1万社以上の企業が給与不払いで一時営業停止を余儀なくされる可能性があるとし、経済で最も活気のあるイノベーションの分野で10万人以上の雇用に影響を与えることになると続けました。

請願書には5000人を超えるスタートアップ創業者とCEOが署名しており、計40万人以上の従業員を抱える各企業に対する救済を求めています。請願書には「銀行の救済を求めているのではなく、中小企業預金者の救済を求めているのです」と記載されていますが、イエレン財務長官も同様の発言を行っていて、3月12日のインタビューにて「銀行のオーナーや投資家ではなく、預金者のことを気にかけており、規制当局と協力してこれらの懸念に対処しようと努めています」と回答していました。

その後、FDICは財務省と共同で「預金を全額保護する」との声明を発表しました。

経営破綻した「シリコンバレー銀行」と「シグネチャー銀行」の預金全額保護をアメリカ財務省やFRBが発表 - GIGAZINE



署名活動を行っているのはY Combinatorだけではなく、セコイア・キャピタルを含む約125のベンチャー企業が、ベンチャー企業のゼネラル・カタリストが主導する声明に署名したとも伝えられています。

シリコンバレー銀行破綻の余波は海外にまで及んでいます。特にシリコンバレー銀行は中国とアメリカとの橋渡しの役割を担ってきたこともあり、シリコンバレー銀行が進めてきた上海浦東発展銀行との合弁事業の行方や、シリコンバレー銀行を主要取引相手としていた香港の10社以上のハイテク・ライフサイエンス企業の資金が危険にさらされる可能性があることも懸念されています。タン氏は「シリコンバレー銀行の破綻は、システミック・リスクの危険性をはらんでいます。シリコンバレー銀行の破綻は、残った現金をより安全な場所に移すという恐怖心を創業者や経営陣の間にすでに植え付けており、他のすべての中小銀行への取り付け騒ぎを誘発しかねません」とも主張しました。