1992年の出版以降アメリカで高い人気を誇る子ども向けホラー小説シリーズ「グースパンプス」の一部の作品が、電子書籍版のリリースの際に文章表現を大きく変更したことが話題になっています。当初、作者であるR.L.スタイン氏も改訂に同意していたと報じられていましたが、スタイン氏は「出版社が勝手に行った表現の変更を同意したことはなく、変更部分を見せられたこともない」と説明しています。

R.L. Stine Accuses Publisher of Censoring 'Goosebumps' Books without Permission | National Review

https://www.nationalreview.com/news/r-l-stine-self-censoring-goosebumps-books-to-be-more-inclusive/



Goosebumps author sets record straight on historic edits

https://thenewdaily.com.au/entertainment/books/2023/03/07/goosebumps-author-rl-stine-edits/



Roald Dahl Publisher Relents after Backlash over Censorship | National Review

https://www.nationalreview.com/news/roald-dahl-publisher-relents-after-backlash-over-censorship-readers-will-be-free-to-choose/

「チャーリーとチョコレート工場」の原作となる「チョコレート工場の秘密」などで知られるイギリスの小説家であるロアルド・ダール氏の作品において、電子書籍版を含む新しいバージョンのリリースに際して、登場人物の体重、メンタルヘルス、人種、および性別に関連する文章表現を大きく変更することが発表されました。この変更はイギリスのリシ・スナク首相やカミラ王妃なども批判的な意見を述べ、作家の「表現の自由」を制限する動きに抵抗する大きな論争を巻き起こしました。2023年2月には出版社が「読者は、ダール氏の物語のどのバージョンを好むかを自由に選択できます」と述べた上で、変更を加えていない別バージョンもリリースしたことが報じられました。

The Timesは同様に、「グースパンプス」の表現も「検閲によって変更された」ことを報じました。作中の表現においてあるキャラクターは、「ふくよか」として執筆されましたが、出版時には「陽気」になっていたそうです。また、「crazy(狂っている)」という表現が「silly(バカげた)」といった表現になっていたり、ハロウィンで「暗くて嵐の夜」のコスプレをしていたキャラクターは、元の文章でしていた「黒いフェイスペイント」をしない形に変更されていたりと、一部の表現が変更されていました。そのほか、キャラクターの体重に言及した「少なくとも六重のあごをしている」「ボウリングのボールに似ている体型」「リスの頬のように膨らんでいる」といった表現は削除され、「A real nut(狂っている)」「nutcase(頭のおかしい人)」というスラング表現は「ワイルドな人だ」「変人」といった表現に変えられています。



by teakwood

「グースパンプス」は1992年から60巻以上出版されていますが、アメリカのニュースメディアであるNational Reviewの報道によると、十数作品において100以上の編集が加えられているとのこと。

The Timesが最初に報じた内容では、作者であるスタイン氏が変更に同意していたと伝えていました。しかし、報道を受けて「スタイン氏とグースパンプスは、私の子ども時代から10代までの間、多くの喜びをもたらしてくれました。それが、表現の検閲と改ざんを容認していたのは残念です」という作品ファンの声に対し、スタイン氏は「これは真実ではありません。私はグースパンプスの文章表現の変更をしたことはなく、私はいかなる変更内容も見せてもらったことがありません」と述べています。





「グースパンプス」の出版元であるスコラスティックはThe Timesの取材に対し「最新の言葉を使い、特に精神衛生に焦点を当て、今日の若者の見方に悪影響を与えるようなイメージを避けるために、変更を加えました」と述べています。ダール氏の書籍と同様に無修正版をリリースするかどうかは、記事作成時点では不明となっています。

GIGAZINEでもマンガ作品やマンガ脚本などを募集しているため、担当者に「作品の表現が勝手に書きかえられることはあるか?」と確認してみたところ、GIGAZINEマンガ大賞では「フリーランスのためのガイドライン」というページで「マンガ編集とのやり取りで、この表現がまずいという指摘やこうした方がいいという相談はありますが、必ず打ち合わせの中で行っており、最終的には作者の意見を優先しています」と明記しているとのこと。また編集者が作中の表現を変更するよう助言することはありますが、打ち合わせの中で「こういう理由でこんな感じで変更した方が良いと考えています」と確実に伝えているとのことです。

GIGAZINEマンガ大賞

https://manga.gigazine.net/