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勝負はコイントスから逆算されていた!

素晴らしい試合、凄まじい熱戦でした。世界スポーツの祭典、第57回スーパーボウルは今年も最高峰VS最高峰の戦いとなりました。ともにプレーオフ第1シードから勝ち上がってきたカンザスシティ・チーフスとフィラデルフィア・イーグルスとの戦い。どちらが勝っても頂点にふさわしい頂上決戦です。

ただ、雰囲気はほんのわずかにイーグルスに傾いていました。鉄壁の守備を誇り、レギュラーシーズンからプレーオフと圧勝を重ねてきたイーグルスの強さはもちろんですが、「呪い」はことごとくイーグルスを支持していました。

チーフスにはシーズンMVPを獲得したQBマホームズがいましたが、MVPを獲得したQBは何故かスーパーボウルでは勝てないというジンクスがありました。しかもマホームズは右足首に故障を抱えているという不安要素がありました。さらに、試合前のコイントスで勝ったチーフスには「8年連続でコイントスで勝ったチームが敗退している」というコイントスの呪いまで降りかかりました。

ただ、振り返ればこのコイントスの段階から勝負は始まっていたし、コイントスでの選択も含めて「最後に1点勝っていればいい」というチーフスのゲームメイクこそが、この最高峰にして互角の頂上決戦をを制した要因だったのかなと思わずにはいられません。そんな微差を、遥か手前の段階から積み重ねていくような、まさしく紙一重の勝負だったと思います。

↓これぞアメリカという感じの壮大なエンターテインメント空間!スーパーボウルの始まりです!


コイントスで裏表を選ぶのはビジター扱いのチーフス。見事に当てたチーフスは、自分たちのキックからゲームを始めることを選びます。自分たちのキックから始まるということは、ボールを捕った相手方が先に攻撃するということです。一般論で言えば「先にレシーブして自分たちの攻撃からゲームを始め、先行して優位を築く」ほうがやりやすそうなものですが、あえての後攻選択でした。

「先に攻撃させていただけるのですか、では」とばかりに先制パンチを繰り出したのはイーグルス。鉄壁の守備だけでなく、このチームは攻撃も強い。攻撃を牽引するQBハーツはスーパーボウル初出場という緊張感など微塵も見せません。ランを引き出し、パスを通し、そして特長でもある自ら持って走るプレーを繰り出し、順調にファーストダウンを更新していきます。

そしてタッチダウンまであと1ヤードないというキワまで迫ると、このチームの十八番「QBスニーク」が飛び出します。通常ならセンターから少し離れた位置でスナップされたボールを受けるQBが、オフェンスラインのすぐ背後に構えて手渡しでボールを受けると、オフェンスラインが相手を押していくのについていってそのまま1ヤードほどを獲得するという「最後の1ヤード」を削り出すプレーです。

仕組みとしては単純ですが、自分たちのオフェンスラインが押し勝てる場合、相手にはコレを止める手段がほとんどありません。キワまで迫ってしまえば押し込める。ラグビーで言うところのスクラムのような、モールで押し込むような、そんなプレー。見事に最初のドライブでタッチダウンを決めたイーグルス、自分たちのいいところをこれでもかと発揮する素晴らしい立ち上がりでした。

↓実際問題コレをやられたらどうやって止めればいいのかわかんないですね!


もちろんチーフスもこれでうろたえるようなチームではありません。QBマホームズからTEトラビス・ケルシーへのホットラインを軸とした多彩な攻撃は、返す刀ですぐさまタッチダウンを奪い返します。決してイーグルスの守備が緩いわけではないのに、レシーバーがほんの一瞬自由になる瞬間を未来でも予測するように見定めてパスを通していくマホームズは、とにかく判断が早い(※鱗滝左近次の声で)。ともに最初のドライブをタッチダウンに結び付け、早くも7-7。今日は乱打戦になりそうです。

その後、イーグルスは自分たちの反則で攻撃を実らせられず、一方のチーフスもフィールドゴールをポールに当ててミスするなどして、7-7のまま第2クォーターに突入。すると第2クォーター最初のプレーがビッグプレーとなります。敵陣45ヤードから攻撃を再開したイーグルスは、試合再開直後の1本目のパスでタッチダウンを獲得したのです。クォーター間にバッチリと示し合わせてきた「次はこれでいこう」というドンピシャのプレー。チーフスの守備が緩かったわけではありませんが、ここしかないというところを通してきました。これでイーグルスが再び勝ち越し!

↓しっかり守ってしっかりついているのにイーグルスの攻撃が上を行った!


↓しかしチーフスも、イーグルス・ハーツのファンブルをリカバーしてタッチダウンで同点に!

ハーツやってもうたぁぁぁ!

やっぱり今日は乱打戦!



失点につながる痛恨のミスを犯したハーツですが、これもまた自分の特長を出そうとしたなかでのミスです。ファンブルの場面ではいかにもパスプレーかのようなフォーメーションから、自ら持って走ることで相手の裏をかこうという狙いでした。投げられて走れる、ハーツの特長を活かすプレーです。相手の裏をかくために味方も「パスです」の顔で動いているのですから、ボールを持った本人がミスすればこうなっても仕方ないところ。

それでもハーツが見事だったのはミスを引きずらず、すぐさま取り返していったところ。失点後の攻撃では再び同じ狙いのプレーを繰り出して今度は大きくゲインすると、最後は自らエンドゾーンまで駆け抜けてタッチダウンを取りました。ミスを帳消しにしてさらにお釣りが来るような攻撃で、またもイーグルスが勝ち越しに成功します。

↓自分のミスを見事に取り返した!


結局前半は、さらにイーグルスがフィールドゴールで3点を追加して、イーグルスの10点リードで折り返します。点差はもちろん、プレー時間や獲得したヤード数などを見ても「イーグルスがゲームを支配した」と言いたいような内容でした。チーフスは自慢の攻撃陣を送り出すこともできず、ずっと守勢に回っています。しかも第2クォーターの終盤には頼みのマホームズが痛めていた右足首を再び痛めてしまうというアクシデントも。チーフスはここからどう立て直してくるのか。どうすれば立て直せるのか。これはイーグルスの試合かな…と思うような前半でした。

↓お楽しみのハーフタイムショーではリアーナさんが圧巻のパフォーマンス!


↓全然違う場面の写真ではありますが、NFL公式が「全米が泣いた」のアメリカンジョークを披露!

まぁ、気になることがあり過ぎてリアーナさんの歌が全然耳に入ってこなかったですけどね!

こういう「ご報告」もあるんだなと思いました!

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チーフスの攻撃から始まった後半戦。後半最初のドライブではイーグルスの厳しい守備にあいながらも、マホームズが痛めた足で自ら駆け上がって大きくゲインするなどしてタッチダウンを取ります。前半厳しい展開になるだろうことを想定したうえで、ここで試合の流れを取り返すための「後攻」選択だったでしょうか。いい時間帯の得点でチーフスが息を吹き返しました。

そこからジワリジワリと流れを取り返していくチーフス。最終的に判定が覆りはしたものの「あわや逆転のファンブルリカバータッチダウンか」というプレーも飛び出しましたし、第3クォーター中盤から終盤にかけての8分近くに及ぶ長い長いイーグルスの攻撃をフィールドゴールの3失点だけで凌ぐという粘りも見せました。そして終盤戦はまさにチーフスが「ゲームメイク」をして、試合を奪還していきます。

第3クォーターを自分たちの攻撃の途中で終えて第4クォーターに移り、第4クォーターに移ってから逆転のタッチダウンを決めるというタイミングの見事さもそう。そういう勝負所まで「レシーバーが一度内側にダッシュして相手の守備を引っかけてから、逆走してフリーになる」という秘策を温存しておくあたりもそう。試合全体を見通しての組み立てが光ります。

↓これはイーグルス守備陣、完全に引っ掛かった!


尻上がりに勢いを増していくチーフス。イーグルスの攻撃を凌いだあとのリターンでは、味方が次々に壁を作りながら敵陣エンドゾーン付近までリターンするというビッグプレーを見せ、さらにイーグルスを突き放すタッチダウンへと結びつけます。このタッチダウンを奪う際にも温めていたトリックプレーを繰り出しており、攻撃のオプションが本当に豊富です。

↓キックオフからのリターンで「味方が次々に壁になって」66ヤード駆け上がるビッグプレー!


↓先ほどのタッチダウンと同じプレーを逆サイドでやりました!

一度内側にダッシュしてから逆走、にまた引っ掛かった!

これはイーグルス悔しいし、ちょっとバツが悪い!

「同じ技が二度通じる」とは!


これでチーフスが35-27と8点リード、残りは10分弱。イーグルスは懸命に攻めます。素晴らしい攻撃で前進し、長いパスを通し、タッチダウンを取り返します。さらにタッチダウン後にはキックで1点を狙うのではなく、勝負の2ポイントコンバージョンを成功させて同点にまで持ち込みます。QBスニークを駆使して最後の1ヤードを確実に取っていく強さ、強かった、見事だった。

ただ、勝つのは最後にリードしていたほうです。チーフスが見せた最終盤のゲームメイクは、まさしくアメリカンスポーツの醍醐味といったものでした。35-35の同点で試合は残り5分15秒。アメリカンスポーツの残り5分はまだ一波乱も二波乱もある段階です。残り2分からでもドラマが起きる、そういう仕組みのスポーツです。

だからこそチーフスは得点だけでなく時間もコントロールしました。残り5分15秒から始まったチーフスのドライブでは、自ら時間を消費しながらノロノロと進め、イーグルスに反撃の時間を残さずに得点を挙げるというゲームメイクを見せます。その狙いをイーグルスも察知し、タイムアウトを消費して時計を止めながら守りますが、限られた回数のタイムアウトだけでは時計を止めきれません。

ついには、イーグルスは「もうこうなったらタッチダウン決めてもらおう」とわざと守備を緩めてチーフスのタッチダウンを誘おうとする動きさえも見せ、チーフスもその狙いを察知して「タッチダウン直前で自ら止まる」という、世界最高峰の譲り合いみたいなプレーまで生まれました。愚直にベストプレーを繰り出すのではなく「最後に勝っているための知略の応酬」。そしてようやくチーフスがフィールドゴールで自分たちの攻撃を終えたとき、試合時間は残り8秒でした。

↓タッチダウンをさせようとする守備側と、タッチダウン直前で自ら止まる攻撃側!



さすがのアメリカンスポーツでも、残り8秒、タイムアウトなしという状況からではどうすることもできません。キックオフからの爆走リターンタッチダウンか、2回ほどのパスで一気にタッチダウンにつなげるか、超ロングフィールドゴールか。いずれにしても8秒では厳しい。どちらが強者だったのかはこの互角の試合では決めかねますが、最後に勝っていたほうが勝者であることは確か。その意味で、最後に勝っているために試合のすべてを組み立てたチーフスはまさしく勝者でした。試合のすべてを見通して、最後の8秒だけ前にいればいい、そんな勝負師の試合を見ました!

↓どっちが強いかはわからないけれど、勝ったのはチーフスです!


いやー、毎年見るたびに「いくらNFLでもたまにはつまんないスーパーボウルやるんじゃない?」と思って見るのですが、なんやかんやで毎年面白いし、毎年タダでは終わりません。これぞエンターテインメントという試合に今年も感服しました。素晴らしかった。最初の1秒から最後の8秒まで一瞬の隙もなく面白い、そういう試合を今年も見せていただけてありがとうございます!


「ひとりもマヌケのいない映画」でも見るような素晴らしく濃密な時間でした!