先週、チョコレートブランドのM&M'sは、同社のマスコットキャラクターをインクルーシブにしようとする変更へ反発があったことを理由に、彼らによるインクルーシブな広報活動を引退させるという声明を発表した。これによって、このニュースに関してインターネット上では多くの憶測が流れた。

そして数日後、同社は一連の動きがすべてスーパーボウル広告計画の一環であることを明らかにした。このことは、特に若い人口層においてブランドへの信頼が低いなか、ただ注目を集めるためだけのスタントマーケティングにどれほどの価値があるのか、人々に疑問を持たせているようだ。

消費者はますます懐疑的に



M&M'sの(マスコット方針の変更という)ニュース、そしてその「ニュース」への消費者からの反応、そしてその反応を鎮めるために同社が急きょ(実はスーパーボウル広告の計画の一環だったと)明らかにする必要があったことは、今日のマーケティング担当者が直面するプレッシャーの縮図である。事実、ローンチする対象が何であれ、ローンチの際にはこれまでよりも緻密なシナリオ計画が必要となっている。例えば、想定外の反応が起きた場合にブランドはどのように対応するか、といった計画だ。そのようにして、ローンチ内容がブランドに適したものかどうかを確かにする、と代理店の幹部やブランドコンサルタントは言う。

クリエイティブエージェンシーのザンベージ(Zambezi)のグループ・ストラテジーディレクターであるマット・ババザデ氏は、「どのような計画をするかだけでなく、(何か問題が起きたときに)どのように反応するか、についても話し合う必要がある」と述べている。「以前は、『私たちのメッセージは何か。私たちは何を伝えたいのか。オーディエンスとどのようにつながりたいか』といったことが重要だったが、今では『そもそもこれは私たちがすべき発言なのか。このメッセージはどう受け止められるだろうか』と考える必要がある。膨大なシナリオを想定し、それぞれの対応策を立てることが重要になった」。

ワンダーマン・トンプソン(Wunderman Thompson)の戦略責任者メガ・パリーク氏も同じ意見で、マーケターたちは「(FOXニュースのアンカーであり、保守派政治コメンテーターの)タッカー・カールソンと(リベラルな放送局の)NPRの反応」に備えて計画しなければならないと付け加えた。

さらに、消費者は、ブランドを宣伝するインフルエンサーの言葉に対してますます懐疑的になっている。先週、美容系インフルエンサーのミケイラ・ノゲイラがTikTokにロレアル(L'Oreal)のマスカラをレビューする投稿をしたところ、視聴したユーザーたちはノゲイラがマスカラのレビューをしているにも関わらずつけまつげを使用しているように見える点、またスポンサーコンテンツ投稿に必要なタグがない点を指摘するコメントが大量につき、逆にブランドに関して問題が提起されたという出来事があった。

消費者は「インターネットの探偵」



近年起きている1つの変化は、広告代理店たちがブランド顧客に対し、彼らが製品の効果として主張する内容を裏付けるための証拠を求めることである、とパリーク氏は語る。同氏は、若い意欲的な消費者は「インターネットの探偵」であり、何が真実で何が真実でないのか、時間をかけて調べていると指摘する。特にブランドが主張する内容が、少しでも嘘くさいと感じられた場合は消費者たちはそれを見極めようとする。

また最悪の場合、人々が時間をかけて広告に関する「陰謀論」を作るような状況にマーケターたちは直面していると、モージョー・スーパーマーケット(Mojo Supermarket)のグループ・クリエイティブディレクターであるケイト・カーター氏は述べ、問題が発生した場合、マーケティング担当者はそれが何を意味し、どのように対応するかを認識する必要があるという。「私たちは常にクリエイティブとして最悪のシナリオに備えて計画している」 。

「ブランドが(プロダクトの効果に関する)議論に参加するのであれば、自らの主張を証明できるだけの材料を用意せねばならず、撤回するような状況は避けなければいけない」とペレラ・オデル(Pereira O’Dell)のブランド戦略ディレクターであるリンジー・フォックス氏は述べた。

意味のある目的はなにか?



では今日のインターネットが抱える不透明な領域において、企業はどのような姿勢で目的マーケティングに取り組めばいいのか。ブランド幹部たちはブランドが持つコアなポジショニングと密接に繋がったストーリー、クリエイティブを見つける必要がある。

カーマイケル・リンチ(Carmichael Lynch)のCSO、ラクラン・バデノック氏は、「多くのブランドは、見当違いに、ブランドにとっての真実味が欠けた抽象的なレベルで(マーケティングにおける)目的を追い求めている」と述べた。

「このアプローチでは逆にブランドは脆弱性を持ってしまう。ブランドは、次のような質問をし続ける必要がある。意味のある目的は、あなた(ブランド)が誰で、その仕事が何か、から始まる。この観点から考えて、自ブランドの文化における関連性はどこにあるのか。(広告のメッセージが)大きくて大胆でも、ブランドにとって意外な内容となっていると、おそらくうまくいかないだろう」。

[原文:Marketing Briefing: With younger consumers questioning brands’ trustworthiness, marketers turn to scenario planning]

Kristina Monllos(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)