実際にその制裁が施行され、来季に向けて新戦力の補強ができないとなると、今季の最大の課題であったストライカー不足を、現有戦力で埋めなければならない。

 もちろん補強ができなかったとしてもJ2で十分戦えるはずだし、1年でJ1に復帰できるだけの戦力はある。だからこそ、選手個々を成長させながらチームとしての方向性を定め、この窮地を救うことができる手腕を持つ指揮官を招聘できるかどうかが最大の注目点となる。

 強化の責任者であるスポーツダイレクターにクラブのレジェンド・藤田俊哉氏が就任し、社長も交代。体制が変わるなかで、未来につながるチームの基盤を整備できるのか。失策続きだったフロントの底力も問われる2023年となる。
 
 そして、最も未知数だが、最も楽しみがふくらむ新興勢力が、藤枝だ。

 昨年夏に就任してから着実に超攻撃的サッカーを育て上げてきた須藤大輔監督が目ざすのは「究極のエンターテイメントサッカー」。正確にパスをつなぎながらボールを支配し、連動した動きとパスでアタッキングサードを攻略して、1点や2点では満足せず。3点、4点、5点とゴールを積み重ねていく。

 ボールを失った後のハイプレスによる「即時奪回」も身上で、それによってほぼ相手陣内で試合を進めるハーフコートゲームを理想としている。

 今季のJ3では、1試合平均得点が1.71、1試合平均失点が0.85(どちらも優勝した、いわきFCに次ぐ2位)。内容も「非常に面白いサッカー」と県内外から高く評価されている。

 須藤監督はJ2でも超攻撃的スタイルを貫き通すことを明言しており、「J2のほうが前から激しく(プレスに)来るチームが少なく、やりやすいんじゃないかと感じています」と語る。このサッカーで本当にJ2でも旋風を巻き起こせるのか。

 今季のJ2では、藤枝のスタイルと近い面のあるロアッソ熊本が、J2昇格1年目ながらJ1参入プレーオフ決定戦まで進むという躍進を見せた。藤枝もその再現を目論んでいる。

 以上を踏まえて静岡ダービーについて考えると、最もモチベーションが高いのは、偉大な先輩クラブたちと初めて同リーグで戦う藤枝だろう。自分たちの攻撃サッカーを貫いて清水や磐田を倒すことができれば、まさに下剋上。すでに「ダービーが本当に楽しみ」と言っている選手は多い。
 
 当然、清水にも磐田にも、藤枝には絶対に負けられないというプライドがある。会社としての経営規模にも選手の年俸総額にも大きな差がある。そうした地力の差を先輩クラブが見せつけられるのか、失うもののない藤枝の果敢な挑戦が結果につながるのか。