日本を含む世界8カ国に住む100万人以上のデータを分析した研究により、紅茶・緑茶・ウーロン茶をよく飲む人は2型糖尿病を発症する危険性が低減されることが分かりました。この研究結果は、スウェーデンのストックホルムで2022年9月19日から23日まで開催されていた第58回欧州糖尿病学会で発表されました。

Drinking plenty of tea may reduce the risk of | EurekAlert!

https://www.eurekalert.org/news-releases/964913

Drinking certain teas is linked with lower diabetes risk | CNN

https://edition.cnn.com/2022/09/20/health/black-green-oolong-tea-lowers-diabetes-risk-wellness/index.html

お茶にはカテキンなどの抗酸化物質や抗発がん物質が含まれており、心臓発作や脳卒中を予防したり、心臓発作や脳卒中になった後の生存率を高めたりするといった健康的な効果が得られることが分かっていますが、現代人にとって代表的な生活習慣病である2型糖尿病との関係はよく分かっていませんでした。

研究が行われていないわけではありませんが、2型糖尿病の予防効果があるとする研究もあればないという研究もあるなど、一貫性のある結果はなかなか得られていなかったとのこと。



そこで、中国・武漢科技大学のXiaying Li氏らの研究チームは、2021年9月までに発表されている「成人のお茶の摂取量と2型糖尿病リスクについて調査をした文献」をシステマティック・レビューで分析する研究を行いました。分析に使用された文献には、中国・アメリカ・日本・フィンランド・イギリス・シンガポール・オランダ・フランスの計8カ国で実施された19件のコホート研究が含まれており、参加人数の合計はのべ107万6311人に上りました。

分析の結果、緑茶・ウーロン茶・紅茶を1日1〜3杯飲む人の場合は10年の間に2型糖尿病を発症するリスクが「4%」、4杯以上飲む人の場合は「17%」低下していたことが分かりました。お茶の飲用と2型糖尿病リスクの間には直接的な関連性があり、1日に飲むお茶1杯ごとのリスク低減効果は約1%分だったとのことです。

この結果について、Li氏は「この研究はお茶を飲めば2型糖尿病のリスクが減少するということを直接証明したものではありません」と強調した上で、「今回の結果は、お茶を飲むことは2型糖尿病のリスク低減に有益ながら、1日4杯以上と高用量でなければならない可能性を示唆しています」と結論付けました。



実は、Li氏らの研究チームは上記のシステマティック・レビューを行う前に、中国人5199人が参加した調査結果も分析していましたが、その研究ではお茶を飲む人と飲まない人の2型糖尿病リスクに違いは見られませんでした。この調査では、参加者がお茶を飲むかどうかだけが聴取されており、飲む量に関するデータは収集されていなかったとのことで、この点からも飲む量が重要である可能性があるとの仮説が支持されています。

Li氏は、中国での調査では有意な差が見られなかった理由について、「ポリフェノールなどお茶に含まれる特定の成分が血糖値を下げる可能性がありますが、効果を発揮するためにはこうした生理活性物質を十分に摂取する必要があるのかもしれません」と分析しています。

また、お茶を飲むことで健康にいい物質を摂取したことよりも、お茶を飲む習慣が有害な飲み物を避けることにつながったことが大きいのではないかと指摘する専門家もいます。イギリス・グラスゴー大学で代謝医学を研究しているナビード・サタール教授は「お茶に含まれている成分が2型糖尿病のリスクを低減しているというより、お茶を飲むことによって砂糖入りの飲料を飲む機会が減ったのが要因ではないでしょうか」とコメントしました。