築30年ながらリフォーム済みできれいな家(写真:椙田拓也・カネコツトム)

都心でマンションの価格が異常なほどに高騰する一方で、地方では空き家が目立ち、「投げ売り」状態になっている。今、日本の住宅市場で何が起きているのか。『「空き家」で儲ける! 驚異の利回り100%不動産投資術』の著者陣が解説する。

2DKの窮屈な生活

都内23区の私鉄沿線、家賃13万5000円の、駅徒歩6分にある2DK賃貸マンション。この家で、会社員のAさん(40歳)は、今日もテレワークに励んでいます。

同居人は、共働きの妻(36歳)と保育園に通う息子1人(4歳)。

築20年の賃貸マンションは48平方メートル、ダイニングキッチンに寝室、リビングという間取りで、Aさんはダイニングテーブル、妻はリビングのローテーブルを使って窮屈に働いています。

これまで住まいにはとくに不満を感じていなかったのですが、コロナ禍により夫婦で在宅勤務になったことから状況は一変。夫婦で一日、狭い家にこもりきりで仕事をするのは息が詰まりますし、4歳の子どもはしょっちゅう熱を出して保育園を休みます。オンライン会議をしていると、息子の泣きわめく声やイライラした妻が息子を叱りつける声が筒抜けになり、同僚にも同情される始末。ついにAさんは、「この家で、大人2人が仕事をするのは無理がある……」と思い、住宅情報サイトで新しい家を探し始めました。

しかし、賃貸でより広い家を探すとなると、設備や築年数などの条件を下げるか、現在の家賃+3万円以上は見なければなりません。Aさんは「月々の家賃に15万円以上を支払うくらいなら、いっそ家を買うか」と思い、住宅購入サイトも検索し始めました。

ところが、いざ調べてびっくり。新築・中古を問わず、住宅価格が予想より圧倒的に高かったのです。

じつは今、都心では「バブル再来」といっても過言ではないほど、不動産価格が高騰しています。

不動産価格の動向を表す指標のひとつ、「不動産価格指数」(国土交通省)の最新データによれば、区分マンションの価格は右肩上がりで高騰し続けており、2010年を100とした場合、2022年は178。単純にこの数字をあてはめると、10年前に4000万円で買えた中古マンションが、今は7120万円ということになります。

とくに首都圏の新築マンション価格の上昇は著しく、東京23区における新築マンションの平均価格は、2016年には6629万円だったものが2022年には8449万円(不動産経済研究所、2022年調査)。一般的な収入のサラリーマンには、とても手の届かない価格にまで跳ね上がっているのです。

都心とは一転、住宅余りが深刻化する地方

その一方、地方では住宅余りが深刻化しており、価格が底を打っているような地域もあります。Aさんが探している条件で見ても、500万円以下の物件はゴロゴロ。場所によっては300万円、200万円台……という代物まであります。「こんなに安いんだから、よほど酷いボロ家なのでは?」と思うと、案外そうでもありません。

例えば、群馬県北群馬郡にある戸建ては、JR上越線の駅から車で11分。築30年で土地の広さは180.02平方メートル、建物の延べ床面積は103.27平方メートルと、広々とした4LDKです。築30年ですが室内はリフォーム済み。にもかかわらず、物件価格は150万円と廉価です。

こうした現象の背景には、いわゆる「空き家問題」があります。総務省統計局が5年に一度発表している「住宅・土地統計調査」によると、2018年時点で全国の空き家の数は848万戸。空き家の割合は全住宅の総数の13.6%といわれ、この数は今後もどんどん増える見込みです。



(出所)『平成30年住宅・土地統計調査』(総務省)のデータを基に宝島社が作成

どれだけ安くてもいいから売却したい

つまり、地方の家が安いのは、単純に居住者が減って家が余っているからです。空き家の所有者の中には、「相続で引き継いだものの、遠方に住んでいて管理できない人」や「その家にまったく愛着がない人」もいます。ゴミや残置物だらけで、雑草や樹木が生い茂り、リフォームするにもお金がかかる、そして売ろうと思っても売れない⋯⋯そんな事情で、空き家を持て余し、困っている人が多いのです。


今、私たちはそういった家を引き取って賃貸人を探すという空き家の利活用ビジネスをやっていますが、「どれだけ安くてもいいから売却したい」というニーズは高まるばかりです。

地方で空き家が増えている理由は、主に「核家族化」と「人口減少」だといわれています。その昔、日本ではひとつの戸建てに多世代で同居、大家族で住むのが当たり前でした。それが戦後、核家族化が進んだことで単身世帯が増え、大きな戸建てが不要になっていったのです。また、少子高齢化による人口減少の影響も深刻です。

とくに地方では、若者が進学や就職のために都心部へ移り住んでしまい戻ってこないため、親世帯が亡くなった後、「実家」が空き家化してしまうケースが増えているのです。

東京へ出た子世帯が住宅価格の高騰に苦しむ一方で、地方に残された親世帯家家は空き家になり、売っても二束三文……なんとも極端な二極化が、今この日本で進んでいるのです。

(椙田 拓也)
(カネコツトム)