Microsoftは現地時間2022年7月5日、Windows Insider Programのベータチャネルにてビルド「22621.290」と「22622.290」という2種類のビルド提供を開始した。2種類のビルドをリリースすること自体は珍しいものではなく、Windows 10 Insider Preview時代も新機能の有無で区別した2つのビルドを提供している。

今回のリリースについてMicrosoftは、「機能をオフにした状態のリリース能力を検証するため。また、新機能を有効にした影響から洞察を得て、2つのグループから得るフィードバックや使用データを比較して、機能の信頼性を確認する。場合によってはバグに対処するため機能を無効にする判断を下す」と理由を説明した。

筆者はベータチャネルの進捗はDevチャネルほど追いかけておらず、新機能オフのビルド22621.290だった。もっとも、ビルド22622.290もすべての新機能は享受できない。Microsoftは「大多数のベータチャネルはビルド22622.290へ更新されるが、(我々は)フィードバックを監視し、より多くのインサイダーにプッシュする前に新機能の影響を確認する」としている。なお、時期が来ればWindows Update経由にて、ビルド22621.290環境に対してもビルド22622.290が配信される予定だ。

ベータチャネルのWindows 11 Insider Preview

つまり、「ベータチャネルがブランチ(枝分かれ)したわけではない」ということ。あくまでもWindows 11 バージョン22H2の安定性を高めるための施策である。以前の記事でWindows 11 バージョン22H2の新機能は多くないと述べたが、筆者が期待しているのはパフォーマンスの向上だ。

Microsoftが2021年11月にRedditで行ったAMA(Ask Me Anything)では、「2022年はパフォーマンスが我々の焦点になるだろう。UI要素のレンダリング(フレームワークのロード後)については、画面に10kのボタンを配置するなどのスケーラビリティをテストしている。ほとんどのUI要素はすでにかなり速くレンダリングされている」と発言していた。

ビルド22622.290の新機能。当然だがビルド22621.290では動作せず、未検証である

今回、仮想マシンに可能な範囲でCPUリソースとメモリーを割り当てた状態で、ベータチャネルのWindows 11 Insider Previewを検証している。試用時間も短いので肌感覚の印象だが、パフォーマンス面でWindows 11 バージョン21H2のような「引っかかり」を感じる場面は少ない。

加えて、Devチャネル→ベータチャネルでテストした機能をWindows 11 バージョン21H2にバックポートしている。筆者が気づかないだけで、内部フレームワークを更新している可能性はあるのだが、サポートページの更新内容を確認する限りその気配はない。

DevチャネルのWindows 11 Insider Preview(ビルド25151)。「設定」の「アカウント」に、Microsoftアカウントで契約した各サブスクリプションの情報や支払いリンクが現れる

暑い夏を終えて秋を迎えれば、Windows 11 バージョン22H2がやってくる。そのとき、Windows 11に対する評価は変わるのではないだろうか。

著者 : 阿久津良和 あくつよしかず 1972年生まれのITライター。PC総合誌やDOS/V専門誌、Windows専門誌など、各PC雑誌の編集部員を経たのちに独立。WindowsとLinuxをこよなく愛しつつ、PC関連の著書を多数手がける。近年はBtoCにとどまらず、BtoBソリューションの取材やインタビューが主戦場。休肝日を設けず日々飲み続けてきたが、γ-GTP値が急激に増加し、早急な対応を求められている。 この著者の記事一覧はこちら