修学旅行生の美術鑑賞はNG?破損事件で論争勃発「廃止すればいい」「体験の機会奪わないで」

写真拡大

現在、新潟県十日町市と津南町で開催されている「越後妻有 大地の芸術祭2022」。展示された作品2点が、修学旅行で訪れた新潟市の中学生たちに破損され波紋が広がっている。

報道によると、破損した作品の1点「LOST#6」(作者 クワクボリョウタ氏)は全損し修復が困難な状態とのこと。もう1点の「Wellenwanne LFO」(作者 カールステン・ニコライ氏)は仮修復が完了し、すでに展示が再開されている。

美術館側は警察に被害届を出しているといい、作品を所有する十日町市は新潟市に修理費用などを求めて損害賠償請求する方針だと報じられている。その一方で十日町市は、今後も修学旅行生の受け入れを継続していく意向だという。

BSN新潟放送の記事では作品が破損した経緯について、「生徒が作品を踏んだようだ」と教員から美術館に報告があったと報じている。ただ、実際には故意もしくは過失だったかなど、詳細については公表されていない。

■修学旅行で美術館はNG? SNSで広がる論争

そんななか、SNSでは修学旅行生が美術館などに訪れることの是非について議論が巻き起こっているのだ。

学校行事の一環として生徒たちが文化芸術や産業にふれ、見聞を広める目的で行われる修学旅行。だが今回のような事件が報じられたこともあり、貴重な作品や資料などが展示されている文化施設などへ生徒たちを集団で連れて行くことに否定的な人もいるようで……。一部ではこんな意見が上がっている。

中学生に美術館なんぞを修学旅行の行先にさせるなよ…博物館と違ってスタッフ数も周りの客数も違うし美術館側はデメリットしかないだろ》
《修学旅行なんて廃止すればよい。他人に迷惑をかけてまで学校行事をやる必要はない》
《「中学生を美術館に入れるな」とは言わないが「修学旅行生は入れるな」でいいと思う。中学生に限らず人は半強制行動の集団になると連鎖反応で理性が働かないサルになるから。文化的なものに興味のある子はほっといても自分らで行くだろ》

しかしその一方で、“生徒たちの芸術文化に触れる機会を奪ってはいけない”と思う人もいるようだ。“全ての修学旅行生が作品を壊してしまう生徒とは限らない”との考えから、次のような意見も上がっている。

《「修学旅行生は美術館に入れるな!」という言説はおかしいと思っていて、作品を破壊するような輩は(幼児期を除いて)何歳だろうが関係なくそういったことをやるのであって、あくまで個人の問題。それを<年齢>で括って一律に禁止するのはお門違い》
《一律に修学旅行生を批判するけど、自ら行って騒いだり壊す大人がどれだけいることか…目立つニュースにされた出来事で子ども達の体験の機会が奪われないように願う》
《修学旅行中の美術品破壊の件、少なくともあとに続く学年が被害を被らないよう。修学旅行中止とか縮小とか、そういうことが起こらないことを祈る。あと、そもそも修学旅行生を美術館に入れるなと言うのも、大間違いだから。こういう機会がないと美術品に触れることができない子どもは大勢いる》

■破損した作品の作者は生徒たちのケアを呼びかけ

このような議論が交わされるなか6月9 日に、破損した「LOST#6」の作者であるクワクボ氏がTwitterを更新。今回の事件について、次のように心境を綴っている。

《考えてみれば、誰でも若いうちはちょっとした失敗をするもので、今回結果だけ見れば一線を超えていたかもしれませんが、それでも誰かに怪我を負わせたわけではありません。確かに作品は完全に破壊されましたが、物は物です》

また、作品に用いられている素材は修理や再生が可能だといい、クワクボ氏も作品を修復する意欲があるという。その上で、生徒たちへのケアについてこう呼びかけている。

《それよりも重要なのは、生徒たちが内なる不満や怒りや欲望をさまざまな違った形で表現できるように支えることです。これはアーティストの力ではどうにもならない。大人や学校、友だちや地域の人たちの協力が必要です。少なくとも自分は、修復を通じて、この事件が彼らや彼らのコミュニティ、そして芸術を愛する人々に悪い爪痕を残さないよう、最善を尽くしたいと思います》

さまざまな意見が飛び交った今回の破損事件。受け入れる側も訪れる側も、安心して気持ちよく過ごせるようマナーを守りたいものだ。