【台風19号 高尾山】「強引な登山客が原因で復旧遅れる」「営業しているので来てほしい」 台風19号の被害で揺れる高尾山 - 清水駿貴
※この記事は2019年10月16日にBLOGOSで公開されたものです
各地で甚大な被害をもたらした台風19号。16日現在74人が死亡、11人が不明となり、けが人は224人にのぼった。東京都内の人気登山スポット・高尾山(八王子市、標高599m)も10月の登山ハイシーズンを前に大きな被害を受けた。現在も土砂崩れや倒木の影響で複数のルートが通行止めとなっている高尾山。16日にBLOGOS編集部が訪れると、登山客の姿は戻りつつあった。一方、積もった駐車場の泥をかき出す作業員や、崩落した橋の工事に携わる人、浸水被害をうけた商品を整理する土産店スタッフの姿も。
地元関係者からは「風評被害が怖い」「元気に営業しているからぜひ足を運んでほしい」という声とともに、「強引な登山客が原因で復旧工事が遅れることが心配」という懸念の声も聞こえた。
川が氾濫し、駐車場に積もった泥
八王子市は11~12日にかけて、24時間で409ミリと観測史上最大の大雨を記録。台風通過後の13日は晴れたものの、高尾山のハイキングコースに大量の水が流れ出ている動画や写真がYouTubeやSNSなどにアップされた。ほとんど毎日、高尾山を登っているという八王子市の女性(76)は「13日に訪れた際、川の水が溢れ道路の一部が陥没、京王線高尾山口駅の前は泥だらけだった」と語る。16日になるとほとんど泥は撤去されていたが、駐車場は一部使用できず、泥を運び出す作業は続いていた。
現在もハイキングコースのうち1号路の一部と6号路が土砂崩れや倒木のため通行止めとなっている。
地元飲食店は通行止めで客足半分以下に 「風評被害が怖い」
国土交通省は土砂崩れなどのため、高尾山の麓を通る国道20号の一部を通行止めとしている。通行止め区間で飲食店「いろりの里 高尾山名主 ごん助」を経営する井上貴嗣さんは「10~11月は登山客が増える稼ぎどきなのに、台風の被害は大きい…」と悲鳴をあげる。台風通過時、店の裏手にある祖父の家に向かおうとした井上さんは土砂崩れに遭遇。かかとまで土砂に埋もれたという。井上さんは「真っ黒な土のかたまりがスローモーションのように流れてきて逃げることができなかった。足に絡みついた土砂はまるでセメントのようで、本当に死ぬかと思った」と振り返る。
店に被害はなく現在は通常通り営業しているが、通行止めなどの影響もあり客足は例年の半分以下になったという。井上さんは「現在は予約していたお客様が来てくださっていますが、ネットに動画などがアップされ、高尾山周辺が危ないという風評被害が怖い。元気に営業しているので、ぜひ遊びにきてほしい」と呼びかけている。
「登山は自己責任」と規制守らぬ登山客に地元からは懸念の声
登山客自体も台風通過後は減少したという。地元関係者は「秋はハイキングシーズンで、例年は遠足する児童の姿が増えるが、台風被害のせいで子どもを連れた団体客はほとんど見られない」とため息をつく。減少した客足を嘆く声が起こる一方、通行止めを守らない強引な登山行為を心配する声も上がっている。
同関係者は「今回の台風被害は風よりも雨のほうがひどかった。川沿いの登山道は氾濫した水が原因で土砂崩れが起きたり崩落が起きたりしている。今も片付け作業が続いているうえ、あらたに土砂崩れなどが起きる危険があるため一部のルートは通行止めになっています」と話す。
しかし、中には「登山は自己責任」と通行止めを守らない登山客もいるという。
「重機を入れて倒木の片付けや土砂の運び出し作業をしているところを登山客が通ろうとすると、そのたびに作業を止めないといけない。また、一人が通行止めを守らないと、他の人たちもそれに続くように通行止めルートに入ってしまう。1日も早い復旧のためにルールを守ってもらいたい」と力を込めた。