「大阪がインバウンドで東京を超える日は近い」松井一郎知事と吉村洋文市長が会見 - BLOGOS編集部
※この記事は2019年02月23日にBLOGOSで公開されたものです
松井一郎・大阪府知事と吉村洋文・大阪市長が20日、都内の日本外国特派員協会で記者会見を開き、今後の大阪府の展望について語った。
冒頭で両氏は6月に開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合や2024年度開業を目指す統合型リゾート施設(IR)、2025年開催の大阪・関西万博が大阪経済に飛躍をもたらすと力説した。また、大阪府の成長を確実にするために大阪都構想実現を目指す考えを改めて示した。
記者からの質問には吉村市長が「IR誘致はほぼ100パーセント」「インバウンドで大阪が東京を超える日が確実にくる」と自信を持って返答。両氏が橋下徹前大阪市長の政界復帰に関して「スイッチは入っていない」と否定する場面もあった。
東京五輪後、大阪・関西万博が日本の成長の起爆剤に
松井知事はまず、「大阪府の景気動向指数は全国平均を大きく上回っている。大阪を訪れた外国人観光客数は私が知事になった11年には約160万人だったが、17年には約1100万人と約7倍に増えた」と別々だった府市の成長戦略を一本化したことによる成果を強調した。次に2025年5~11月の185日間、大阪市の人工島「夢洲」で開催される大阪・関西万博に言及。松井知事は「〈いのち輝く未来社会のデザイン〉というメインテーマが博覧会国際事務局(BIE)加盟国に評価され、府市一体となって活動したことが勝因になった」と振り返った。
さらに万博の経済効果が約2兆円とされていることに触れ、「東京五輪・パラリンピック後の日本の成長の起爆剤として期待されている。会場には人工知能(AI)をはじめとする最先端技術を導入する」と展望を語った。
カジノを含むIRの誘致については、吉村市長が「世界最高水準の競争力を備えた国際会議場などのMICE施設やエンターテイメント施設など魅力溢れる場を実現させ、大阪・関西の持続的な成長につなげていく」と話した。
大阪都構想で大阪本来の力を発揮
最後に吉村市長が大阪市を廃止して特別区に再編する大阪都構想について言及。「東京やロンドンは広域機能が一元化され、世界と競争できる組織として作られている。かつて大阪は府市が違う方向で施策を行う二元行政が続き、成長発展を阻害してきた。今は松井知事と僕が人間関係を頼りに同じ方向を向いているが、制度として担保するには府市を再編して広域機能を一元化しなければならない」と必要性を語った。G20、大阪・関西万博、IR誘致の3つのビッグイベント成功には「府市一体で取り組まなければならない。大阪本来の力を発揮するために、大阪都構想の実現が大きな課題であり目標」と力を込めた。
質疑応答では各国の記者から「万博の予算が高いのではないか」「IRは現実的なのか」など鋭い質問が飛んだが、両氏は余裕の表情。「関西州構想」や「橋下前大阪市長の政界復帰」に関しても持論を展開した。
-万博の予算が非常に高いとされているがどう考えているか。また万博会場の跡地はどう使うのか。
吉村市長:万博予算である1250億円については国と地元、経済界で3分の1ずつ負担して進めていく。コスト面に関しては厳しく見ていきながらやることで大きな問題は生じないと思う。跡地に関しては万博開催後にはIRが完成している。夢洲は人が住まない人工島でありながら都心に近いという非常に貴重なエリア。その特性をいかして夢洲を世界的なエンターテイメントの拠点にしたい。先日、新聞社の取材で公道F1レースを誘致したいという話をしたが、それもそのうちの一つ。大阪を世界中の人が集まるエリアにしていきたい。
-万博という事業を前に大阪府は1つの船に2人の船長がいる状態になっている。統合について意見を伺いたい。
松井知事:世界の成長都市を見ても、広域行政が二元化しているなんてありえない。大阪府はニューヨークとほぼ同じ人口だが、ど真ん中が大阪市。真ん中を外した状態で成長戦略を作っても全体の成長につながらないのは明らか。今は全体の広域行政を人間関係で作りあげているが、人間関係というのは脆弱なもの。制度として成り立たせるべきだと我々は考えている。
吉村市長:これからは国の枠を飛び越えて、都市が選ばれる時代に突入していく。そのなかで都市が国を引っ張るというのが重要。大阪も日本を引っ張る都市にしていきたい。大阪・関西エリアは歴史も深く、持っている力は大きい。橋下さん、松井さんの時代に国の法律が新たにできて府と市がひとつになることができるようになった。あとは大阪において民主的な手続きをふめば実現する。今はその最終段階に入っているところだ。
-「大阪・関西」万博という名前の通り、大阪から日本を元気にするのは大阪だけでなく、京都や神戸などと協力して関西として盛り上げることも大事だと思う。大阪都構想の先に、例えば関西州など関西をひとつにするという考えがあるのか。
松井知事:海外から見ると不思議かもしれないが、日本は明治政府ができて以降、行政制度が変わっていない。都道府県制度は今の時代にはふさわしくない古い形を維持したままだ。この形を大きく変えるのが道州制というもの。道州制に関しては憲法を変えなければ実現できない。我々は道州制を望んでいるが、現段階での実現は非常に困難。道州制という大きなものに期待するより、今自分たちでできることとして大阪府市の再編を実現しようと思っている。
吉村市長:日本の目指すべきは道州制だ。都道府県制度というのは移動手段が馬だった時に作られたものが続いている。道州制になれば現在の知事という仕事がなくなる。そしてそれに付随する議会がなくなる。すなわち権力との闘争だが、これを正面からできていないし、これからもできる見込みは極めて少ないと思う。大阪ではあきらかに成長の阻害になっている以上、我々は大阪都構想というものに挑戦したい。都構想ができなければ道州制はできない。
-著しくインバウンドが増加しているが、東京を超えることになると思うか。
吉村市長:大阪が東京を超える日は近い将来、確実にやってくる。大阪は府市で観光局をたちあげて、協力して大阪全体の観光をアピールしている。また、大阪は都市の経済性がありながら京都・奈良など非常に歴史的な観光遺産が近隣に多い。つまり東京圏にはない日本の魅力が凝縮しているのが関西エリアだ。
-デパートや薬局に外国人観光客が密集しているなど、大阪府内の店に日本人客から外国人観光客増加への苦情がきているという話を聞いた。そういったクレームについてはどう思うか。
吉村市長:急激に外国人観光客が増えて戸惑ってる人が多いのも事実。しかし、もともと商売の街だけあって大阪の人は英語を勉強したりして、順応している。海外の人と大阪の人の摩擦についてはできるだけ生じないように府市で対策をしているところ。
-大阪でのタトゥーの扱いはどうか。日本を訪れる外国人の大半が「温泉に入りたい」と希望しているが、タトゥーのため入浴できないという問題がある。
松井知事:民間人であればなんら問題ない。ただ、公共の温泉などは管理者のほうで刺青を入れた人は入れないとルールを定めていることが多い。日本では昔から刺青は反社会勢力のイメージがある。そういう人が刺青をみせて浴場に入ると一般の方が浴場にこなくなる。そのため今は刺青やタトゥーが入っている人たちはなかなか温泉施設には入れないということになっている。
-カジノを含めたIRの24年度までの開業はどれくらい現実的か。課題面に懸念をもっている国民もいる。
吉村市長: IRが日本にできるのはほぼ間違いない。国は三ヶ所を選定するが、大阪が選ばれるために我々はこれまで様々な行動を起こしてきた。国民の皆さんが心配される課題面、依存症対策など様々な問題にも正面から取り組んできた。そのための組織も作ってきたし、これからも取り組み続けていく。カジノ、IRオペレーター、大手の事業者とも現実の話し合いをすでにしている。だから、大阪にIRを開業するというのは、僕と知事が大阪で活動している限り、100パーセントに近い確率で実現すると思う。
-橋下徹氏の本やテレビでの最近の発言をみると、政治のスイッチが再び入ったように見えるがどう見ているか。
松井知事:橋下さんが日本のさまざまな現象に対して高い興味と関心をもっているのは事実。ただ、彼自身のスイッチが入ったとは僕自身は思ってない。たえず僕や吉村市長のスイッチを入れる係をしてくれている。日本の政治家にはスイッチが入ってない人が多すぎる。議員はたくさんいるがその中でスイッチが入っている人は一握りだ。
吉村市長:知事と同じく橋下さんのスイッチが入っているとは思っていない。そばで見ていて思うが、松井知事と橋下さんとの間には強烈な関係がある。橋下さんのスイッチを入れるためには松井知事をいじめ倒さないといけない。
-昨年、大阪市は61年にわたるサンフランシスコ市との姉妹都市提携を解消した。慰安婦像が作られ、それに抗議するというのが理由。数年前からそういった像に抗議をしていると思うが、世界中で像が作られている現状がある。それを止めるための戦略というのはうまくいっているのか、もしくは違う戦略が必要なのか。
吉村市長:本格的に止めるためには外交権のある外務省に本気になってもらわなければならない。61年続いた重要な関係を解消した意味は日本国政府も認識したと思う。以降、日本政府においてはこの問題について外交として正面から取り組む姿勢に変化したと思う。日本政府は過去の歴史、事実、そして日本の立場を世界に明確に発信すべきだ。その上で戦場における女性と性の問題については、世界共通の課題として取り組むべきだと思う。