不妊の約5割が男性に原因あり スマホで気軽な精子チェックを - 田野幸伸

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※この記事は2018年10月11日にBLOGOSで公開されたものです

9月8日・9日に開催された「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2018」。

前回に引き続き、タレントで元AV女優の麻美ゆま氏、産婦人科医の宋美玄(そんみひょん)氏、泌尿器科専門医の福元和彦氏、株式会社TENGAヘルスケア取締役の佐藤雅信氏、国際基督教大学・公共政策専攻の福田和子氏によるセッション「私たちは性のはなしを知らない」をレポートする。

不妊の原因 約5割が男性側に

福田:不妊症というと女性のイメージがまだまだ強いと思うんですけれども、実は男性側も不妊の原因を持っていたりすることがあるんですよね。

福元:今は晩婚化という影響もあるんでしょうけれども、男性にもその影響が大きく来ています。以前であれば不妊症は産婦人科で治療しましょうという感じだったんですが、今、男性が原因であるものが48%といわれています。

その一つの原因が精子の運動率の低下です。年齢を重ねるとかなり「精子の質」が落ちてくる。それを検査するのは精液検査なのですが、男のプライドがあって精液検査をするのに結構、抵抗があるんですよ。自分の種があるかどうかというところもありますし、検査は産婦人科でやらないといけない。それも一つのハードルです。女性のいるクリニックで精液検査をするのはちょっと恥ずかしさもあるので、なかなか進んでいないという現状があります。

そういうところで、最近では簡易型の精液検査を自宅でできるというものをTENGAさんもつくっているんですね。

佐藤:なかなか自分の精子を見る機会はないと思うんですけれども、病院に行くのはハードルが高いですし、自分も昔、顕微鏡を買って自分で見てみようと思ったことがあったんですけれども、なかなか難しいんですね。結局、うまく見えずに断念してしまいました。

でも、弊社から出ているTENGAメンズルーペという製品を使えばスマホで精子を簡単に観察することができます。

使い方としては精液を出して、スマホのフロントカメラのところにレンズを貼って、そこに精液を垂らす。そうすると、自分の精子がスマホの画面上で見られるというものです。画面上で見ながら、それを写真に撮ったり、動画で録画したりして自分の息子、おたまじゃくしたちを観察するということが可能になります。

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宋 :不妊治療を長くされている方でも、夫がどうしても精液検査を受けてくれないと。例えば、私たちなんかは排卵していないと分かっても、「私は女じゃなかったんだ」とは思わないと思うんですけれども、思う人もいるかもしれないけれども、男性にとって勃起とか、射精とか、精子がいるかというのはものすごくアイデンティティを占めてる感じですか?

佐藤:僕はすごく思います。それがあるから精液検査が進んでいないんだと思います。いろいろなところで、やりましょう、やりましょうと言ってメンズルーペを配るんですけれども、実際にそのデータを持ってくる人はほとんどいないんです。

宋 :そもそも勃起や射精ができなくて、妊活自体が成立していないみたいな人も多いと思うんですけれども、そういう方も診察されますか?

福元:そういう方が今増えているんです。男性不妊症の8割が精子の運動率が低下しているということなのですが、あとの15%ぐらいは勃起障害や射精障害というものになります。勃起障害はバイアグラなどのお薬がありますので、それでなんとか対応できるんですが、射精障害に対しては、今TENGAさんといろいろ取り組んでいます。

女でイケない「膣内射精障害」

佐藤:セックスで射精ができなくなってしまうということが、マスターベーションによって起こることがあるということについてご説明します。

マスターベーションでは射精ができるのにセックスで射精ができないということを膣内射精障害といいます。膣内射精障害という言葉を皆さんはあまり聞いたことがないかと思うんですけれども、「おれ、セックスでイケないんだよね、オナニーだったらイケるんだけれど」とか、女性で「私、セックスでいけないの」とかっていう言葉を聞いたことがあるという方は、もしかしたらこの中にもいるのではないかと思います。

福元:「おれは女でイッたことはねえよ」って人がたまにいます。それがこれなのです。

佐藤:最近の調査で分かったのですが、潜在患者数が270万人いるといわれています。これは成人男性の20人に1人、約5%いるわけですね。

宋 :これは女性の側から言わせてもらうと、しんどいんですよね。

佐藤:本当にしんどいと思います。

宋 :中には長持ちすることを「相手をヒーヒー言わせてやるぜ」みたいな感じで思ってる人もいるかもしれないけれども、長すぎるセックスって結構、迷惑というか。

福元:限度がありますから。

麻美:私も結構、相談とかで、「早漏の治療に行きたい」とか、「どうやったら早漏って改善できるんですか」とか、聞かれることがあるんですけれども、それよりもよっぽど治療とか、こういう射精障害に目を向けたほうがいいのではないかと個人的には思います。

宋 :女の子は、私の体が気持ち良くないのかなとか思ったりしちゃうんですね。

麻美:思いますね。

宋 :なので、270万人のパートナーも救ってほしいです。

佐藤:そうですね。女性まで含めると500万人以上が悩んでいる可能性があるということですので、なかなか大きな数字ではないかと思います。この膣内射精障害の問題点を四つ、ご紹介します。

一つ目が、性的な自信を失ってしまって性行動や、恋愛に対して消極的になってしまうことです。これは男性もですけれども、女性も自分に原因があるのではないかと思ってしまったりして、セックスに対して消極的になってしまったりするということもあると思います。

二つ目は、先ほど宋先生からもありましたけれども、女性の心身に負担が掛かる。体だけではなくて、心の問題です。自分に原因があるのではないかといって思い悩んでしまうということもあります。

三つ目が、パートナーとの関係が悪化してしまうということです。セックスがうまくいかないのでパートナーとの関係が悪化してしまって、結局、セックスレスの引き金になったり、最悪の場合、離婚にまで発展してしまうというケースも出てきました。

四つ目に、先ほどもありましたけれども、不妊の原因の一つになってしまうということです。セックスで射精ができないわけですから、自然妊娠ができないということです。

膣内射精障害の7割「間違ったオナニーが原因」

佐藤:この原因が何かというと、不適切なマスターベーションが原因の7割だといわれています。不適切なマスターベーションというのはいろいろなバリエーションがあるんですが、主にこの三つです。

強すぎるグリップというのは、ペニスをギューッと強く握らないと射精ができない。

弊社で調べてみたところ、どれぐらいの強さかというと、手首を握ったときに、少し血が止まるというか、それぐらいの強さといわれています。もちろん膣というのはそんなに強く締め付けることはできないので、セックスで射精ができなくなってしまうということがあります。

二つ目が特定の体位での射精。これは俗にいう「足ピン」というものなのですけれども、足をピーンと伸ばしてないと射精ができないという方も増えています。

足をピンと伸ばしてないと射精ができないということは、例えば、正常位ですとか、バックといった体位、その体位で足ピンができないと射精ができなくなってしまう。騎乗位だったら足をピーンと伸ばすこともできるかもしれないんですけれども、そうもいかないということで問題になる。

宋 :騎乗位で女性が相手をイカせるほど動けというのも、ちょっとAVの誤解ですよね。

麻美:そうですね。本当にすいません。

福元:これには原因があって、精液をいっぱい出すことがいいという、AVの影響なのかもしれませんけど、射精するときに男は力を振り絞って射精する。そのときに足に力を入れて出すという癖が付いてしまっていることが原因だと思われます。

佐藤:最後のプレス法というのは、いわゆる「床オナ」。床に押し付けたり、こすりつけたり、床といっても布団とかそういったものに押し付けたり。バリエーションとしては壁オナ、角オナという、テーブルの角に押し付けたりしないと射精することができないものもあります。これも膣内で射精ができなくなる原因になります。

宋 :これが日本人に多いんですよね。

福元:日本人に多いですね。なんでですか。

宋 :畳の文化だからだと思うんですけれども。

佐藤:そうではないかと思います。

宋 :畳って気持ちいいらしいです。

福元:でも、プレス法というのは先っぽにオナホールを着けている方が多いんですよ。結構、日本はオナホールが昔からあるので、そういうもので増えているというのもあると思います。

宋 :治るんですか、これは?

福元:結局、この膣内射精障害というのは、もちろん体位に問題がありますけれども、一番は「強い刺激でなければ射精できない」ことが原因なのです。なので今、TENGAヘルスケアさんが昨年の11月に発売したメンズトレーニングカップを使って直すということにしています。

このメンズトレーニングカップは1番から5番まであって、非常に強い刺激から、一番弱い刺激という5段階で作られています。これでその方が射精できるところを見つけていただいて、そこからだんだんソフトな刺激でリハビリテーションをする。弱い刺激の5番で射精できるようになったら、膣でトライしてみる。刺激漸減法というのですが、こういう形で治療することが今の第一選択肢となっています。

膣内射精障害はさきほども言ったように、不妊の原因となるんです。ただし、不妊というのは今、かなり技術が発達してきて、ある程度のお金を払えば、助成金もありますし、妊娠することができるんですね。

だから、そこまで頑張って治療したくない、メンズトレーニングカップは1個1,000円するので、1,000円も払ってわざわざマスターベーションをせずに、今までやってきた壁オナしたいという人がほとんどなのです。

治療しないと夫婦生活で今後、60代、70代になったときにスキンシップをとれないような夫婦になってしまうから、なんとか治療をしましょうということをしています。

宋 :私はそれにちょっと反対です。もちろん、人工授精とか2、3万円あったらできるし、確かに子どもができたらしばらくセックスレスで、もうモチベーションがないのは分かるんですけれども、その勃起とか射精とかこそがセックスだと思ってると、逆に高齢者になったときにセックスができなくなるんですよ。

男性側が勃起や射精にこだわりすぎるあまり、喪失感が大きいんです。一生、立ったり、イッたりできるできるわけではないので、「立たない、イかない、それもセックス」と思ってるほうが長く持つと思うんですよ。

福元:もちろん僕はそれを一番に言ってます。スキンシップをとることは大事だから。ただ、そこで治療に入って、子どもを産んじゃって、全くそこからしなくなるんですよね。だから、そうじゃなくて、一回治療を挟むことで、今後もスキンシップをとってくれるきっかけになればと思います。

宋 :治療自体はすごくいいと思います。

ストップ「強グリップ・足ピン・床オナ」

福元:ここに書いてある、「ストップ、強グリップ、足ピン、床オナ」これを皆さんツイートしてください。

麻美:今日、控室に入った途端に、「床オナは絶対に駄目だよね」ということをすごく話していたので、ぜひ皆さん、ハッシュタグで「ストップ、床オナ」とか。

宋 :床オナ禁止。

麻美:本当に障がいになっちゃいますから、そこは気を付けて、広まっていったらいいと思います。

福元:もし周りにそういう方がいる聞いた場合は、専門の先生がいますので、それを探して相談していただく。あとは、女性は絶対に自分を責めないで、「おまえのせいだよ」というぐらいの強い心が女性には欲しいと僕は思いますので、よろしくお願いします。

女性もどんどんマスターベーションを

福田:最近は女性も盛り上がってきて、女性も手に取りやすいマスターベーション用のグッズとか、流行っていると思うんですけれども、どうですか、宋先生。

宋 :マスターベーションで男性の話が出ましたけれども、女性もかなりの人がマスターベーションをしてるんですよ。あまり女同士でそういう話をしないと思うんですけれども。

男性は中学生ぐらいになると、今はしないかもしれないけれども、エロ本の回し読みとか、AV談義とかでマスターベーションの話を男子生徒の間で共有したりするんですが、女子生徒はそういう共有をせずに、勝手に始めちゃったりするんです。みんなに感化されてマスターベーションを始めるという機会が持ちにくいので、しないまま大人になる方もいらっしゃるんです。

それ自体は悪くはないんですけれども、私のとこに相談に来られる、セックスが痛いとか、性欲がわかないとか、気持ち良くないという方の中には、マスターベーションを全くしたことがないという人もいる。

マスターベーションは基本、AVとか、おかずが必要です。なので、マスターベーションをするということは、自分の性欲のスイッチを入れるトレーニングにも実はなっているんですよ。

例えば、長くパートナーと付き合って、「今さらおまえに欲情するかよ」みたいな関係でもセックスをします。そういうときに、脳内おかずや自分の性欲のスイッチを入れる材料を持っていない人、自分の性的嗜好、性の趣味を掘り下げていない人って、すごくその後の性生活が不利というか、持ちにくいんです。

麻美:マスターベーションをすることによって、例えば、自分がどこのスイッチが入るとか、このポイントが自分は好きなんだってことが男女問わず分かるってこと、発見できるってことですよね。

宋 :発見できる。男子ってみんな、自分のAVのコレクションって多数にあるジャンルの中から、「おれはこればかり見る」とか、そんな感じですよね?

福元:もちろんそういうのはあります。

宋 :女子も掘り下げている人は基本的にそうなのですけれども、「私は自分が何でムラッと来るか全く分からない」と相談されたときには、昔だと「レディコミを買って自分で見つけてください」とか言ったりしてきました。

そういう性的空想のトレーニングになったりとか、感じやすく、いきやすく体を学習させるために、女性のマスターベーションもぜひぜひお薦めしたいと思います。