※この記事は2018年10月11日にBLOGOSで公開されたものです

残暑も過ぎ、滝のような汗をかかなくて済む季節がやってきました。しかし、クールビズの終わりとともに、温度調節が難しくなるのが秋です。急いで電車に乗り込んだ時、外出先から戻った時など、『私、汗臭いかも…』と不安になることはありませんか?

自分の臭いならまだしも、上司が臭っていたときはさらに大変。『課長、なんかクサイです』とは言えませんよね…。



株式会社マンダムが2017年5月に25~49歳の働く男女1,028名に対して行った「ビジネスシーンにおいて、他人のニオイ(体臭)について『指摘しにくい』と思いますか?」という調査によると、男女共に9割以上の人が「指摘しにくい」と回答しています。



さらに、「職場の同僚や周囲の人の身だしなみで『どうにかしてほしいこと』はなんですか?」というアンケートによると、「体臭」が全体の約7割を占める結果に。男女共に周囲のニオイに悩まされる現状が浮かび上がってきました。

そこで、ニオイ対策の商品を多く発売している、「株式会社マンダム」広報の萩原さん・五嶋さん(以下敬称略)にニオイ対策のコツについて話を伺いました。

五嶋:日本人のニオイで、一番感じやすいのは汗臭だと思います。一番汗臭が発される箇所は脇で、個人差はありますが、皆さんが自分で思っている以上に臭ってしまっています。



弊社が2006年に行った「日本人男性の脇臭のニオイの強さ」についてのアンケートでは、電車などで隣に立った人に対し『臭いなこの人…』と思われる人は54%、すれ違った際に『今の人臭い!』と思われる人は33%という結果となり、ニオイに悩む周囲の人は多いという結果が出ています。

加齢臭は実はそんなに臭くない?鼻の奥に留まるようなニオイの正体は

よく、中高年男性の体臭として挙げられる"加齢臭"。しかし、"鼻の奥に留まるようなニオイ"は加齢臭とは異なるのだとか。

萩原:満員電車などでの、鼻に残る独特なニオイの発臭源は、まだ加齢臭がほとんど出ていないミドル世代(30代~40代)から出ている可能性が高いんです。特に汗のニオイも混ざる、働き盛りの30代・40代が一番においやすいです。加齢臭は40代から徐々に発生し始め、そのまま年齢と共に増えていき、本格化するのは50代以降です。

加齢臭の臭いは例えると『草っぽい』ニオイ。ニオイ成分である『2-ノネナール』を嗅がれた方の多くが『おじいちゃんおばあちゃんの家のニオイがする!』と言います。恐れられている加齢臭ですが、実はそんなにイヤなニオイではないのです。

ミドル世代から多く発されるニオイは、"ミドル脂臭"とマンダムでは名付けたそう。加齢臭と共に気になるニオイですが、特に深刻なのはこのミドル脂臭だといいます。

五嶋:まず、ミドル脂臭は早い人では20代後半から発生され始め、40代にピークを迎えます。加えて汗もかきますので、40代は汗臭・ミドル脂臭・加齢臭の3つの体臭が混在するんです。

このミドル脂臭、男性よりも女性の方が感じやすいそうです。

萩原:ある調査でミドル脂臭を他のニオイに例えてもらったところ、『使い古した油・居酒屋の換気扇・洗っていない犬』といった回答がありました。さらに、ニオイのキツさだけではなく、ミドル脂臭の成分(ジアセチル)はお酢の主成分である酢酸120倍のニオイが拡散しやすいと言われており、微量でもにおいやすいのが特徴なんです。

ニオイが出ている箇所を把握して適切なケアを

臭いの発生源としてよく挙げられる『耳の裏』ですが、実は耳の裏から臭うというのは都市伝説的に広まっているだけなんだとか。実は耳の後ろを洗って清潔にしていても臭いへの十分な対策にはならないとプロフェッショナルは話す。

五嶋:ミドル脂臭は後頭部周辺から、加齢臭は胸と背中のあたりから出るので、特にミドルについては、自分のニオイに気づきにくい理由の一つにもなっています。"ミドル脂臭・加齢臭"はニオイが発生する場所が違うという点もケアをする上でやっかいな所です。

では、そのニオイをどのように消し去ったらいいのでしょうか?

五嶋:体臭を抑えることは可能ですが、全く臭わないようにすることは難しいです。個人差はありますが、どの男性も確実に「ミドル脂臭」「加齢臭」と付き合っていくことになります。どんなケアをしている人でも、自分は大丈夫だと思わず、『自分も臭っているかも』と意識してケアすることが大切です。

消すことはできない――。

五嶋:体臭の発生を抑えることで問題に対処可能なので、過度に心配しなくて大丈夫です。脇汗臭を抑える方法として効果的なのは、スティックやロールオンタイプの制汗剤。お風呂から上がって身体を拭き終わった瞬間に塗るのがベストです。

萩原:汗臭は決して男性だけの問題ではなく、女性もケアをすべき匂いです。ついつい香水の香りでごまかしてしまいがちですが、お風呂上がりからケアすべきなんです。

五嶋:身体の胸と背中のあたりから発する"加齢臭対策"にはボディシートが有効です。加齢臭の原因は"皮脂の酸化"であり、消臭・防臭作用を持つボディソープやシートによる皮脂の拭き取りで対処できます。なので、こまめにボディシートでふきとり、体を洗う時も背中の洗い残しには注意してください。

萩原:加齢臭は胸と背中部分から広範囲で発されているため、なかなか洗えないジャケットなどに臭いが蓄積しがちです。身体だけではなく、衣類用消臭スプレーの併用をお勧めします。

最後に、後頭部周辺から臭いを発する"ミドル脂臭"の対策は、「きちんと頭を洗うこと」が大事だといいます。しかし、毎日シャンプーを欠かさない人が大半だと思うのですが…。

五嶋:40代の皮脂は若い人のようにサラサラではなく、どろっとした皮脂はシャンプーでも落としにくく、また皮脂にニオイが蓄積するので、若い頃と変わらない洗い方ではニオイを防ぐことができない可能性があるんです。

具体的には、後頭部・頭頂部を入念にスミからスミまで塗りつぶすように洗い、二度洗いをして最低でも3分はシャンプーをしてください。ミドル脂臭の原因は"菌と汗"なので、シャンプーは菌の発生を抑える殺菌作用のあるものがおすすめです。

また、萩原さんは日本人特有の「危険なケア」があると話します。

萩原:日本人の香水のつけ方は暴力的だと言われます。欧米だと、自分の体臭に合う香水を選び、自分の香りをプロデュースする、という文化が根付いています。これは、幼い頃から教育がなされているから良いのですが、日本にはそういった文化がありません。『つけとけばいんでしょ』と、自分に合っていない香水をつけ、余計に嫌な臭いになってしまうことがあります。

そもそも、様々な要因から日本人は他人種にくらべて体臭が弱く、無臭を好む傾向があり、ニオイに敏感です。また、体臭を香りでカバーしようとすると、どうしても香り立ちがきつくなりますよね。自分は大丈夫だと思わないこと。それが一番大切で、どの世代もニオイの発生源がどこかを理解し、正しく対処をする意識を持つことが大切です。

【取材:清水かれん】