隠れオタクに届け…話題の「聖書ラノベ新人賞」、元マンガ家志望の社長が語るアツい思い - BLOGOS編集部
※この記事は2018年09月17日にBLOGOSで公開されたものです
1946年設立の歴史ある出版社「キリスト新聞社」が開催する「聖書ラノベ新人賞」が注目を集めている。今回で2回目となる聖書ラノベ新人賞だが、募集要項には「キリスト教を批判しても良い」「サタンを主人公にしても良い」などと記載し、SNSを中心に大きな話題を巻き起こした。主催する同社の松谷信司社長に、この賞の狙いを聞いた。【取材:BLOGOS編集部 島村優】
中二病の人たちは聖書が大好き
──まず「聖書ラノベ新人賞」を立ち上げるまでの経緯を教えてください。
もともと弊社は、キリスト教を若い世代にも伝えるためにキリスト教のカードゲーム(※)を作ったり、教派擬人化マンガ「ピューリたん」といった4コマ漫画を連載したりと、色々な取り組みをしている会社でした。ただライトノベルは手をつけてなかったので、いつかやりたいとは考えていたんですね。
※「バイブルハンター」「ルターの宗教大改革」など計7作を発売
そんな時、何かパンチのある新人賞をやりたいという相談を外部から持ちかけられて企画したのが第1回「聖書ラノベ新人賞」です。この時は140作以上の応募があって、大賞作品はキリスト新聞で連載中です。
──聖書とライトノベルの組み合わせって面白いですね
中二病の人って聖書大好きですよね。聖書をモチーフにしたライトノベルもたくさんあって、十字架とかシスター、天使、悪魔、そういったネタが登場する作品は数え切れないほどあります。
キリスト教を面白く、わかりやすく若い世代に伝えたいと思っていたので、これこそうちでやるべきじゃないかなと。
──「キリストを批判しても良い」「サタンを主人公にして良い」「ブッダを出しても良い」といった文言も話題になっています。キリストをモチーフにした二次創作なんかも…
なんでもOKです、もちろん大切なのはラノベとしての面白さですけど。
私が思うのは同人誌や二次創作で面白いものって、まず原作が面白くて、その上で原作の魅力、それに対する愛情をうまく表現してるものですよね。悪意があるものは話が別ですけど、リスペクトがあれば愛情が行きすぎた二次創作でも、それは悪く言えませんよ。
目的は聖書を伝えるため、批判は気にしない
──キリスト教の世界から怒られることはないんですか?
カードゲームを発売したときは「キリスト教をゲームにすること自体がおかしい」「不謹慎だ」「聖書的・信仰的ではない」といった批判を多く受けました。でも、そこを突破しないと私たちがキリスト教や聖書の魅力を本当に伝えたい相手には伝えられないですよね。
──聖書そのものは世界で一番読まれている本ですよね
そうです。それほどメジャーな聖書の面白さが伝わっていないのは、私たちのやり方にも問題があるんじゃないか。「信仰の書(聖典)だから、面白半分で触れちゃいけない」って言ってるうちは、なかなか読んでもらえないですよ。
──なるほど。お話を聞いていて、松谷さんは二次創作にもかなり理解があるように思えました
私は世代的にも「週刊少年ジャンプ」世代で、昔は漫画家になりたかったんですよ。ただ、うちはゲームを買ってもらえない典型的なクリスチャンの家庭で、ドラクエがやりたくて友達の家に入り浸っていたタイプなんです。
──そうだったんですね。本当はゲームがやりたかったと
今でも、クリスチャンの中には隠れオタクが多いですよ。教会に通いながらこっそり同人活動をしている人も。今回の新人賞はそういう人にとっても何かの励ましになったら良いなと思っています。
「清く正しく」と思われがちなキリスト教ですが、伝えるための手段としてマンガやゲームがあってもいいはずだと。小さい頃にこういうものがあったら、私ももっと過ごしやすかったと思います。
今は、私がたまたま社長になってしまったので、思い切り色々とチャレンジしていきたいなと。これからもキリスト教や聖書の隠れた魅力を伝えられるように、仕掛けていきますよ。