<ISPS HANDA 欧州・日本、とりあえず今年は日本トーナメント! 2日目◇22日◇PGM石岡ゴルフクラブ(茨城県)◇7071ヤード・パー71>
初日は1アンダー・90位タイと出遅れた19歳の細野勇策が、9バーディ・ボギーなしの本日ベストスコアとなる「62」をマークして一気に上位に浮上してきた。本人にとって「62」は自己ベストスコア。国内男子ツアーでは珍しいレフティのゴルファーで、ギャラリーの視線を集めている。
細野は山口県出身で2003年1月9日生まれ。高校2年時に「トントン拍子に」ファイナルQTまで進んだが、4日間の予選で敗退。それでも下部のABEMAツアーに出られたが、プロ転向はしないでその資格を破棄した。高校3年時に「またQT頑張ろうと思っていたら、コロナで特別QTになってファーストで落ちて、去年もサードで落ちて」と出場権を手にすることはできなかったが、「高校のどこかで、という気持ちが強かった」とプロ転向。昨年も今年も予選会からレギュラーツアー本戦に挑戦する生活を送っている。
前週の「関西オープン」も予選競技を突破して本戦に出場。それがプロ転向後初めてのレギュラーツアー出場となった。今大会も3日間の予選を1位で突破して出場を決めた。「先週は予選落ちしたので、とりあえず予選を通らないとな、と思っていました。ただスコアの目標を決めるとブレーキがかかっちゃうので、本当に流れがいいときはいけるところまでいこうというのは、ずっと意識はしていました」と、前半は4つ、後半は5つのバーディを並べた。
父親の誠一さんは高校まで野球少年。その影響で細野の兄も高校までずっと野球をやっていた。しかし細野は生まれてすぐに心臓の病気が見つかり、生後2カ月で手術。「父親が遊びでゴルフをしていたこともあって、あんまり心拍数を上げないスポーツということで、ゴルフをやるようになりました」と小学1年生でクラブを握った。コーチはいまでも「競技ゴルフにでたことがない」という誠一さんで、「ほぼ毎日のように付きっきりで見てくれた」。
誠一さんの熱心な指導もあって、アマチュア時代は小学校6年時の「全国小学生ゴルフ大会 男子の部」で優勝。高校1年時には「全日本アマチュアゴルファーズ選手権」で優勝している。本人は「日本ジュニアでも特に良い成績を残していないです。小学校6年生の全国大会優勝とか過去にすがるしかない」と恥ずかしそうに笑う。
もともと左利きの細野はゴルフを始めた頃から左打ち。レフティならではの苦労もあった。「やっぱりジュニア用のクラブがありませんでした。小学校4年生くらいまでは左のレディース用のクラブを切って使っていました」。それでも小学校の高学年になる頃には、男性用のレフティのクラブを使えるようになった。練習場では「左打席がほぼ右端なので、フェードの練習をするとすぐネットに当たりますね」とハンデはあった。今の持ち球は「ストレート」で、小学生の頃から遊びで球を曲げていたので、「ドローもカットも得意不得意はない。コースに合わせて打てていける」と話す。
ゴルフの上級者でもない誠一さんは、いったいどんな指導をレフティの細野に行ったのだろうか。「ずっと父親がPGAの動画を見ていて、それと自分のスイングを見ながら、ああじゃない、こうじゃないと。自分は言われた通り、信用してやるだけでした」と父との二人三脚でスイングを構築していった。
そんな細野のアイドルは、メジャー2勝を挙げている日系米国人のコリン・モリカワ。「好きなのでずっと動画を見ていますね。何かカッコイイですよね(笑)。スイングが安定している。自分はドライバーの飛距離が290ヤードちょっと。海外に行ったら飛ぶ方ではないので、(モリカワも)飛距離で人より劣っても、そこから精度で補っている選手だと思う。自分もそういう選手になりたい」とモリカワにあこがれを持つ。
左打ちのフィル・ミケルソン(米国)は? と聞かれると、「左打ちの選手はほぼ見たことがないです(笑)。自分もそうなんですけど、なんかみなさん、特徴がすごいじゃないですか。なのであまり参考にならないかな」。動画を見るのはもっぱら右打ちの選手のようだ。
「PGAには行きたいです」と、19歳は曇りのないまなざしで海の向こうを見ている。「まずは日本でシードを獲って優勝して、松山英樹選手のように世界でやっていける選手になれればいいかなと思います」。バーディが入り乱れる今大会で、レフティが週末にどこまで伸ばしていけるか注目したい。(文・下村耕平)
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