明るい表情からも調整の充実がうかがえる(撮影:福田文平)

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2013年プロテスト合格。15年に初のツアーフル参戦で賞金ランク40位でシード権獲得。16年には「富士通レディース」で初優勝を遂げ、賞金ランキング15位となった松森彩夏。順調にトッププレーヤへの階段を上っているかに見えたが、翌17年賞金ランキングを66位に落としシード権を逃すと、18年は89位、19年105位、20-21年98位と不調の波を乗り越えることができなかった。ツアー1勝で松森はツアーから姿を消してしまうのかと思われたが、辻村明志コーチの指導で息を吹き返している。
22年シーズンはQT37位の成績でツアーに参戦。前半戦はほぼほぼ試合に出場できる。「今シーズンはもちろんシード権を取れる成績で終わりたいです。2勝目を挙げることも目標。でもその前に、常に安定した感じを出すことが大事。しっかり予選を通過してトップ20の成績に入ることを念頭に置いています。それを続けていれば、結果はついてくると思います」と、松森。
スイングは軸が傾いてしまうクセがあるという。疲れとか飛ばしたいとか、球を上げたいと思うと、軸が右に傾いてしまうのだ。「バックスイングの上げ方をチェックし、下ろすときにもボールを押し込むように意識しています」という松森だが、辻村の指導でヘソでフルスイングが身に付き、低く長く押すインパクトで以前より力強いショットが打てるようになった。
契約するテーラーメイドの22年新モデルも感触がいい。カーボンを戦略的に採用してエネルギー伝達を最適化した〈ステルス〉だ。「めちゃくちゃいいです。これまでに何回もいろんなニューモデルをテストしてきましたが、今回の〈ステルス〉は一番スッと私に入ってきました。ボール初速が上がっているのが魅力。余裕で平均5ヤード飛距離が伸びています」と、ドライバーを絶賛。そして苦手だった7番ウッドの調子も上々だという。「7番ウッドはこれまで左に行くことが多く苦手意識があったのですが、〈ステルス〉は球がねじれにくく操作性がいいのが魅力です」と話した。
クラブがスイングのエネルギーを効率よくボールに伝えるだけでなく、松森のスイングから無駄がそぎ落とされ、回転エネルギーをしっかりボールに伝えているのだろう。道具と技術がうまく噛み合っている。
久々に楽しみな気持ちで迎えるシーズンだというが、課題はあるのだろうか。「ずっとガムシャラにやってきましたが、もう少し余裕を持てたらいいなと思っています。やるべきことは明確になってきているので、それを1年間を通して続けることができるかどうか。これまでは疲れてトレーニングをおろそかにしてしまうこともありましたが、自分を戒めてトレーニングに励みます」と話す。
22年シーズン前半戦は松森をよく知る妹の杏佳と辻村コーチがキャディを務める試合が多くなる予定で、「安心感がある」と松森はいう。初戦は琉球ゴルフ倶楽部(沖縄県)で3月3日から始まる女子ツアー開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」だ。19年と21年は予選落ち(20年はコロナ禍で中止)を喫している大会だけに、緊張を強いられることになるだろうが、逆襲のスタートダッシュを決めるためにも奮起したいところ。少しだけ余裕を持てるぐらいは、十分にトレーニングもショット練習も重ねてきた。あとはほんの少しでいい、自信を取り戻すことなのではないだろうか。22年シーズン、松森彩夏から目が離せない。(取材・文/河合昌浩)

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