シード復活を懸けて、毎日、愚直に右片手打ちドリルで300球 木戸愛の2022年の初陣はダイキンオーキッドレディスだ

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2008年にプロテスト合格。11年に賞金ランキング49位に入りシード権を獲得すると、12年「サマンサタバサガールズコレクション・レディス」で初優勝を挙げた。19年に賞金ランキング74位となりシード権を手放すまで8年間、トップで活躍し続けてきた木戸愛。20-21年シーズンも賞金ランキング85位と不本意な成績で終わり、22年レギュラーツアーの出場権を争うQTも50位と奮わなかった。
22年シーズンは下部ツアーのスッテプ・アップ・ツアーが木戸の主戦場となるが、本人はこのままで終わるつもりは毛頭ない。1月下旬、関東でミニキャンプ中の木戸を取材した。
「シード権をとってレギュラーツアーに戻ることはもちろんですが、優勝したいという思いが強くあります。優勝したいからこそ、やれています。うまくなりたい、強くなりたいという思いは常にあります」
これまでの自分から進化したいと考え、新しい取り組みをしてきているという。その一つが右片手打ちの練習。これを毎日300球、2時間打ち続ける。ときには1日中打ち続けることもあるという。21年の2月から1年間このドリルに取り組んできた。
「同じことを続けることで自分の強みができてくるんです。ベースがつくれたら応用ができて、引き出しが増えます」
9番アイアンでティアップしたボールを右手1本で30〜40ヤードを打つ地味なドリルだが、この動きがすべてのショットにつながっているという。ドリルのテーマは押すインパクト。手首を使ってパチンと払い打つのではなく、右手首の角度をキープして下半身リードで振り下ろし、ヘッドを低いところから入れてしっかりボールを押す。このドリルをコツコツと愚直に続けたことで、スイングがシンプルになり弾道が安定してきたという。
「最初は右手1本ではうまく打てず必死になって打っていましたが、目的を持ってやり続けることで楽しくなってきました。インパクトの音が大事。いつも同じ音が出るようになり、その音を聞けるようになってきました」
地味なドリルを愚直にやり続けたことで、木戸のスイングは確実に進化した。かつてと比較すると、腕は振っているけど使ってはいない印象。体の回転でシンプルにクラブを振っているから手元が体の近くを通り力強い押すインパクトになっている。
誰もが木戸のようにコツコツと地味な練習をやり続けられるわけではない。結果を信じて愚直に右片手打ちを続ける木戸を見ていたら、いぶし銀のプロレスラー、父・木戸修の血流と教えを受け継いでいるなと感じた。木戸修氏は関節技のスペシャリストであるカール・ゴッチから直接指導を受け、厳しい練習に耐え、プロレス界のトップで活躍した。その父の姿が右片手打ちを続ける木戸に重なった。
「父からは気持ちがあるなら続けなさい。やることをやっていれば必ず実る、と言葉をもらいました」
一つのことをやり続ける、努力し続けることも才能。努力は決して裏切らない。今年で33歳を迎える木戸愛の逆襲は必ずあるだろう。22年の初陣は推薦出場となる女子ツアー開幕戦、「ダイキンオーキッドレディス」。この試合で復活への階段を一つ上るに違いない。(取材・文/河合昌浩)
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