2021年8月17日に、大手IT企業の透明性を監視する非営利団体Tech Transparency Project(TTP)が、「Facebookで過激な暴力組織が勢力を拡大させ、反ワクチンに関する誤情報を広めている」というレポートを発表しました。レポートの中でTTPは、Facebookが誤情報を取り締まるどころか、誤情報に対して信頼できる専門家の意見であるという認証を与えてしまっていると指摘しています。

Facebook’s New Toxic Stew: Militia Groups and Vaccine Conspiracies | Tech Transparency Project

https://www.techtransparencyproject.org/articles/facebooks-new-toxic-stew-militia-groups-and-vaccine-conspiracies

Facebook Is Helping Militias Spread Vaccine Disinformation and Calling Them ‘Experts’

https://www.vice.com/en/article/4av8wn/facebook-is-helping-militias-spread-vaccine-disinformation-and-calling-them-experts

Facebookは2021年4月に、「Group Expert」という仕組みを導入しました。これは、Facebookグループの管理者が、専門知識が豊富で信頼できる情報を拡散するメンバーをエキスパートとして認定し、認証バッジを付与することができる機能です。



TTPは、今回新たに発表したレポートの中で、「Facebookは新型コロナウイルスワクチンに関する誤った情報を流布しているグループの管理者に対して、Group Expertを付与する権限を与えています」と述べました。TTPによると、FacebookからGroup Expertの使用を許可された管理者の中には、反ワクチン派の人々に対して武装蜂起を促すような投稿を繰り返しているユーザーが存在するとのこと。

TTPが特に問題視している過激派グループの1つが、4月下旬に結成されてからすでに4500人以上のメンバーを獲得している「US Freedom Fighters」というグループです。このグループの管理者は、Group Expertの付与が許可されているにもかかわらず、「新型コロナウイルスのデルタ変異株は虚偽」とほのめかす投稿をシェアするなど、誤情報を拡散する動きが確認されました。



TTPの代表者であるケイティ・ポール氏は、Group Expertの問題について「4月にこの制度が導入された時、Facebookワクチンに関するデマなどの問題を把握していなかったにもかかわらず、悪意のあるユーザーに悪用されかねない新しいツールを作ってしまいました。ワクチンの誤情報を専門知識と偽って拡散させるのは、文字通り人々の命を奪いかねない問題です」とコメントしました。

また、「Southwest Arkansas Militia」という別の過激派グループは7月23日に、「ワクチンを接種しない人を対象とした『隔離キャンプ』がよく話題にのぼっています。これに対抗する準備はできていますか?」と投稿しました。



アメリカ政府が、ワクチンを接種しない人を隔離する収容所を設けるという陰謀論は、ファクトチェックサイトのPolitiFactによって完全に否定されています。それにもかかわらず、「隔離キャンプ」の設置をほのめかして不安をあおったSouthwest Arkansas Militiaの投稿には、新型コロナウイルス感染症に関する情報センターへリンクするラベルが付けられただけで、削除やアカウント凍結といった措置は執られませんでした。

TTPは「Facebookが2020年に、アメリカを拠点とする過激派組織の取り締まり強化を約束していただけに、過激派組織の勢力拡大は大変気がかりです。現在、これらのグループはワクチンに関する陰謀を広める上で中心的な存在となっています」と述べて、危機感をにじませました。